父がうどん屋を始めようとしている、
と母から聞いたのは、今年の元旦に帰省した時のことだった。
私の父は、家で仕事の話をすることがなかった。
そのため、子供の頃から、自分の親が何の仕事をしているのか知らなかった。
健康保険証に書かれてある会社名と、家にある商品に記載された会社名が一致していることや、
時々学校などに提出する資料に記載されている情報などから、
何となく、ある種類の商品の製造業をしている、くらいの情報は仕入れていた。
とはいえ、なぜか直接聞いてもはぐらかされるし、そこまで興味がある話でもなかったし、そのまま大人になっていた。
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しかし、うどん屋、というのは初耳だ。父から飲食業に興味がある、という話も一切聞いたことがない。
父の姉(私の叔母)は、猛烈に反対してとめているし、
母は、「よくわからないけど、最近、食べ歩きについてってるなぁ〜と思ってたんだよねぇ(笑)」とのんきな返事。
私には飲食業に対する知識は一切ないが、多分、食べ歩きでうどん屋は始まらない。
父には、何を聞いても、なぜうどん屋を始めようと思ったのか、動機を教えてもらえない。
父から聞き出せた情報は、
① 同業の会社を買った
② その会社を子会社にする
③ 子会社の同業の部門はどう頑張っても不採算
④ その会社をうどん屋にする
である。③と④のつながりが1ミリも理解できない。
父は、
食品なんたらの研修に出た、寝ないで真剣に話を聞いたんだ〜テストも受けたんだ〜
人を呼んで勉強している、職人はもう決まっている、同業の会社にも勉強に行かせてもらっている、
そして、
母と食べ歩き(うどん以外含)をしている、
と、よくわからないことしか言わないので、
「へぇ〜面白そうだねぇ〜」とこたえておいた。
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それから何の情報も聞かないまま、4月になったので、母に聞いてみた。
娘からの質問に対する母の返事は、
「よくわからないけど、それなりにオープン間近?」
よくわかってない返事と、信用性を失わせるスタンプだった。
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それからしばらくして、4月終わり頃、姉から、「うどん屋できるっぽい(笑)」、という情報を聞いたので、母に再度確認。
相変わらず、「?」が多く、はっきりしない。
なんと、
プレオープンの前日にもかかわらず、
オープンの日を父もはっきり知らないという。
さすが私の親である。
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そこから数週間後、母からのライン。
誤字ひどすぎるだろ。
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その後、ゴールデンウィークに、姉と一緒に実家に帰り、オープンしたばっかのうどん屋に行った。
普通に美味しかった。
しかし、
「なんでまたうどん屋を始めたの?」
と聞いても、
「それだけは絶対に教えられない。」
と、頑なに教えてもらえなかった。
謎が多い。
今も、私は、親の職業をよく知らない。
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なお、これは逆もそうであり、親も私が何の仕事をやってるのか知らない(正しくは興味がない)。
先月親に会ったときに、母親から、「ごみ掃除と地域の委員は無事終わったの〜?」と聞かれて、
え、私、何の話してたっけな、と思い出せなかったので、「え、どこのごみ掃除のことかな・・?」とこたえたときには、もう次の話題にうつっていた。