西田昌司「TPP問題は戦後の様々な問題を根本的に解決できる大きなチャンスでもある」 | ジャイアントのブログ

ジャイアントのブログ

ジャイアントのブログです。

西田昌司議員の第2回東京政経セミナーに行ってきました。

さっそくですが、行けなかった人たちのために西田先生の発言をアップします。

話し言葉を内容が伝わりやすいよう、ところどころ、発言内容を変えない形で、修正しています。

---------------------------------------------



西田昌司


TPPが大きな政治問題になっています。
この20年ほどの、日本の政治の、TPPに代表される市場原理主義、自由競争すればいい、グローバリズムにならっていけばいいという一連の流れに対して、府会議員の時代から問題ありと主張してきましたが、今まさにTPPが大きな問題となってきています。
今日そのことも含めてお話させていただきたいと思っています。

今日2時から参議院の講堂で行われた、超党派のTPPの慎重な審議を求める会で、APECまでにTPP参加を表明するのは反対という決議がありました。
私はそのとき、一人手を挙げて、言いました。TPP反対の決議をするのはいいが、それでも総理がやるといえばやることになる。我々が反対だと言ったのにやったのは総理だから、悪いのは総理だ、という話では困る。だから、決議をしてもやると言うんだったら、当然内閣不信任案じゃないか。もしくは参議院の問責案件になるじゃないか。そういうことをちゃんとここで確認してくれ、ということを申し上げました。(拍手)

自民党の議員からは今のような拍手はありましたが、民主党の方も政権与党の方もおられるわけです。超党派ですから。
そうすると、中にちょっと待った、という方がおられるんですね。
終わった後、ある民主党の、一生懸命TPPに反対されている先生に、「先生、あなた方ね、今パフォーマンスやってちゃだめですよ。やるんなら、こっちも体張って、命がけでやらなきゃどうするんですか」と言ったら、「いや、西田さん、そんなこと言ったら政局になっちゃうじゃないか」と言うので「何を言ってるんですか!政局になるからやらないとか、なんだ!」と怒ると、その方は、ヒェーという顔をしてましたけどね。
アリバイ作りでやっちゃダメなんです。

確かに一度TPPに入るといっても、交渉を離脱するとか、交渉がまとまって条約を結んでも批准をしなければ無効だ、という論法があります。
また交渉に参加したら問題点が浮き彫りになっていいじゃないか、という話もあるんですが、いったん入ったら、国内問題じゃなくて、外交マターになるんです。本当にダメだと思うんだったら、入り口の段階でハッキリと言わないといけない。

政治家もそこをパフォーマンスや、どうすれば政局を動かしやすいかということを考えてやると、国民は信用しないと思うんです。
大事なことは、ダメなものはダメだと、言わなきゃなりません。土井たか子じゃないですけどね。あの人はもともとダメでしたからねw。土井さんはダメじゃないものまでダメだと言ってたんですが、ダメなものは本当にダメだと言わないとダメだと思うんです。

TPP賛成や今すぐ反対しなくてもいいんじゃないかとか、いろんな意見がありますが、一つ一つ整理しておきたいと思います。

TPPに賛成というときのメリットというのは、日本の経済を発展させるんだということです。
TPPに入れば発展するという話がありますが、なぜ発展するかというその理由が明らかではない。
というか、どう考えても発展するはずがないわけです。

一つはTPPというのが、アメリカと日本のGDPで全体の9割になる。
他の国を全部足しても1割もないわけですから、事実上日米の自由貿易協定です。これはみなさんご存じのとおりです。

日米間で交渉して、いくらかアメリカが買ってくれる余地があるのかといえば、どう考えてもない。
そもそも日米間の関税は非常に低いわけです。農産物を除いて非常に低い。
その関税を取り払ったところで、のびしろがそもそも出てこない。のびしろが出てこないだけではなくて、貿易で花形だと思われていた家電にしても自動車にしても、多くは現地生産をしています。そうなると関税があろうがなかろうが関係ないわけです。
そういう事実があるのに、関税を取り払えばよくなるという思いこみがある。

