認知症の人が脳神経内科や精神科にたくさん来ます。

 

症状は、物忘れ、見当識(今日が何月何日か、この場所はどこか、隣にいる人は誰かなど自分が置かれている状況を認知する機能)の障害、実行機能や遂行機能の障害などが挙げられますが、これらは認知症の中核症状です。

中核症状に対する薬はあるにはありますが、進行を少しゆっくりにして先送りにする程度。飲んでも進行しますし、壊れた神経を修復させることは不可能。残念ですが。

 

中核症状以外で、「周辺症状」あるいは「行動・心理症状」と呼ばれる症状があります。易怒性、興奮、大声、暴言、暴力、介護抵抗、幻覚、妄想、徘徊、不眠や昼夜逆転、抑うつ、自閉、無関心、意欲低下、情動鈍麻など。

 

認知症患者の家族が困るのは、実は周辺症状の方です

物忘れなどの中核症状があっても、ニコニコと穏やかに余生を送れれば、別段大きな問題になりません。相当進むと便失禁など困ることもあるでしょうが、これは医療と言うよりは介護で対応する問題でしょう。

周辺症状は困りますね。大声や興奮もそうですが、物盗られ妄想は本当に困ります。財布を置き忘れて「財布がない、お前が盗ったんだろう」と、犯人扱いされた息子や娘、姑などは辛い思いをします。家族は疲弊し、面倒を看ていられません。

 

施設などでは、夜間不眠で大声を出していて、困っていますと。

こうなると、精神科などに受診相談が来ます。

 

基本的には薬で穏やかになっていただきます。ある程度使う薬のパターンを決めてます。

大声や興奮など過活動なら、バルプロ酸、クエチアピン(糖尿病禁忌)、抑肝散などから攻めます。カルバマゼピンやウィンタミンはややキツめ。ふらついてぶっ倒れると不味いし。チアプリドはイマイチ。リスパダールは嚥下を悪くしやすく高齢者には使いにくい。

寝ないなら、まずはレンボレキサントでmgを調整します。第二選択でエスゾピクロン、補助薬的にトラゾドン。昼夜逆転や睡眠相後退ならラメルテオン。

 

紹介されて来る患者に、ゾルピデムならまだしも、トリアゾラムやエチゾラムなど、とんでもない薬がたまに入っている。

非専門の先生方、やめてくれよ。相当ヤバいぞ。

あと、胃薬のファモチジンは精神症状を悪くする。問答無用で中止してやるぞ。

 

(約930字)