日本ではアルツハイマー型認知症の治療薬に、ドネペジル(アリセプト・アリドネパッチ)、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(リバスタッチ・イクセロンパッチ)、メマンチン(メマリー)の4種類の薬(下線部:一般名)が上市されています。アリドネパッチとリバスタッチとイクセロンパッチは貼り薬で、他は内服薬です。

いずれも認知症の中核症状の進行を少しゆるやかにする程度で、すごく効くわけでもありません。一般論として、長谷川式やMMSEの30点満点のスクリーニング検査で1桁まで下がると投与継続はあまり意味ないですが、周辺症状に効くこともあるため相当進んだ人にも担当医の判断で使い続けることはあります。メマンチンは興奮など過活動傾向を抑える作用があります。逆に、ドネペジルは賦活作用があるため低活動の人に投与検討します。

 

先日レカネマブ(レケンビ)が出ましたが、あれは2週間ごとの点滴薬です。

薬価や投与対象者など詳細は紹介しませんが、特徴はアルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドベータという物質(以下Aβ)に作用する点が、上述の4つの薬との大きな違いです。Aβは神経細胞に絡みついて障害していきますから、これが取り除かれることで認知症の進行抑制が期待されます。ただし、障害された神経細胞を修復する働きはないので、基本的に認知機能が元に戻ることはありません。

また、Aβは脳の血管にも浸潤していて既に脳血管が傷んでいることが多く(アミロイドアンギオパチー)、薬剤がこれに作用することで血管から水分が漏出したり(脳浮腫)、血液が漏れてきたり(脳出血)する副作用が起こり得ます。このため、定期的に脳MRI検査を受ける必要があります。

 

レビー小体型だと、ドネペジルが適応になっていますが、効果は人によりまちまちな印象。あとは抑肝散で、主症状の幻視が消えるわけではないにせよ、あまり気にならなくなるようです。

血管性認知症は、基本的には陳旧性脳梗塞などの薬物治療を続けていただくしかないです。前頭側頭型認知症も、この薬がいいというものはないので、出現する精神症状に合わせて薬剤調整しているのが実情。

 

魚を週3回以上食べることと、適度な運動や規則正しい生活をお奨めします。

 

(約930字)