変身したい。
誰もがそう願ってる。例えばもっと、足が細くなりたいとか。
もっと、顔をちっちゃくしたいとか。
もっと、おなかをひっこめたいだとか。
そんな風に願うのは、当たり前のことだ。
皆、今よりも。今の自分よりもずっとずっとかっちょよくなりたいと考えているのだ。
そんな変身願望が漲る1971年4月3日の土曜日に。
変身バンドを身につけて、仮面ライダーはやって来た。
仮面ライダー。「へ~んしん。とうっ。」
ところで彼の特徴はバイクに乗っていたことだ。
それまでの正義のヒーローは、空を飛ぶことが多かった。
鉄人28号も。鉄腕アトムも。ウルトラマンも。皆空を飛んだ。
バイクに乗った正義のヒーローは月光仮面くらいのもので、その後のヒーローの多くは皆、颯爽と空を飛んだのだ。あのオバケのQちゃんでさえそうだ。
それなのになぜ、彼は敢えてバイクに乗ったのだろう。
答えを言おう。
それは仮面ライダー変身前の本郷猛が、優秀な科学者であるのと同時に、オートレーサーだったからなのだ。「とうっ!!」
ショッカーによって、バッタの能力を身につけさせられた本郷猛。
クモの遺伝子を身に付けたスパイダーマンと、身の上話がよく似た本郷猛。
彼は、バイクにまたがって、ショッカー軍団を追いつめた。
そこがかっこよかった。
ただ・・・。
今までのヒーローものと仮面ライダーでは、明らかに違うところがもう一点あった。
それは仮面ライダーがどう見ても、正義の顔ではなかったということだ。
バッタ顔。
初めて見た人に、かっこよさ臭をばらまく容姿では全然なかった。
状況的に言えば、それはカバに似たAお島クンと同じだし、サルに似たNか村クンにも通じていた。そしてもちろん、カッパに似ていたGINとも。・・・一緒だった。
ってことはその後、カバの能力を身に付けたA島仮面とか、サルの脳みそを身に付けたNか村仮面なんてのも出てきてよかったじゃないか。
ボクはそう思う。出てこなかったけど。「トウッ!!」
仮面ライダー。バッタ顔のヒーロー。
それはまた、新たなる時代の到来を感じさせるキャラクターだった。
もちろん変身ベルト。ボクもおもちゃ屋さんで買った。「トウッ!!」