「夜」 尾形亀之助夜がさみしい眠れないので夜がふける私は電燈をつけたまゝ仰向けになつて寝床に入つてゐる電車の音が遠くから聞えてくると急に夜が糸のやうに細長くなつてその端に電車がゆはへつゐている しゅるる しゅるる 夜が巻きついて 電車にひっぱられる ぼーっぼーっ港の汽笛も 夜の暗闇を飛ぶ なんてせつない音夜はつれてくる 甘い音もあなたの面影も うらら花