成功よりも。 | サボリ通信

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大村幸太郎ブログ

 

先月の2月25日より京都市産業技術研究所主催のろうけつ染講習を受けてきました

染色家の髙谷光雄先生を講師に迎えて夕方18時から22時頃まで4セットで授業を受けます。
@京都リサーチパーク実習室





仕上がり図を参考に、ロウを塗り、形作って染料で一色ずつ塗り重ねて作品を作っていきます
僕はこの授業を通じて自身のスキルを上げる事、自身の作品を良くしたいから6500円の受講料を払って受けにきている 僕は着物のプロだ 必ず、かけた時間もお金も報いるようにする 遊びのつもりはない 先生の教えをしっかり乞うのだ


仕上がり図写真

 


この図案配色を参考に作業を進めていきます





1日目- 2/25
僕の制作がはじまります

 

 

 

 

 

 


2日目- 2/26

 

 

 

 

 

 

 

 

3日目- 2/27

 

 

 

 

 

 

 


4日目- 3/1


仕上げは自分で背景をデザインして、教えていただいた技法を使って仕上げます
僕は壁をレンガ造りにして穴を開けて、そこにネズミか何かが潜んでいるようなものにしました
平面の中に奥行きと穴の向こうにもう一つ異世界があるようなそんな空気を出したかった

4日間とは言えこの辺りになると作業も慣れてきている 上手く出来ている気になっている
作業も楽しかった。 僕は出来なかった表現ができるようになった
 

 

 

 

 

 


そして授業は終了し一週間後、作品が上がってきた 見た瞬間、
僕はこの時ほど、こなせる−という事の恐ろしさ、出来る−という事の自惚れを、その恐ろしさをこの日ほど感じたことはなかった

基本が、全く出来てなかったのである

 

染め上がり

僕は見本を見ながら猫の色の濃度を見本より薄くした、その方が美しく仕上がると感じた、見本の色はキツいと感じてしまったから
その結果、僕の作品からは主人公が消えてしまった。
つまりは猫は背景の濃度と近くなり共に薄っぺらい存在にしてしまっ

 

 

 

 

 

 

先生の見本

 

 

着物の世界では薄い色やぼかしを活かす事が、多々ある 僕はその印象をここに投影してしまっていたのだ 薄く上げる方が美しい、そんな思い込みを持って、つまりこの作品というものが最初から見えていなかった、この作品に何が重要なのかを。

ネズミの穴などそこにさらに付けてしまうのだから、いよいよ馬鹿である

この作品の主人公は猫でなく−ネズミ穴となったのだ 

作品とは主人公である。その存在がありサブがあり、背景がある。 その確固たる意識があってはじめて色の濃度や組み合わせ、技法というものが必要になってくるのだ。 そんな基本も掴みとれず、作品性や表現力にこだわり、つまりは出来る、こなせるという自惚れがあって、当たり前の統括的な構成を考えていなかった。 作品が上がってきてはじめてこの作品の命に気づいた。 いつもそうだ いつまでこんな失敗を続けるのだろう
素直に取り組まれた生徒の皆さんの作品は輝いていた。 猫はいきいきと命に溢れていた。

 


講習はこの日全て終わり、
最後に髙谷先生と助手の井上先生がこう締めくくった

「これから色々な作品をいっぱい見てください。そして作品を制作し、失敗してください。失敗は大きければ大きいほうが自分の中に残ります、失敗あってこそ良い作品とはわかるものなのです、 皆さん、これからも大いに失敗なさい。」

成功より大事なもの、僕はこの講習で本当に大事なものを教わった 同じ失敗はもうしない、しかし失敗はこれからも大いにしてやる。打ちのめされて泣いて覚えていってやろうと思う こういう時はM気質でほんと助かってるなと思う

 



ありがとうございました髙谷先生


今日この日にこのまま書き留めておきたかった。


この作品は額に入れ、戒めとして仕事場に飾ります 良いものを必ず作ってやる