それから、アジアの発展を取り入れるんだという意見があります。
アジアでどんどん発展しているのは中国であり韓国ですが、これらの国はTPPには入っていない。
しかも中国に関しては、自由貿易協定に入るための要件がないわけです。
自由貿易というのは関税を取り払って自由に貿易をしましょう、ということですが、関税の前に為替が不当な調整がされていたら、価格が正しいかどうか問題になるわけですから、中国が入ることはない。

しかし中国が入ることはないとわかってくると、今度は中国が入らないからこそ、アメリカとの同盟関係を強化して中国を排除するために、これは必要なんだ、という話をされる方もいます。
これはまったく見当違いです。日米の同盟関係を強化しようというのはわかるんですが、それをTPPでやらなければならないという論法はないわけです。

むしろ、日米の話でいうと、TPP以前に世界の貿易収支の中で、日本が圧倒的に世界の経常黒字国、世界で一番外貨を稼いでいるのが日本です。
反対に世界で一番それを放出しているのは誰かといえば、アメリカなんです。
もともと日米関係、世界の貿易の関係をみると、アメリカが一人でたくさん買っているわけです。日本は一人でたくさん輸出している。

そういうことを考えたとき、自由貿易論者の一番の問題は、これからもし仮に自由貿易が行われるとして、関税もどんどん取り払ったとしても、本当に日本が貿易でどんどん黒字を積み上げていくのを世界が許しますか。許さないんですよ。
アメリカが許しますか。許すはずがないんです。
アメリカがここまで経常収支が悪くなり、財政もひどい、そうなってきたから日本に助けてくれ、というのがある意味でTPPの本質ですからね。

それを考えたとき、TPPで日本の経済が伸びるとか、輸出を増やしていくということ自体が、はじめからおかしいんです。

アメリカもはじめからそういうことを想定していません。
アメリカが想定しているのは、我々の赤字をどうしてくれるんだ、そのために雇用がなくなっていく、これをどうしてくれるんだ、という本音の話をしているんです。

そう考えると、最初からビジネスの話でアメリカとTPPで一致するはずがないんです。
もっと言えば、現状を考えると、どんどん輸出を伸ばしていくということ自体が、本当におかしいんです。

ではどうすればいいのかという話になるんですが、日本は「アメリカとは同盟関係」と言っているが、現実はアメリカが一方的に日本を守っている。
言い方を変えると、日本はアメリカに占領された状態が、同盟という名前で続いているというのが現実じゃないですか。

今回のTPPの話も、筋をいくつもたてていくと、これは日本に貿易上分がないし、中国に対しての抑止力というのもおかしいかもしれないが、アメリカが言ってきたことはきいておかないと、日本の国益にならないんじゃないか、という話に収斂されていくんです。

そこが実は一番問題なんです。そういう考えで、果たして日本はこの先、未来を描けるのか。

絶対に描けるはずがないと私は思うんです。
というよりも、そのこと自体が戦後日本の根本的な問題点ではなかったのか。

そう考えると、今日本がすべきことは、まずアメリカとの片務的な同盟関係を対等にするためにも、日本が防衛力を増強すべきなんです。
そのためには、兵力を充実しなければなりません。

その兵力の充実のために、本来は自分たちの国で兵力を開発すべきということになりますが、今はとりあえず同盟関係のためということも含め、アメリカから輸入すればいいじゃないかと。輸入することでアメリカは輸出が増えるわけです。
農産物以上に裾野の広い彼らの基幹産業が、非常に大きな市場を日本でもつことができるし、当然、貿易収支も改善するし、雇用にもプラスに働く。

そして日本では、当然日本の防衛力が増強されます。
民主党政権になって一番大きな問題は何だったかというと、外交・安全保障がことごとく踏みにじられてきたことです。まったく定見をもたずに、でたらめをやってきたわけです。

それがゆえに、TPPでもう一度アメリカとの同盟関係を強化したいという思いが、民主党にあるのかもしれませんが、それは本末転倒な話であって、今の状況を考えると、まずしなければならないのは、日本が兵力を増強することによって日米の同盟関係を強化していくことなんです。

