2024年1月2級FP試験の出題傾向について
今回の2級学科試験は、なかなか難しかったと思います。
例年1月の試験は難しい傾向にありますが、細かい論点や新しい論点など重箱の隅をつつくような選択肢もあり、受験者もかなり迷ったのではないかと思います。
3級と2級ではかなり難易度に違いがあり、3級を楽勝で合格したから2級も楽勝だろうと甘く見ないほうがいいです。
個人的主観ですが、3級レベルの知識で解ける問題は、60問中35問くらいありました。
難易度もかなり上がっているので、しっかりと学習しないと3級レベルの問題も間違えるなどペースが乱されて撃沈ということもありえます。
1.学科
(1)ライフ分野
ライフ分野は基本事項をしっかりと抑えていれば解けたと思いますが、選択肢の中には細かい論点もありましたので油断できません。
未支給年金の税務や在職老齢年金などで細かい部分が出ました。
ココナラの生徒さんとも「クレジットカードの問題もそろそろ出るかも」と話をしていたのですが、予想通り出ました。
基本的には3級の知識がしっかりしていれば選択肢の絞り込みの50/50はできたと思います。
(2)リスク分野
難所である生命保険の商品特徴や経理処理の問題は難しくありませんでした。
その反面、総合福祉団体定期保険・団体定期保険などは勉強不足の人は正解できなかったと思います。
この論点は穴場なので必ず学習しておいてください。
個人年金保険の税務はやや細かい論点が出ましたが、生命保険金の税務は商品別にまとめておいてください。
(3)金融分野
2級になると急に難しくなる金融分野ですが、東京証券取引所の市場区分等の問題ではここまで細かく出るとは思っていませんでした。
2024年1月2級学科問24東京証券取引所の市場区分等 |
東京証券取引所の市場区分等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。 |
1.プライム市場の上場維持基準では、新規上場から一定期間経過後の株主数および流通株式数について、新規上場基準よりも高い数値基準が設定されている。 |
2.プライム市場の新規上場基準では、上場申請会社の直近事業年度におけるROEの数値基準について、8%以上と定められている。 |
3.スタンダード市場の上場会社がプライム市場へ市場区分の変更を申請することはできるが、プライム市場の上場会社がスタンダード市場へ市場区分の変更を申請することはできない。 |
4.JPX日経インデックス400は、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場を主市場とする普通株式の中から、ROEや営業利益等の指標等により選定された400銘柄を対象として算出される。 |
今後はこの論点はかなり細かいところまで学習する必要があります。
ポートフォリオやオプション取引は3級レベルで助かったという人も多いでしょう。
NISA口座は出ないと予想していたのですが、法改正に引っ掛からない論点が出ました。
今後は頻繁に法改正された論点が出ると思うので必須事項です。
2024年1月2級学科問30物価等に関する経済指標 |
物価等に関する次の記述の空欄(ア)~(ウ)に当てはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。 |
・ 財やサービスの価格(物価)が継続的に上昇する状態をインフレーション(インフレ)という。 |
・ 消費者物価指数(CPI)と( ウ )は、いずれも物価変動に係る代表的な指標であるが、消費者物価指数(CPI)がその対象に輸入品の価格を含む一方、( ウ )は、国内生産品の価格のみを対象とする点などで違いがある。なお、( ウ )は、国内要因による物価動向を反映することから、ホームメイド・インフレを示す指標と呼ばれる。 |
1.(ア)コストプッシュ (イ)ディマンドプル (ウ)企業物価指数 |
この問題も経済の仕組みが分かる人は解けると思いますが、チンプンカンプンの人も多かったと思います。
問題の中にほぼ答えが書かれているので慌てずに解きましょう。
(4)タックス分野
所得税の納税義務者は迷う人も多いですが、納税者を具体的にイメージして解いてください。
寡婦控除についてはなかなか細かい論点が出たので学習していない人も多かったと思います。
控除については寡婦控除よりも重要なものがあるので、そちらを覚えてからにしてください。
法人税と消費税は逆に簡単だったと思います。
法人税の益金算入は少し難解でしたが、ある程度学習していた人は選択肢から消去法で正解できたのではないでしょうか。
簿記問題は2級で唯一の捨て問題と考えていますが、がめつく得点したい人や余裕があれば学習してください。
(5)不動産分野
不動産分野はほぼ3級の知識でほとんど解けたと思います。
この分野を苦手としている人は苦労したと思いますが、ここが取れるか取れないかで合否が決まった人も多かったと思います。
(6)相続分野
