ガニメデと気球
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深窓

写真の中に彼はいる。いつも着ていた枯れ草色のパーカーと、踵のよれた靴を履いて。

彼の目がこっちを見ている。その目は今も私を裸にする。

過去の彼を眺め、今もそこを動けない私の心。切り取られた写真と、目の前の彼。

少しずつ色褪せていく、写真も、パーカーも。

嘘をついて後悔した。もう嘘はつかないようにしようと、また自分自身に嘘をついた。

一瞬の気の緩みや甘さは自分自身への誤魔化しを生み、真実と自分との間に一枚ずつベールを張る。

嘘を重ねベールが厚みを増す度に、真実は見えなくなり、ついにはそのベールに守られている感覚が生まれる。

真実を探索する上でその感覚ほど邪魔なものはなく、常に取り払いたいと考える日々です。

しかしその度にべたついた膜に絡めとられ、方向感覚さえ狂ってしまったように感じます。

慌ただしい日々の中で少しづつでも前に進もうともがく程また小さな嘘が積まれていきます。

この状況を打破するために少し立ち止まって、助走する期間が必要かもしれません。今見えていることが嘘じゃないことを願いますが。


では、では。

深窓

その記憶は春先の生暖かな風に吹かれてざわざわと音を立てる木の葉と同じように揺れ動かされる。


何年も前のことだろう、記憶の中である家族が家の門の先に立ち、満ち足りた笑みを浮かべながら家族写真を撮ろうとしている光景が思い出される。

雨上がりの土のような深い茶色の袴に身を包み、力強く、しきりに子供二人の頭を撫ぜる父親。

その傍らで幸せそうにほほ笑む清楚な風な一人の母親らしき女性。彼女は凛とした立ち姿の中に艶な曲線を映し暗闇の様な黒一色の着物によってもまた一段と高潔に見えた。

そんな光景を端に見ながら私は彼らから離れた垣根の下に蹲り、少しでも大きな石を掘り返すことに夢中であった。ついに大きな石ころを柔らかな土から引き抜いた私は、汚れた腕にその成果を抱いて満面の笑みで写真を撮ろうとしている一家の女性を見た。

彼女は一瞥し、一瞬だけ、軽蔑と憎しみの視線を私に投げた。しかし、すぐ自分の子供の方を向きなおり、先ほどまでの優しげな母親の姿を取り戻し二度と私を見ようとはしなかった。

その時今日のような春の訪れを知らせる温かな風が吹いたのを覚えている。

その風と共に私の中から母親に対する感情も去って行ったのであろうと、今になって思う。

写真のシャッターが切られた時、私の期待していた世界はフィルムに吸い込まれ、残された世界は同時に色彩を失った。

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