「医局」という言葉に2つ意味がありまして、1つは「医師が集まっている部屋」、もう1つは「大学病院などの〇〇科の、医師の互助会みたいな組織」です。

今回は、後者の医局という組織について話します。少し長くなります。

 

医師免許を取り、最初の2年間は初期研修医として、内科(24週以上)、救急・麻酔科(12週以上)、外科、小児科、産婦人科、精神科、地域医療(各4週以上)の7つは必修科としてローテートし、その他は選択科として(2024年現在)、個人の志向や希望に応じて科を選択するシステムになっています。

 

初期研修後の医師3年目以降は、専攻したい科を専攻します。

内科とか外科とか精神科とか。

 

この3年目以降ですが、3年目から大学医局に所属する医師が大半です。

医局に属すると、たくさんの先輩医と交流が持てます。何かと面倒を看てもらえたりしますし、寄らば大樹の陰なのかもしれません。特に外科系では、手術などは先輩から手解きを受けながら覚えるという徒弟制度的な色合いが強いですから、外科医ではほとんどの医師が医局に所属するものと考えられます。

 

内科系や精神科などでも、大学医局はもちろんあります。

クリニックなどを個人開業して、開業医になる時は、退局するわけですけどね。

 

さて、ここで、一般の会社員や公務員などの人から見ると、少し理解しづらい制度があります。それは、医局人事という制度です。

 

大学の教授や医局長の先生から、「あなたは〇〇病院へ行ってください」と勤務する病院を指定されることがあります。もちろん、各人の希望や事情などが考慮されたりはしますし、〇年目以降は好きにして良いということもあったりしますが、基本的に強制力を持った人事になっています。

そうやって、大学医局は医局員の先生たちを周辺の病院に派遣して影響力を及ぼしていますし、医師不足で困っている病院の方は医局とのつながりで助かっているわけです。

 

いろいろ語り出すと長くなるので、話題を医師転勤に絞って話します。

 

科に関わらず、病院にずっと通院していると、主治医が交代した経験をお持ちの患者さんって結構おられるんじゃないでしょうか。早い場合は1~2年で。

こんな時、その背景に医局人事があるんだなと思っていて、まず間違いないですね。

もちろん、医局と無関係な転勤や退職もありますけど、先生が替わる場合は十中八九は医局人事によるものです。

 

しかし、よく考えてみると、「医局から給料をもらっているわけではないのに、何故医局の人事に従わなければならないんですかねぇ~」と、私は以前からずっと思っていました。

会社や国から給料をもらっているなら、会社や国の指示に従わなければなりません。

しかし、医局って、そうではないです。

医局員の立場なら、こういう人事の影響を受けますが、逆に、医局に属していることで、利用できるものは利用するという考え方も大いにありで、所属するメリットもあるにはあります。

 

さて、先程、外科系ではまず医局に属すると書きましたが、内科系だと属さなくても医師として何とかなることもそれなりに多いようです。

精神科系もそうですね。私は医局に属していません。いわゆる「一本釣り」と言ったりしますが、初期研修医時代に今の病院を見学して、院長先生と話して、それで採用が即決定です。なので、転勤はありません。

 

転勤がないことで、患者さんと先生の相性が合っているなら、ずっと同じ先生の方が安心感があるんじゃないですかね。

 

なお、精神科って、以前にも書きましたが、薬剤の適応外使用が多いですし、先生間で考え方にも違いがあったりで、処方薬などかなり違ってくる可能性はあります。なので、主治医の先生と相性が合わないと感じる場合は、まずは先生としっかり話してみて、それでも歩み寄りが難しいなら、先生を替えるというか病院を替えた方がいいかもしれません。

 

一方で、それまで他の病院で通院が2年以下しか持たずに転々としていた患者さんが3年以上ウチに継続して通院してくれていると、普段からていねいに接していて信頼してもらえているのかなと、手前味噌ですが、自分のことを少し誇らしく思ったりします。

 

転勤がないので、他の病院のことをあまり詳しく知らないというのはデメリットかもしれませんが、全く知らないわけではないですし、現職場でも十分に学びは得られますし、人間関係も良いですから、渡り鳥じゃなくてもいいと思っています。

渡り鳥だと、引っ越しもめんどくさいですね。

今のところは、今の職場で十分に満足しています。

 

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