先のブログにも書きましたが、2級学科のクソ問題はこれでした。
2024年1月2級学科問59非上場企業の事業承継 |
非上場企業の事業承継のための自社株移転等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。 |
1.「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受けるためには、特例承継計画を策定し、所定の期限までに都道府県知事に提出して、その確認を受ける必要がある。 |
2.「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」と相続時精算課税は、重複して適用を受けることができない。 |
3.経営者が保有している自社株式を後継者である子に譲渡した場合、当該株式の譲渡による所得に対して、申告分離課税により所得税および住民税が課される。 |
4.株式の発行会社が、経営者の親族以外の少数株主が保有する自社株式を買い取ることにより、当該会社の株式の分散を防止または抑制することができる。 |
非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例は難易度が高い論点ですが、その中身を問う問題ではなく枝葉のあまり重要ではない論点が問われました。
まずは枝葉の論点ではなくしっかりとど真ん中の論点を覚えるようにしてください。実務で使えないものを覚えても役に立ちません。
相続税の課税財産・非課税財産は2級では必須です。
しっかりと覚えてください。
2024年1月2級学科問60会社法 |
会社法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。 |
1.すべての株式会社は、取締役会を置かなければならない。 |
2.株式会社において株主は、その有する株式の引受価額を限度として責任を負う。 |
3.定時株主総会は、毎事業年度終了後一定の時期に招集しなければならないが、臨時株主総会は、必要がある場合にいつでも招集することができる。 |
4.取締役は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。 |
最近になって出るようになった会社法の論点ですが、このくらいは一般常識として覚えておいて欲しいということでしょうか。
2級で新たに学習すべき論点として加えたいと思います。
全体的にかなり細かい論点を問う問題が増えたかと思います。
試験問題を解きながら3級の知識+αのαの部分の学習がかなり重要だと感じました。
基礎ができていない人は3級の知識をまず学習して完璧にすることと、αの部分(2級での頻出論点)を分けて学習してください。
2.実技
(1)金財(個人資産)
3級でも書きましたが、小規模企業共済や国民年金基金は、確定拠出年金と分けて覚えてください。
2級では更に細かい論点が出ます。
○×問題はほぼ3級レベルで解けたと思います。
計算問題は、年金計算・株式投資指標・債券の利回り・建ぺい率等・相続税額の計算は定番問題でした。
総所得金額の計算はやや難しかったですが、設例をよく読めば解けるはずです。
3級の知識だけでも○×問題の積み上げと計算問題で30点以上の得点は取れる内容でした。
(2)FP協会(資産設計)
なかなか幅広い論点が出たなという感じです。
財形貯蓄、減価償却など学科でも出ない問題が出るのはいかにもFP協会実技だなと思いました。
基本的に3級の知識で解けますが、資料を読み解くという別の能力が求められるのがFP協会実技の特徴です。
資産設計業務というだけあって出題が広範囲なので、学科の学習の出来で差が出やすいです。
問31生命保険の解約返戻金の問題はなかなかいい問題だと思います。
生命保険の特徴は図で覚えることが重要です。
実務に役立つ問題が多いかと言うとそうでもない。
税務が得意な人は圧倒的に金財実技が解きやすいと思うし、計算問題がパターン化されています。
一方今回のFP協会実技は、学科に自信があってどんな論点でもOKという人が合っていると思います。
私はFP協会実技が好きになれませんが、これはこれでありなのだなと思います。
計算のしやすさで金財を選ぶか、論点の分かりやすさでFP協会実技を選ぶかは分かれますが、毎回出題がパターン化されていないFP協会実技を選択する人は過去問だけでなく満遍なく学科を学習しなくてはならないことは覚悟してください。
3.総評
2025年から2級もCBT試験に移行予定です。
どんな問題が出るかは分かりません。
FP協会実技を選択した人はパソコン画面を見ながら解くのはかなりしんどいものになると感じます。
おまけにパソコン上の計算機を使用しなくてはならないので結構大変だと思います。
資料を読み取る能力と計算機を正確にクリックするのは相当ストレスに感じるはずです。
結論として紙試験で受験できる2024年中に取ってしまおうということになります。