高齢者は一般に便秘になりやすい。精神科系の薬剤の副作用で便秘になることもあります(抗がん剤や医療用麻薬なども同様)。

 

腸は自律神経に支配され、便塊を口側から肛門側へ送るべく蠕動します。高齢になるとこういった機能が低下して、便が出にくくなります。

さらに、腸内に便が長期間滞留すると、便塊の水分がどんどん吸収されて硬くなり、余計に出にくくなってしまいます。

 

浣腸で済めばいいですが、摘便と言って、看護師さんが肛門に指を突っ込み(もちろん医療用ゴム手袋をはめて)、便を強制的に掻き出す作業をしなければならなくなります。

これって大変ですよね。

 

そこで、できるだけ毎日排便させようと考えます。

 

いわゆる下剤ですが、いくつか種類がありますが、よく目にするのが次の2つ。

ひとつは便が硬くならないようにする浸透圧性下剤。便通異常症診療ガイドラインでは第1選択で、まず酸化マグネシウム、次にポリエチレングリコール等が挙げられています。

もうひとつが刺激性下剤で、大腸を刺激して蠕動運動を起こさせて排便を促すもの。ピコスルファートやセンノシド、大黄などの生薬がそうです。

 

この他にも、新規便秘薬(商品名でいうと、グーフィス、リンゼス、アミティーザ。1日当たりの薬価は70~210円)や整腸剤(エビデンスは弱い)もあります。

 

刺激性下剤を毎日のように長期連用していると、段々とその効きが悪くなります。

大蠕動を起こさせていると、徐々に大腸が疲弊して腸管神経叢が障害されてしまい、大腸の動きが却って悪くなってしまいます(弛緩性便秘)。このため、下剤の効果が低下してきます。

本来、刺激性下剤はあくまでも頓用、ここ一発のレスキューで使うべきものなのですが、便が出ないからと毎日のようにピコスルファート液を内服、それも5滴が10滴に、15滴、20滴と増えていくのが実情です。

 

さらに、排便がなく摘便するぐらいなら、下痢になってでもとにかく毎日排便させた方がいいだろうと、やたら酸化マグネシウムが多くなってしまう。

酸化マグネシウムなら薬価は安く、最大でも1日50円かかりません。

 

しかし、看護師さんらは毎日のように下痢便のオムツを交換することになります。

そもそも、バナナのようなウNコにするのは難しいかもしれませんが、医師としては複雑な思いです。

 

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