訪れたジュエリーのブースのテーブルの上に花瓶がおかれていた。
小さな葉をてっぺんにちょこんとくっつけた
ガクあじさいと、葡萄酒色のチューリップと
名前の知らない細いクルクルとした緑色の草があしらわれていた。

ガクあじさいの萌黄色の葉とうす茶色の枝
チューリップのベルベットのようなつややかな紫
とちょっと濃い細い緑色の草の取り合わせが
今まで見た事がなく、モダンで新鮮。
ガクあじさいは、お花でよく使う花材なのだが
ほっそりした枝とてっぺんにしかない葉の
お陰でごまかしが効かない、私はいつも悪戦苦闘していた。
「いったい誰がいけたのだろう?」
会場内のほかの場所には、花瓶は全く置かれていない。


傍で話をしていたデザイナーに思いきって尋ねた。
「この取り合わせ、すごくいいと思うのだけれど
どなたがいけられたんですか?」
「いけたのは一階の花屋さんです。何だかお客様
をお迎えするのにあまりにも殺風景で、落ち着かなくて。
2日しかいないのにもったいないとは思ったのですけれど
何だか植物があるとほっとするので、飾ってもらったの。」
花の取り合わせも彼女が店の人と相談しながら決めたそうだ。
やっぱり、と思った。
毎回楽しみにしている商品のカタログには、必ず花が登場するし
その色、取り合わせにいつも私はため息をつき、感心していたからである。
彼女の作るジュエリーの雰囲気をそのまま受け継いだような
シックで美しい、どこか退廃的、繊細で微妙な花が写っていた。

人のもてなし方には色々ある。
たった2日間限りだけれど、言葉に表せない様々な気持ちを
彼女は花に託したのだろう。
私は多く訪れる客の一人にすぎないけれど、彼女の心意気はうれしかった。

お茶とお花を習っている先生の家でも、玄関先に必ず
週ごとに違う出迎えの花が飾ってある。
そして、その取り合わせ、いけかたは期待を裏切らない。
今週はどんな花に出会えるのだろうと、いつも楽しみにしていた。
ある日思いきって先生に尋ねてみた。
すると、静かに笑って「一期一会なんですよ。」と答えられた。
例えお稽古で毎週来ることになっていても、実際翌週来る事が
出来るとは限らない、人生とは何が起こるかわからないから。
だから今週もよくいらっしゃいました、という気持ちでいけるんですよ、と。

私はこの2人には、まだまだ及ばないけれど
人をもてなす心・姿勢だけは忘れないでいたい。
人をもてなすのは、豪華な花を飾ったり、料理を作ったりすることではなく
例えありふれた材料であっても心をこめて作る事。
心をこめて花を飾る事。
心をこめて掃除をする事。
一期一会と思い、心をこめて準備をする事。
その心意気は必ず相手に届くから。