鳥のさえずりの中での目覚め。

明るい朝に歩いて朝食会場に行くと、昨夜は暗くて分からなかったホテルの面白い全貌が見えてくる。

赤いカーペットを敷いたオープンバーを兼ねたフロントを中心に、私の部屋があるアパート風の建物や、高い塀に囲まれたプライベートコテージの群れがあり、それを過ぎると昨夜行ったレストランがあって、その向こうは海である。緑がいっぱいで、やたら広い敷地のホテルなのだった。

朝早くから樹木の水やりをしている沢山の人たち、すれ違う人達と機嫌よく挨拶を交わしながら、海に近づいてみる。何もない静かな海岸で、朝早いせいか泳いでいる人は無く、ジョギングをしたり散歩したりしている人たちがチラホラという程度。

 

 

朝食会場は、改めて見ると南国風な吹き抜けの素敵なレストラン。屋外のテーブル席で小鳥と一緒の朝食です。卵料理はエッグベネディクトを注文して、あとはブッフェ形式だったけどとても美味しかった。特にトッピングつきの瓶入りヨーグルトは絶品。もちろんフルーツも。ただパンが・・。まあパンの事は言うまい。

 

 

旅行中って、朝食べ過ぎるせいで、一日中お腹もたれてるのよね。分かっちゃいるけど自制ききません。

ここは欧米人の滞在者が多かった。アジア系は韓国、中国系のカップルがちらほら。欧米人はカップルもだけど、家族も多いみたい。滞在中、日本人に会わなかったのよね。大体ここ、日本語のメニューが無いのである。最初、中国語を持ってこられたので「ジャパニーズ」と言うと、うなずいて、次持ってきてくれたのが韓国語メニュー。再度「ジャパニーズ」というと、相談していたが結局無いみたいなので英語のメニュー。

 

 

お気に入りのベランダベッド

(首を左に傾けて見てください)

 

何もしないという幸せを満喫しよう。今日こそは自堕落に生きよう。部屋に戻って、又してもお気に入りのベランダのソファに寝っ転がって、窓辺の木を眺めながら午前中を過ごす。

 

しかしながら、だんだん暑くなってきたので、プールに移動することにする。

いちおう、水着着て。

 

途中ブティックがあったので寄ってみた。何も買わなかったけど、長期のバカンスに来ている人なら良いかな~と思えるような洋服とか、いろいろ、見てるだけで楽しい。わたしのバカンスは実質今日一日なんで、まあ必要ないのですがね。

 

プールサイドには人が沢山。それにしても、「プールとは泳ぐ所にあらず」、なのかなと思うくらい、例によってだれも泳いでいないのよね。

それなりに居心地良さそうな椅子やソファなどは人の数以上あって、どうぞくつろいでください、という感じなので、わたくしも適当に陣取ってダラっとしてみる。と、飲み物などの注文を取る人が回ってきたので、ピニャコラーダを注文する。一気飲みして、一緒についてきた山盛りの美味しいナッツをつい完食して満腹になる。

 

いよいよ暑くなってきたのでひと水浴びようとプールに近づくが、やはり誰も入っていない。何故だか分からない。暑いのに。この時も5歳~7歳くらいの白人の女の子が二人入って遊んでいるだけで、大人は日光浴だけ?でも、アタシはちょっと泳いでみることにした。泳ぐと言うよりは犬掻きで沈没を防いでいるというだけだけどね。結構深いプールだったので浮き輪を探してみると、ありがたいことに対岸にころがっているではないか。華麗なる犬かきでたどり着いて浮き輪をひっつかみ、プカプカ浮かんでいると、何やら視線を感じる。例の二人の女の子がじっと私を見つめているのだ。まあ、あたししか泳いでいる大人っていないからね、珍しいのかな、と思っていると、今度は30歳くらいの白人の男性がわたしを目がけて近づいてきた。プールサイドから英語で何か言っている。えーと、これは、勿論ナンパとかではなくて、「僕の娘の浮き輪を返してあげてくれないかな。」と言っているようなのですね。げげげっ。

・・どおりでやけにピンクな浮き輪だと思ったわよ。死に物狂いの犬かきダッシュでプールから這い上がり、平謝りして女の子に浮き輪をお返しする。おばちゃんね、悪い人で無いのよ?って言っても信じてくれなさそうな顔してたな。

 

 

気まずくなったプールサイドから去って、少し離れたソファに移動し、寝こける事2時間。どこででも寝れるんですね。ギクッとして飛び起きる。3時からスパの予約をしているからね。その名も「サンセット・スパ」。

 

屋外でのスパ、というのをやってみたかったんだけど、ここにはそれがあるのだ。サンセットという割には「5時以降は無理です、虫が多くて。」ということなので、3時から。ビーチサイドに回りを布で囲ったベッドが置いてあり、そこで施術なのです。

 

待ち合わせ場所に行ってみると、ちょうど道具を抱えた30歳くらいの太目の強そうな女性がやってきた。よろしくです。いや~、最高でしたね。だてにビーチサイドじゃないんですね。かなり強い海風が吹いていて、四方の布を翻しながら中まで入ってくるのが気持ち良くて。まあ自然の風に勝る気持ちの良いモノってないよね。施術もすごく上手に思えたので、「貴方はゴールドハンドだ!」などと言ってほめたたえ、チップをはずむ。 私の場合、はずむチップというのは100バーツの事で、日本円にして350円くらいかな?本には50バーツで上等、と書いてあったけど。100バーツからお札になるので、これを出すと相手は大概驚いたような嬉しそうな顔になるのだ。それ見たさに、たまーに、サービスが良いと感じた時とか可愛い女の子とかにははずんであげるのである。太目の施術師さんも喜んでくれて、「日本語で有難うってなんていうの?」と聞くので、日本語では有難うは、「ア・リ・ガ・ト・ウ」って言うんだよ、と教えてあげたんだけど、言いながら突然に熱いものがこみあげてきた。久しぶりに発する日本語。あたしの国のコトバ・・。日本・・。

