今回の日馬富士の引退は、結果として致し方なかったと思います。

 

さまざまな企業のパワハラ防止研修に、講師として関わっていますが、悪意をもってやっているパワハラ案件は少なく、最近とくに増えてきているのが、相手のためを思ってやっているケースです。

 

相手を成長させてあげよう、礼儀を教えてあげよう、自分も上司からそう育てられ、非常に感謝している。そのおかげで今の自分がある。そういった成功体験がドライバーとなり、自分の行動を掻き立ててしまった結果、行き過ぎた指導になり、相手を傷つけ、ひどい場合はメンタル不全に追い込んでしまうケースです。

 

今回のように身体的暴力に至るケースは、一般の企業内では少ないのですが、徒弟制度などが残っている職場では、なかなかなくならないのも実態です。昔からの環境であるため、公にはせず最終的には示談などで内々に片づけてしまいます。

 

まさに、今回の相撲界においても格闘技同士ということで、内々に片づけてしまいたかったというのが本音かもしれません。

 

しかし、貴乃花親方はそういった相撲界を改革したいという気持ちがあったのか、問題を公にだす行動にでたわけです。実際、問題発覚時にそれを内々で片づけてしまうことは、組織の改革を妨げてしまうことは明らかです。

 

悪意ないパワハラで訴訟されたケースをみていると、加害者が被害者に対して反省するまでにはかなり時間がかかるようです。本人は相手のためにやっていると思い込んでいる以上、それを覆すことは容易ではないのです。

 

今回のように被害者の態度やマナーが悪い場合、とくに厄介です。時代が大きく変化し、価値観の相違が明確な今だからこそ、起きてしまうのでしょう。

 

とにもかくにも、相手を変えてあげたくても、手を上げてしまえば負け。もちろん、暴言を吐いても、相手が変わるとは限りません。

 

久々にモンゴルの会に参加した貴乃岩にとって、モノゴル力士会の環境になじんでいなかったところで起きた事件。

 

例えば、転勤してきたビジネスマンが、なかなか環境になじめず、そこではマナーに反する行動をとってしまった。そこにいた上司が注意をした。上司からの注意を聞く態度が悪いと、横にいた先輩が彼を殴ってしまった。それがうやむやに内々で片付かれれば、そこの環境は変わらない。公になれば、加害者は辞めざるを得ない。

 

しかし、そこからが組織改革の始まりです。

 

今回も、相撲協会は、日馬富士が引退したことを無駄にしないように、早い段階で改革の動きに着手することを願うばかりです。