幼い少年、

樹を植えた。

一緒に大きくなろう。

僕は、立派な鳥になり、空を翔ぶ。

君は、立派な幹と枝をひろげ、

美味しい木の実がたくさん実るように。


キットネ。約束ダヨ。


それから、幾年も経ち、

少年は鳥になれずに、大人になった。

働くために、都会に引っ越し、

仕事を得て、結婚し、子どもが生まれ、

いつしか、約束の樹のことは忘れていった。


ある日、実家の母から小包が届いた。

中には、たくさんの綺麗な林檎。

同封の手紙には、

約束の樹が、切られる前に、

例年よりも、立派でたくさんの実をつけたことが、

書かれてあった。


かつての少年、思い出した。

樹と交わした約束を。

休日に家族で樹を訪ねた。

そこには、切り株だけが残されていた。

立派な樹だったのだろう。


ずっと、待っててくれたのにね。

会いに来るのが、遅かったね。

ごめんね。


家に帰って、食べた林檎は、

本当に瑞々しく、甘く、優しい味がした。




君が、今度行こうって言ったから、

放課後、教室で待っていたのに…。

いつ行くのか、とかさ。

ちゃんと誘えよなっ。ウソつき。

僕は、草笛吹いて、帰っちゃう。


道草くって、帰り道。

…また、あの店に行こうかな。




…泣かないで。ソフィー。

物語を書いたあとは、

胸や背中が苦しくて、時どき涙が出てしまう。

なかなか泣き止むことができなかったので、

しばらく前から、たまきさんが私の頭を撫でている。

ちょっとぎこちない抱擁が、かえってあったかい。


…以前は、涙も出なかったものね。よくなってるよ。


(あったかいなぁ。気持ちいい。でも、申し訳ないな。)


あんまり一途に、ずっとずっと撫でるので、

なんだか、にんまり笑ってしまった。