異国から想う母国と言うのは、何と慕わしいものであるか。まだ3日しか離れていないけどね。大喜びで出国してきたくせにね。

太目の彼女は覚えようとするように「アリガトウ、アリガトウ」と何度もくり返していた。

 

ここでサンセットスパを。右側は海。

 

ところでこの日、アタシには問題があったのだ。実はバンコクのホテルにアイフォンの充電器を置き忘れてきたのだ。最近ホテルにアイフォンそのものを忘れて大困りした事件があったのだけど、懲りていませんね。

フロントの女の子に相談すると、「セブンイレブンに行ってみたら?」と勧められた。嬉しい事に、セブンがある町(?)まで30分おきにシャトルカーを出しているとのこと。で、行ってみることにした。シャトルカー、というか、トラックの荷台のような所に他のホテル客10人くらいと一緒に乗って15分くらいで町(?)に着きます。私のホテルの回りは、同じく大きなホテルがぞろりと並んでいるだけで、外界とは切断された感があるのだけど、車で15分走るとシャバに出ます。大した規模ではないけど、スーパーやお土産屋さん、レストラン、セブンもあります。アタシ以外のホテル客は多分ホテルの食事に飽きて、ここらで夕食をとろうという人たちじゃないかな。

 

あたしはまっすぐセブンに行って、充電器を買った、と書きたいのだけど、事実は単なるUSBを買って(←理由はない。ただの機械オンチのオマヌケ)、お土産屋さん物色して、ジュース飲み飲みシャトルカーでホテルへ帰ってきました。フロントの女の子が「どうだった?」って顔したので「OK、OK」とか言ってVサインをしたことなども腹の立つ思い出。部屋に帰ってようやく間違えたことに気付く。何故かカメラの充電器があったので、サイズ合わないのに無理やり差し込んで、一晩で67%の充電を達成する。まーそんなことが、この旅行記に写真が少ない理由だったんですね。

 

そういえば、帰りのシャトル車の中から、凄いサンセットを見たのも印象深かった。見たこと無いような凄みのある赤味がかったオレンジ色の大きい太陽が木々の間に沈んでゆくのだった。一緒に乗り合わせたもう一人の女の子(何者か分からない。タイ人と思う。)が興奮して私に指さして見せるので、「オー!」とか「ビューテホー!」とか少ない単語を連発して感動を共にした。美しいものへの感動は世界共通ですね。

 

さて、夕食はホテルのレストランです。今回は食べてみたいと思っていた「プーバッポンカレー(蟹カレー)」というものを注文。勿論シンハービールも。先に結論を言えば、ちょっと失敗。ホテルの名誉のために言いますが、味が悪いという訳では無いのです。多分立派なお料理なのでしたろう。何が悪いかと言えば、自分のアホな想像力というか・(泣)

昨夜と同じ焼き肉屋のタレ三セットのようなカレー三セットの前菜を程よく食し、さあメインを食べるぞ、と覗いてみると、中には小ぶりな蟹が丸ごと、ではなく適当に肢体をちぎられたやつがたっぷりと入っている。その蟹さんの足がですねえ、「カエルの足みたいだな。」と思った瞬間からもうダメになってしまったのである。

カエルでないというのは正気だから分かっているのだけど、一旦そう感じ始めたらどうしようもなくなって・・、無理して少し食べたけど、足だけは、食べれなかったという話です。足、10個ぐらいあったな。

 

さあ生産的な事は何もしなかった1日も終わろうとしています。外は真っ暗。が、わたしはまだ終わらない。なんと、夜もスパを予約してしまったのですね。今度はフェイシャルなるものを1時間。顔はもうどうでもいいと思っている年なんだけど、夜はどうせヒマだしね。今回色んなのやってみましょう。

予定の時間に受付に行くと、受付嬢達と一緒に待っていたのは、なんと、昼間の私のゴールドハンドだった!再開を喜び合うわたしたち。(一人しかいないのかな?) 施術室までのお洒落な廊下を歩きながら、ゴールドハンドが上を指さしたので見上げると、その、天井の無い空には綺麗なお月様が見えるのであった。

このホテル、本当に不思議な設計。

 

不思議なのは部屋も一緒。

ゴールドハンドの愛と力の入った施術を受け、堪能したので部屋に戻り、お風呂に入って寝ようと思うのだが、ここのお風呂、戸外にあるんですよね。広いベランダに、というか。しかも石造りで、まるでローマ人のお風呂!テルマエロマエですよ。しかもお湯が微量にしか出ないので、待っている間にもう一回スパに行けそうなくらい時間がかかるのだ。

昨夜は面倒くさくなってシャワーにしたけど、今夜は意地でも入りたい。けど待てない。結局くるぶしくらいまでのお湯に浸かって、今夜のお風呂は完了ということになりました。まーお風呂だけは不完全燃焼でしたね、このホテル。他は良いんだけども。

勿論この夜もベランダのソファで。