2024年1月2級FP学科試験で出された問題の中で一番のクソ問はこれです。
2024年1月2級学科問59 非上場企業の事業承継
非上場企業の事業承継のための自社株移転等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受けるためには、特例承継計画を策定し、所定の期限までに都道府県知事に提出して、その確認を受ける必要がある。
2.「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」と相続時精算課税は、重複して適用を受けることができない。
3.経営者が保有している自社株式を後継者である子に譲渡した場合、当該株式の譲渡による所得に対して、申告分離課税により所得税および住民税が課される。
4.株式の発行会社が、経営者の親族以外の少数株主が保有する自社株式を買い取ることにより、当該会社の株式の分散を防止または抑制することができる。
問題の難易度としては高い方だろう。
何が愚問かと言うと、正解は2なのだが、選択肢1の論点は正に重箱の隅をつつく論点だからだ。
「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の論点なら様々な要件がある。
その要件を問題として挙げるならまだいい。
だがそんな問題を出しても解ける人はほんの一握りの人だから、どうでもいい論点である「都道府県知事に提出して、その確認を受ける必要がある」という選択肢を作ってしまっている。
もしFPが「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」ついて相談を受けても「詳しいことは県の担当者に聞いてください」としか言えない。
おそらく税理士さんでもこの特例について澱みなくスラスラと説明できる人はほとんどいないだろう。
ましてや税務のプロではないFPが説明できるわけがない。
少なくともこういう問題を出すなら、顧客に相談に耐えうるだけの知識を問う問題を出すべきだ。
「詳しいことは県の担当者に聞いてください」と言うだけなら誰でもできる。
ここがFP試験の限界なのだと思う。
税理士試験のような問題を出せばほとんどの人は解答できなくなるから、お茶を濁してどうでもいい論点を差し込むしかないのである。
お金のプロなら「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の中身だけでなく問題点まで把握して顧客の相談に応じなくてはならない。
まぁ現実の問題として「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」をFPに相談する人はほとんどいないと思うが、少なくても事業承継をメインでやっているFPさんなら当然税理士と同じくらいの知識は持っていないといけない。
枝葉の論点ばかりを問う問題ばかりで、論点の本質を問わない問題ばかりでは実務では到底使えない。
顧客に対して「詳しいことは県の担当者に聞いてください」と言ったら負けである。