10年以上前だったと思いますが、NHKラジオ「著者は語る」的な番組で岩川 隆著、ノンフィクション「決定的瞬間」が取り上げられました。

 著者は、アメリカ人の著名な報道写真家、D.D.ダンカンの戦場写真集に掲載された、一人の日本兵捕虜の写真とその説明文を読んだことが、この本を上梓する動機になったようでした。そこで、私は、直ぐネットで『決定的瞬間』とその写真が載っている『ライフ誌 第二次世界大戦・フィリピンの激戦』日本語版を購入しました。

 「決定的瞬間」の冒頭部分を引用します。「おかしな写真であった。戦闘帽をかぶった日本人が米軍の爆撃機の機内に座り、送信マイクを片手にして、窓の外に見える編隊を誘導しているように思われる。前の頁を見なおすと、同じ日本人が米兵に付き添われて投降しているときの写真、米軍の本部らしき部屋で地図をさし示している写真があり・・・・」とあります。

 タイム誌の写真説明には「捕虜となった日本軍の1中尉が、アメリカ軍海兵隊のミッチェル爆撃機とその護衛機コルセア戦闘機群を、ミンダナオ島の彼の所属の師団司令部に向かって誘導している。彼が戦友たちを裏切ることに同意したのは、戦友たちが彼が死ぬまで闘わなかったことで、すでに裏切者と判断していたからだった」とあります。

 著者は、この本の中で「この男は、いまも生きているだろうか、日本のどこかで暮らしているだろうかという思いが私をとらえた。」と・・・・調査が始まるのです。