さらに、もっといえば、一歩踏み込んで、集団的自衛権の問題です。野田総理は総理になる前は、当然集団的自衛権はあると言っていたのに、今は、これまでの政府見解と同じように行使できません、と発言している。しかしそうではなく、集団的自衛権はちゃんとある、というか、もともと自衛権というのは憲法云々じゃなくて自然権です。
人間が生物として生きていくために自己防衛するのは正当防衛としてあるのと同じように、国家にもそれは自然権としてあります。
自分を守るために、仲間と一緒になって同盟するというのも、自然権の延長線上で認められているわけですから、集団的自衛権を行使できると宣言すればいいわけです。

そうするとどういうことが起こるかというと、日本がアメリカと対等な同盟関係で軍事力も充実できる。
ということは、日本の米軍基地を減らせるんです。自衛隊は米軍の後方支援しかできないから、米軍が主力にならなければならないわけです。
ところが、日本は本当に自分の国を守るということを、覚悟を決めて、そういう政策に舵をきる。そしてそのための軍事力もしっかりと整えていく。
そうなれば、わざわざアメリカが多くの兵力を割く必要もないわけです。

そのことによって沖縄普天間問題をはじめ、基地の問題も、違う方向に進むわけです。
今のTPPの問題は、これから日本が正しい方向に舵をきっていけば、戦後の様々な問題を根本的に解決することができる、大変大きな、ある意味でいいチャンスなんです。

ところがそれをまったく考えも、検討もぜす、いきなりTPP賛成だということを、いきなり菅直人という人が言い出しました。
平成の開国だと言うけれど、日本が鎖国しているのならいざしらず、開国しているわけです。
開国の開国は、国を破壊するほどの壊国でありますし、TPPはBKDそのものなんです。

BKDというのは知らない人が多いので説明しますが、売国奴と意味で、私は府会議員のときは「売国奴」と言ってましたが、「西田さん、売国奴なんて下品な言い方はやめなさい」とある方に言われたので、それじゃBKDということにしとこうかと。

(藤井:日刊ゲンダイにBKDって出てますよ。中野君の写真と)

このBKDの言い始めは、この藤井先生の下におられる中野剛志さんという京大准教授が言い出したんですけど、まさにTPPはBKDなんですよ。

そういうことを我々は知っておかなければならない。

自民党の中でも、TPPに賛成されている立場の方もおられました。
しかし、結局何がメリットなんですか、といったときに、貿易を伸ばすんだとか日米関係がどうだとか言うのに対して、今私が言ったようなことを反論として言いますと、まともに反論できないんです。

そんなことを言うと、我々自民党、というか政治家が、戦後の枠組みでしか物を言っていませんでしたから、西田君の言うのはそうだけれども、いきなりそんなことを言っていいのかい、という恐れがあるわけです。だからそこまで言い切れない。
言い切れないけれども、多くの、自民党の先生がたはやっぱりそうだなと思っておられるんですよね。民主党の先生だっておそらくそうだと思います。

もうしばらく、どうすべきかということを根本的にこういう話を議論すべきなんです。
ところが議論もしないでいきなり先に入りますなんてことはあり得ないと思うんですよ。

しかも民主党政権、一番問題だなと思うのは、普天間の問題も含めて、彼らは一部良いことを言うんですよ。
それは何かというと、元々彼らが政権をとるときには、構造改革は間違いだ。格差社会をつくったりグローバルスタンダードのような形で日本を世界の競争社会の中に入れてけしからん。冷戦後のアメリカ一極支配になって、結局アメリカのポチになったんじゃないか。アフガンのときもアメリカに一方的に荷担したのは間違いだ。大量破壊兵器もなかったのに何だ、と。そんなことを彼らは野党時代ずっと言っていたわけです。

私も実は彼らがそういうたびに、「そのとおりだ!」と言ってたんです。
そうすると自民党の席から民主党の方に「そのとおりだ!」という応援のヤジが飛びますから、びっくりしますよね。
「何だおまえは!」というから、「私は前からそう思っていたんだ!」と。
郵政の民営化がおかしいじゃないか、というと「そうだ、それもおかしいんだ!」と。
そうすると彼らは私が言っていることがわからなくて混乱するんですが、混乱しているのは私じゃなくて彼らの方なんです。

