私が起業当初からお世話になっている知人、大槻茂氏の著書
『危機管理と広報』
をじっくりと読んでみました。
すでに、発行してから1年経過した本ですが、なかなか読む機会がありませんでした。
ここのところ、危機管理的な方面における仕事が多いこともあり、
さらなる勉強と思い、マーカーで線を入れながら、熟読させていただきました。
著者とは、弊社クライアントの模擬記者会見でもお世話になったことがあり、
7~8名の元記者と現役記者による模擬会見は、かなり現場に即したもので、
クライアント広報担当者をうなづかせるようなメディアトレーニングです。
著書そのものには、彼のこれまでの成功経験もふんだんに書かれており、
元読売新聞編集者の立場から見て、失敗と思える広報例も実名入りで掲載されているという、
なかなかない内容です。
その中で、一様に書かれていることは、企業における広報部門への軽視という点です。
もちろん、数十年前と違い、コンプライアンス問題で騒がれている昨今、
広報を軽視するなんて、とんでもないと思う人も多いでしょうが、
広報そのものを軽視しなくても、
社会そのものを軽視してしまっている企業が多いことは確かです。
謝罪会見にしても、何に対して謝るのか。
被害をこうむった人に謝るのか。
株主に対してか、顧客に謝るのか。
実は、法人として、「社会に対して謝る」という気持ちが重要なのですが、
なぜか、その社会そのものを甘く見ているケースが多いというわけです。
東電のケースを挙げれば、うなづく人も多いのではないでしょうか。
しかし、東電に限らず、
言い訳をしてしまったり、嘘が通じると高をくくってしまったり、、、、、
著書にも書いてありましたが、
広報はトップ次第
ということです。
自分がトップのときに問題が生じることを誰もが好まないことは事実です。
しかしながら、起きてしまったことに対する対応は、もっとも重要な判断となります。
よく記者会見で、「自分は知らなかった」という企業トップがいます。
まさに、社員のせいだといわんばかりです。
知らなかったような組織を作った責任がトップにあるにも関わらず・・・・・・。
一方で、著者が問題視していることは、
広報担当者が、「広報はトップ次第」ということに甘えている節もあるというのです。
実際に、私も多くの企業の会見に関わる中で感じることは、
なかなかトップに耳の痛い話はしにくいわけで、
それをやってのける広報担当者は多くはいないということです。
社長の首に鈴をつけることがいかに難しいか。
しかし、それをやらなければ、広報部門の役割を果たすことは到底不可能だということを、
著書には、具体的事例を取り上げながら語られていました。
広報担当者であれば、ぜひとも読んでいただきたい1冊です。
『危機管理と広報』
彩流社 1900円(税別)
著者 大槻茂氏
元読売新聞編集者
株式会社 広報戦略研究所 代表