ちっちゃな頃。

ボクの家には、Kん原さんというお米屋さんがよくやってきた。

よくやってきては、お米を我が家に置いていった。

今思うに、昔は多くの家が、お米屋さんからお米を配達してもらっていたようだ。

今は少なくなったね。

お米屋さん。

Kん原さんは、いつも前掛けをしていた。前掛けには「米」の文字が大きく書かれていた。

Kん原さんは、我が家に来ると、いつも油を売っていった。

お米屋さんなのに・・・。

そして、ちっちゃなボクに、いろいろな絵を描いて遊んでくれた。

鉄腕アトムや鉄人28号。

8マンも上手だった。ちっちゃなボクは、Kん原さんの絵のとりこになった。

このおじさんは、どうしてお米屋さんなのに、こんなに絵が上手なのだろう。不思議だった。でも、そのナゾはやがて解けた。


若林で見た空


我が家は、祖父祖母父母姉ボクの6人家族。

その6人が6人とも、絵のセンスがぶっ壊れていたのだ。

母親は夏休みの宿題で、ボクの図工の絵を一緒に描いてくれたけど、それがひどかった。

モデルはセミなのに、出来上がった絵は、どうみてもハエだった。

父親にいたってはもっとひどかった。

知らない人が見たら度肝を抜く絵。

人間なのに4本足だったり、カエルなのに耳がはえてたり。

もう、だから。

Kん原さんの普通の絵が、ボクには驚くほど上手に感じられたのだ。

相対的に・・・。

あれから年月が過ぎた。

ボクの絵は、父母のDNAを見事に引き継いだ。

初めて見る者は、度肝を抜く。およそ今まで見たことのない世界が、そこには繰り広げられる。

Kん原さん。どうしているのだろう。お米屋さんの商売は今でも続けられているのだろうか。

時々、妙に懐かしい。