我々が与党だったとき、彼らは野党として、白といえば黒と言えばいい、右といえば左という形の後出しジャンケンをしていたわけです。

与党時代の自民党がやってきたグローバリズムにどんどん巻き込まれていく、もっといえば、アメリカの戦後の占領から抜け出すことよりも、グローバリズムに巻き込まれることによって、戦後がどんどん完成されていくということに対する異議申し立てを、私は一貫して言ってきたわけですが、民主党政権はそういうことがまったくなかったんです。

私が一番最初当選した平成19年のときに、参議院では我々は少数党になってしまい、その後、野党に転落しました。
そのこと自体は残念ですが、もしも民主党が彼らが言っているように、戦後政治のタブーに触れるような、たとえば、米軍基地は日本にいらない、自分で自分の国を防衛します、という論法にもっていったり、グローバリズムに流される必要はない、自分たちで内需を拡大するという話にもっていくのなら、大いによかったんですよ。

ところが彼らがやり出したのは、まったく逆です。
グローバリズム反対だ、競争社会反対だと言っておきながら、彼らがやり出したのは徹底的に構造改革を推し進めることですよ。
事業仕分けをすることによって、デフレで一番困っているときに、公が需要をつくって仕事をつくらなければならないのに、その予算を次々カットしていく。コンクリートから人へと言って、次々その予算を切っていく。
そして普天間の話もこの前までは対米のポチになってはいけないと言っていたのに、今はいきなりアメリカにしがみついているじゃないですか。

菅直人はまだそんな人かもしれません。
ところが野田佳彦って一体何なんですか、この人は。
まったく意味不明ですよね。そういう人が今政権をやっている。
そうなってくると、解散総選挙しかないわけなんです。

解散総選挙をやるにしても、今の民主党が間違いなのは事実ですが、かといって今までの自民党がやってきたことがよかったのかといえば、問題は自民党にあるわけです。

自民党が構造改革を始め、戦後の体制をそのまま温存してきてしまった。
だから、ここが根本的に違うということを言わない限りダメなんです。

そのためにはどうするか。

こういうことを私は自民党の会でも国会でも言っていますが、そうだと思ってくださる方もだんだん増えてきました。
しかしまだまだ少数です。それを多数にしていくためには、今日ここにお集まりいただいたみなさん方が、それぞれの地域でそれぞれの政治家の先生に申し上げていただきたい。

政治家というのは結局世論に弱いんです。
みなさんが、さも応援しているような顔で、その政治家に言うんですよ。
先生本当はTPPはこうじゃないんですか、と。本当は日本はもう少し自立しなくちゃならないんじゃないですか、ということを有権者、国民の方がドッと言ってくる。

政治家の先生方も本当はまともに考えている人なら、みんな誰しも腹のなかではそう思っている人は、結構多いんです。
でも、そういうことを言っていたら落選する、自分が落ちてしまえば意味がないじゃないか、だから方便でも戦後のそういう状況は認めなきゃしかたがないんだと思っておっしゃる方もおられるんですよ。

そういう方々が、みなさんによって、どんどん、やっぱりそうか、この頃は変わってきたよなあ、ということになってきた。
また私は、ヤジをはじめ国会の中で「おかしいじゃないか!」と言っていますが、ああいうやつも最近認められるようなことになってきたんだ、と。
そういう道筋がついているんです。

だからそういうことを次々次々やっていく。
それは戦略とかじゃない。すぐ成功するとか失敗するとかじゃない。
これはもうやっていかざるをえないんです。
物事というのは、損得とか戦略を考えると進まなくなるんです。

大事なことは、もっと本質をしっかり見て、あとは私が成功するかどうかは知らないが、私が倒れても次の世代の人がきっちりやっていく、またはその次の世代がやってくれればいいじゃないか、と。そういう思いでしっかりやっていけば、間違いなく政治は変わるし、国も変わってくる。

そういう思いを伝えるためには、いろんなところで広報もしなければならないし、人を集めていろんな会合もしなければならない。
そのためには結局お金もかかってくるということで、長い言い訳話になりましたが、この会を催すことになったわけでございます。