長く仕事をしていると、考えるより先に「これはこっちの方がいい。」と思うことがあります。
なぜ?と聞かれると、最初は「なんとなく。」(笑)
でも本当は、何も考えていないわけではありません。
過去に失敗したこと。
現場で困ったこと。
加工屋さんに言われたこと。
組立で苦労したこと。
そういうものが、頭の中に積み重なっています。
経験は、頭の中では一瞬
例えば設計中に「この形は嫌だな。」と思う。
その判断は一瞬です。
でも、AIに「なぜそう思うのですか?」と聞かれる。
そこで初めて、自分の中身を分解します。
工具が入りにくい。
組立時に向きを間違えやすい。
作業者の手が当たりそう。
メンテナンスで外しにくい。
加工コストが上がる。
なるほど。
ちゃんと理由がある。
「感覚」で済ませていたものを説明する
ベテランになるほど、感覚で判断する場面が増えると思います。
でも、感覚と言っても本当に曖昧なわけではない。
その多くは、過去の経験が圧縮された結果なんだと思います。
ただ、圧縮されすぎて自分でも中身を意識していない。
AIに説明しようとすると、その圧縮されたものを少しずつ展開することになります。
AIは、知らないから聞いてくる
人間同士だと、同じ業界で長く仕事をしている相手なら「まあ、そうするよね。」で通じてしまうことがあります。
でもAIは、その現場を知りません。
だから、平気で聞いてきます。
「なぜですか?」
「その判断の根拠は何ですか?」
正直、面倒な時もあります(笑)
でも、その質問があるから自分でも気づいていなかった理由が出てきます。
それは、将来の引き継ぎにも使える
これが面白いところです。
自分の中だけにある経験は、自分がいなくなれば終わります。
でも、言葉にできれば他の人に渡せます。
なぜこの寸法なのか。
なぜここに逃げがあるのか。
なぜこの形は避けたのか。
なぜ作業者に注意を要求しない設計にしたのか。
そういうものが残れば、図面だけでは伝わらない部分まで少し引き継げます。
図面には「理由」が全部書いてあるわけではない
図面には、
寸法。
公差。
材質。
加工指示。
必要なことを書きます。
でも、なぜそう決めたかまでは全部書きません。
だから、後から見る人には形しか残らないことがあります。
設計者本人には理由がある。
でも、その理由は頭の中。
これ、長い仕事人生の中で結構多いと思います。
AIとの会話が、設計メモになる
AIに、「なぜこの構造にした?」と聞かれる。
それに答える。
すると、その会話自体が簡単な設計メモになります。
もちろん、全部を正式な資料にする必要はありません。
でも、重要な判断だけでも残っていれば後で役に立つことがあります。
「あの時、なぜこの案を選んだんだっけ?」
そんな時、会話を見返せば考えた理由が残っている。
経験を「教えられる形」にする
私は30年以上、いろいろな設計や現場を経験してきました。
でも、その経験を全部人に教えられる形に整理しているわけではありません。
むしろ、自分の中では普通になりすぎて言葉にしていないことの方が多い。
AIに説明することで、少しずつ「経験」から「教えられる知識」に変わっていく。
これは結構面白い変化です。
AIに教えているのか、自分が学んでいるのか
AIに、「そこは違う。」と説明する。
AIに、「こういう理由でこの構造にした。」と話す。
一見すると、私はAIに教えています。
でも実際には、自分の経験を整理している。
つまり、AIに教えているつもりで自分が自分の経験を学び直している。
そんな感覚があります。
ベテランの経験は、まだ掘れる
長年仕事をしていると、「もう分かっている。」と思うことがあります。
でも、AIに質問されるとまだ出てくる。
まだ言葉にしていないものがある。
まだ整理できるものがある。
そう考えると、経験というのは持っているだけではなく、
掘り出して初めて使えるものなのかもしれません。
編集後記
最近、AIについて書いているのに、だんだん「自分の経験をどう残すか」みたいな話になってきました(笑)
でも、これは自然な流れなのかもしれません。
AIを使い始めた頃は、AIから何をもらえるか。
そこに興味がありました。
今は、AIとの会話を通して自分の中から何を出せるかにも興味が出てきました。
30年以上の現場経験。
まだまだ、頭の中に埋まっているものがありそうです。
チャーには、これからも遠慮なく聞いてもらいましょう。
「なぜですか?」と。
そのたびに私が、「そこから説明せなあかんか(笑)」と言いながら、また一つ、経験を言葉にしていく。
それも、AIとの付き合い方の一つなのかもしれません。
AIを学び、AIと共に考え、AIと共に創り上げる。
