2017年5月23日。
 偉大なる俳優 ロジャー・ムーアがこの世を去った。


 ロジャー・ムーアといえば、1973年〜1985年にかけてスパイ映画の傑作007シリーズで3代目ジェームス・ボンドを務めたことで有名だ。
 ジェームス・ボンドを演じた俳優は現在までで6人だが、7作品で主演を務めた彼の記録は最多である。

 俳優として下積みをする傍らで従軍経験もあり、ジェームス・ボンドに抜擢された1973年の「007 死ぬのは奴らだ」の時点では46歳だったと記憶している。

 また、ユニセフの親善大使としてボランティア活動に尽力し、英国では“ナイト”の称号を与えられた、まさに本物の紳士とは彼のことだろう。

 ジェームス・ボンドさながらの色男ぶりも印象的で、生涯4度の結婚をしていたというからなんとも羨ましいモテぶりだ。
 が、ボンドを演じるずっと前の60年代の写真を見てみると、抱かれてもいいと思うくらいのイケメンであり、晩年までその頃の面影が崩れることはなかった。羨ましい。


 こんな話をする以上、当然私も007シリーズのファンであり、第1作目からほとんどの作品を観ている(全てではないあたり、まだまだ真のファンを名乗るには遠いだろうか…)。
 その中でも通称ムーア・ボンドが一番のお気に入りで、周りのボンドファンがショーン・コネリーやピアース・ブロスナン推しが多い中、ひたすらロジャー・ムーアの魅力を力説していたりする。

 007といえば伝説のスパイであり、ただの非情な殺し屋ではなく、多くのロマンスとユーモア溢れるキャラクターという印象が強いと思う。
 その根幹が再構成されたのが、ムーア・ボンドが活躍した12年間であり、恵まれた体格ながら常にエレガントさを忘れず、記者からの厳しいインタビューもジョークで制するジェントルな気質は正にジェームス・ボンドにぴったりだった。

 我が映画人生において、ジェームス・ボンド/ロジャー・ムーアがもたらした影響はもはや計り知れない。
「私を愛したスパイ」や「ムーンレイカー」を映画館で観た世代を何度羨ましいと思ったことだろうか。



 その魂を揺さぶる磨き抜かれた演技に、心から称賛を贈りたい。

 サー・ロジャー・ムーアに敬意を込めて。

 その魂が安らかにあらんことを。