小学校5年生の時。

ボクの両親は、あまりにヒドイボクの成績に頭を悩ませ、一時の間、塾通いをさせた。

思えば、生涯一度の塾経験。

行き先は、S鳥塾。

両親はこの、超零細個人塾長S鳥先生に、ボクの人生を委ねた。

ところが。

この塾に通うのは、ノートにいたずら書きをさせたら天下一品。

でも勉強は、GIN少年同様、からっきし低空飛行のガシクンことY本クンただ一人だった。

残念ながら、ここで結論を言おう。

この二人が揃っても、切磋琢磨にはならない。

何しろ、クラスきってのアホコンビである。

塾長S鳥先生も、心を傷めたと思う。

この二人の親からお金を取るという行為は、触法行為に当たらないだろうか。だましてお金を取るという行為にはならないだろうか。彼女(S鳥先生は小学校の教員を定年退職した女性の方である)は、その点について深く深く悩んだと思われる。


若林で見た空


そして。

S鳥先生の、芽が出ない花壇に、水をまき続けるような作業が始まった。

しかし。いつまでたっても、花壇からは、芽も出なければ、花も咲かなかった。

タネはタネのまま。それは頑固に土の中に居続けた。

そして。とても残念だけど、このアホコンビ。

その後わずか数ヶ月で、塾を去ることになる。S先生の方が白旗をあげたのだ。

・・・。悲嘆にくれた彼女のため息が聞こえる。教師としての力量を、定年退職した後もなお、問い続けなければならない、キビシイ現実。

だがしかし。

だがしかしだ。世の中は捨てたものではなかった。この後、ガシクンとボクは、Y小学校主催、N本平動物園写生大会で、金賞銀賞のワンツーフィニッシュをいただくことになる。

勉強ができなくても、絵があるじゃないか。

二人は大いに喜んだが、二人の両親の思いはそれでもなお複雑であったであろうことは、容易に想像できる。