2024年5月2級FP試験の出題傾向について
今回の2級学科試験は、2024年1月よりも難しかったと思います。
特に金融分野と相続分野はかなり細かい論点が出題したので、解答に困った受験者も多かったと思います。
言葉は悪いですが、はっきり言えることは、学習不足の人やうろ覚えの人を殺しにきているなと感じました。
3級と2級ではかなり難易度に違いがあり、3級を楽勝で合格したから2級も楽勝だろうと甘く見ないほうがいいです。
個人的な主観ですが、3級レベルの知識で解ける問題はかなり減ったと思います。
2級と3級では明らかに問題の難易度が異なるため、かなり細かい論点まで学習しないと合格ラインの36問以上正解はできなくなってきていると感じます。
1.学科
(1)ライフ分野
ライフ分野は年金・雇用保険ともなかなか細かい論点が出ました。
選択肢の中にも難しいものを差し込んで解答しづらくなっています。基本事項をしっかりと抑えていれば解けたと思いますが、選択肢の中には細かい論点もありましたので油断できません。
年金や雇用保険についてはうろ覚えで試験本番を迎えるのではなく、全体像をしっかりと抑えて臨まないと撃沈させられます。
(2)リスク分野
リスク分野は今回一番易しかったと思います。
3級の知識がしっかりしていればほぼ解ける問題ばかりでした。
ここで得点を稼げた人も多かったと思います。
総合福祉団体定期保険・団体定期保険やトンチン年金保険などは2級でよく出題されるので必ず学習しておいてください。
(3)金融分野
2級になると急に難しくなる金融分野ですが、明らかに学習不足の人を狙い撃ちにして殺しにきているなと感じました。
2024年5月2級学科問21消費者物価指数 |
消費者物価指数に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。 |
1.消費者物価指数のうち、「生鮮食品を除く総合指数」や「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数」は、消費者物価の基調を把握するうえで有用である。 |
2.国民年金や厚生年金保険の年金額は、物価変動率等に応じて毎年度改定を行う仕組みとされており、当該物価変動率には、消費者物価指数のうち、「総合指数」が用いられている。 |
3.消費者物価指数のうち、「生鮮食品を除く総合指数」は、景気動向指数の一致系列に採用されている。 |
4.消費者物価指数は、基準となる年の物価を100として算出されており、基準年は5年ごとに改定されている。 |
経済や景気の仕組みをなかなか理解できない人が多いです。
まずは細かい論点より全体を覚えていかないといつまで経っても理解できないと思います。
ココナラの生徒さんも最後まで苦労した部分でした。
その他の問題もなかなかいやらしい部分を突いてくるなと感じました。
苦手な人は3級の問題を徹底的にやって知識を積み上げていって欲しいと思います。
基礎的な知識がない人にはかなり辛い問題の連続でした。
(4)タックス分野
タックス分野は一番安定した出題傾向でした。
3級の知識+2級の学習でクリアできる問題だったので、この分野で得点できた人は合格に近づいたのではないでしょうか。
ココナラの生徒さんと「そろそろインボイス制度が出そうだよね」と話していたら出ましたね。
こちらは今後頻出論点として追加したいと思います。控除関係も再編したいと考えています。
今回は珍しく簿記問題が出ませんでした。
おそらく各分野の難易度のバランスを取ったためだと思われます。
(5)不動産分野
不動産分野はこの問題が象徴していたと思います。
2024年5月2級学科問45建築基準法の規定 |
都市計画区域および準都市計画区域内における建築基準法の規定に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。 |
1.敷地の前面道路の幅員が12m未満である建築物の容積率は、原則として、「都市計画で定められた容積率」と「前面道路の幅員に一定の数値を乗じて得たもの」とのいずれか高い方が上限となる。 |
2.建築基準法第42条第2項により道路境界線とみなされる線と道路との間の敷地部分(セットバック部分)は、建蔽率を算定する際の敷地面積に算入することはできないが、容積率を算定する際の敷地面積に算入することはできる。 |
3.建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1m以下にあるものの住宅の用途に供する部分の床面積は、原則として、当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の5分の1を限度として、建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入されない。 |
4.共同住宅の共用の廊下または階段の用に供する部分の床面積は、原則として、建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入されない。 |
この問題は1級で出題される論点が差し込まれています。
これは宅建試験で出るような問題です。
今後不動産分野は宅建試験で出るような問題が増えていくと考えられます。
CBT試験になればこういった出題傾向の把握が難しくなるので、「どこまで突っ込んで学習したらいいのか」迷う人も出てくると思います。
