ホンダプレリュードを買った理由は、ホンダテクノロジーに憧れたからではない。
ボクは断言する。
4輪アンチロックブレーキも。
4輪ダブルウイッシュボーンも。
セミコンシールドシングルワイパーも。
ボクには関係なかった。
あったのは。女子にモテル。
ホンダプレリュードに乗れば、女の子にモテモテ人生が保証される。
そう、サルに似たNか村クンにアドバイスを頂いたからだった。
バブル前夜。ソアラという車が、トヨタから発売された。それは確かにいい車だったけど、値段が高かった。
ボクのような、庶民にはなかなか手が届かないお値段だった。
ホンダプレリュードは、それよりか安かった。
リトラクタブルなのに、それよりか安かった。
オートクルーズなのに、それよりか安かった。
だから、買ってしまった。
ボレロの音楽に乗って、ボクはプレリュードを運転した。
雨の日には。シングルワイパーをシャーっと動かして。
ウインドウを開け。右手の肘を窓枠に乗せて。小粋にプレリュードを運転した。
でも・・・。不思議なことに、女の子にはもてなかった。
サルに似たNか村クンは、絶対にモテルと約束してくれたのに。
その約束手形は、見事に不渡りだった。
不渡りをくらっても。ボクは元気に走り続けた。
時代は、バブルに向かっていた。
それは・・・。
プラザホテルでのディナーが始まる、ちょっと前の出来事だった。