昭和51年、NECから売り出されたカラーテレビ「太陽」のチャンネルは丸くなかった。
ブラウン管の横に四角いボタンが12個ついていて、それを押すとチャンネルが変わるというシステムのカラーテレビだったのだ。
丸くないチャンネル。それは、穴の開いていないトンネルくらい画期的だった。
穴が開いていなくて、入ろうと思ったら山にぶつかって、その拍子に運転手が車から飛び出して、山のてっぺんにまで到達するくらい画期的なテレビだった。
当然、「太陽」は売れた。
ボクも欲しかった。
さわるとチャンネルが変わるテレビ。それは、未来を感じさせた。
だから、両親にお願いした。
「お願いですから、さわるとチャンネルが変わるテレビを買ってください。」
両親は、いい返事をしなかった。
「チャンネルなんてどうでもいい。テレビなんて映ればいいじゃないか。」なんて、前近代的な意見を彼らは堂々と述べた。
前近代的で、原始人みたいな意見を述べる相手に、さわると変わるチャンネルのテレビを買って欲しいと懇願したボクがバカだった。
ボクは、ちゃんとリフレクションした。僕は、要求する相手を見誤っていたのだ。そして、軌道修正。
そうだ、じいちゃん、ばあちゃんに頼もう。、
じいちゃん、ばあちゃんなら、お金をウジャウジャ持っている。子育ても終わり、お金を使う場所だって限れているから、この人たちに頼む方が、原始人に頼むより、テレビ購入は現実的だ。そう思った。
「お願いですから、さわるとチャンネルが変わるテレビを買ってください。」
じいちゃん、ばあちゃんは心揺り動かされた。
「かわいい孫が、さわると変わるチャンネルを欲しがっている。」
さっそく、じいちゃんばあちゃんはYね川さんに電話をしてくれた。
Yね川さん。彼は、ボクの家にいつもいつもやってきて、新しい電化製品が出ると売りさばいていく、出入りの業者さんだった。
しばらくして、なんと、我が家に太陽がやってきた。
おじいちゃん、おばあちゃんは、こともあろうにボクのお願いを聞いてくれてしまったのだ・・・!!!
太陽のチャンネル。
それは、まさしくサンシャインだった。さわると変わるチャンネル。
それは、光り輝いていた。
ボクは、じいちゃんばあちゃんの部屋に入り浸り、ずっとずっとチャンネルをいじり続けた。来る日も来る日もチャンネルをいじり続けたボクは。
日本の夜明けを感じた。日本はすごい国だ。次から次へと新しいものが、日本から生み出される。
日本という国のテクノロジーは世界を凌駕し、まさに電化製品レースのファーストランナーに君臨していた。
21世紀。ソニーもパナソニックも。元気がないと聞く。
聞くところによると、ついお隣の国の電化製品に、その座を奪い取られているという。
でもでも。頑張って欲しい、日本丸。
日本人の天才的な発想で。車から飛び出した運転手が、山のてっぺんまで到達しそうな画期的な発想力でまた。
電化製品世界一の座を、取り戻して欲しい。
そう、切に願っている。
