「どの程度処方どおりに服薬しているか」を服薬アドヒアランスと呼んでいますが、詳しくは前回説明しました。
さて、病識のない人ほどアドヒアランスは低下しやすいし、薬の大切さの理解に乏しい人ほどアドヒアランスは低下しやすい。入院してせっかく良くなっても、退院してから薬を自己中断してしまう人の割合が1年で4割とか、調査によってはそんな結果が出ています。「良くなったから、もう飲まなくても大丈夫だろう」と自己中断してしまう。
風邪薬ならそれでいいですし、精神科の薬でもベンゾジアゼピン系などでは、むしろ漫然と飲み続けてよいことはありません。
しかし、統合失調症や双極性障害では、薬を中断すると高い確率で症状がぶり返します。そして、悪化を何度も繰り返していると、薬を再開しても元のレベルまで戻らなくなってしまいます。
ボールが床に落下して何度も弾んでいるうちに、ボールが以前の高さまで上昇しなくなるイメージです。悪化を何度も繰り返していると、やがて人格荒廃を来たします。
そこで、服薬遵守のためには患者教育というものも必要になります。
昔は「医師が処方する薬を患者は黙って飲んでいればいいんだ」という発想が、時代を遡るとあったようです。これはパターナリズムと言って、Wikipedia などに詳しい説明が載っています。
しかし、今の時代は、こういうのはダメですね。
服薬遵守が如何に大切かを説明します。これは、患者さんのみならず、家族にもそのことを説明します。「薬をやめると症状がぶり返しますよ」と、そんなこと聞いてないとは言わせないよう、何度も説明します。
ちなみに、説明したら都度カルテに記載し、説明した証拠を残しておきます。
何度も説明しても、ダメな時はありますね。本人は病識欠如からアドヒアランス維持が難しいこともあるでしょう。
手間を取らせますが、そこは家族にやっていただくしかない。
ところが、家族が「本人の調子が悪くなったけど、薬を飲んでいるかどうかは把握してない」「多分飲んでると思う」とか「本人に任せている」と、病識のない患者本人ではなく、健常な家族がそんなことを言うとは、あれだけ説明したのに一体どういう頭の構造をしているのかと不思議に思ってしまう。
本人をしっかり支えている家族なのか、理解が悪い家族なのか、そこで本人の予後が大きく変わってくることもあります。
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