上記の問題の場合、選択肢の1と2は3級の知識で分かりますが、3と4はかなり学習していないと正解かどうかは分かりません。勉強をした人でも50/50まで正解を絞り込むのが精一杯かもしれません。
不動産分野の宅建試験化には要注意です。
(6)相続分野
相続分野は今回一番難しかったと思います。
細かい論点が数多く出ていたので、3級の知識だけで解ける問題は激減しました。
学習不足の人や3級の知識も怪しい人にとってはどれも難問に見えたと思います。
2024年5月2級学科問59小規模宅地等の特例 |
小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、相続人が相続により取得した宅地は、相続開始直前において被相続人等の事業の用に供されていなかったものとし、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。 |
1.相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地を相続により取得した被相続人の配偶者は、相続税の申告期限までに当該宅地を売却した場合であっても、本特例の適用を受けることができる。 |
2.相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地を相続により取得した被相続人の子が、当該宅地上の被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に相続開始前から相続税の申告期限まで引き続き居住し、かつ、当該宅地を相続開始時から相続税の申告期限まで所有していた場合、本特例の適用を受けることができる。 |
3.相続開始直前において被相続人および被相続人の配偶者の居住の用に供されていた宅地を相続により取得した被相続人の子が、当該宅地を相続開始後に初めて自己の居住の用に供し、相続税の申告期限まで所有していた場合、本特例の適用を受けることができる。 |
4.相続開始直前において被相続人と生計を一にする被相続人の母の居住の用に供されていた宅地を相続により取得した被相続人の配偶者は、本特例の適用を受けることができる。 |
小規模宅地等の特例では適用限度面積や減額割合も大事ですが、2級では適用要件の方がもっと大事です。
相続をする者ごとに適用要件が違い、どんなケースが特例で適用されないのか整理しておく必要があります。
今回の問題で一番勉強になるポイントです。
2級対策として相続分野で配偶者居住権・会社法・遺留分に関する民法の特例は必ず学習しておいてください。
全体的にかなり細かい論点を問う問題が増えたかと思います。
今後も3級の知識だけで解ける問題はかなり減っていくと思います。
勉強が不足している人は2級合格が難しいと思うので、基礎知識を徹底的に復習してから2級の論点を細かく学習するという2段階の学習が必須です。
「殺しに来ている」という過激な表現をしましたが、正解を50/50に絞り込むのも難しい問題が増えたことは事実なので、生半可な学習では合格ラインをクリアできないことも考えられます。
とにかくしっかり学習することを求められているなと感じました。
2.実技
(1)金財(個人資産)
○×問題と語群選択問題はほぼ3級レベルで解けたと思います。
計算問題は、年金計算・株式投資指標・債券の利回り・建ぺい率等・相続税額の計算は定番問題でしたが、少し難しかったかもしれません。
総じて学科より解きやすく、実技は3級の知識+αでまだまだ通用します。
実技から学習を始めて学科にフィードバックする学習方法なら学科・実技両方不合格は避けられますから、トライしてみる価値はあると思います。
(2)FP協会(資産設計)
FP協会の実技試験の問題構成は2つに分かれると思います。
・3級の知識でそのまま解ける問題
・2級独特の問題でやや癖がある
基本的には3級ベースで作られているが、問題が独特なので慣れが必要です。
特に計算問題は解法パターンが一定ではないので多くの過去問を解いていかないとなかなか身に付かないでしょう。
計算問題は簡単に解ける問題とやや面倒臭い問題に分かれます。
基本的に税務に関する計算問題は易しいと感じました。
ここは確実に取っておきたいです。
問5のような株式の分割に関するような問題はなかなか学科でも出ません。
こういう問題も出るので過去問だけでは学習できないかもしれません。
とにかく計算問題で時間がかかりそうなものは後回しにして確実に解ける問題からやらないと解答時間がなくなります。
このボリュームだと90分で解くのはかなり厳しいです。
毎回出題がパターン化されていないFP協会実技を選択する人は過去問だけでなく満遍なく学科を学習しなくてはならないことは覚悟してください。
3.総評
2級学科は今後も難しくなっていくと思います。
3級はある程度学習すれば取れると思いますが、2級はかなり学習しないと合格できないとはっきり言えます。
個人的に「10年前と比較してずいぶん難しくなったな」と実感します。
2025年から2級もCBT試験に移行予定です。
どんな問題が出るかは分かりません。
実技試験の解答時間は90分から60分に短縮されますので、このボリュームだとサクサク解いていかないとあっという間にゲームオーバーになります。
結論として紙試験で受験できる2024年度中に取ってしまおうということになります。