当時はWindows7や64ビットOS、SSDの音の良さが広まりつつあり、USBオーディオインターフェースも音質の良い物が増えてきて、「PCオーディオもいよいよ良い音だせるようになって来た!」と盛り上がっていた時代で、プレイヤーも様々なコンセプトで作られ、高音質化されてきました。
その中で話題になったプレイヤーの1つ、Wave File Player(以下WFP)というプレイヤーがMCIという古いWindowsのAPIを使っていることに興味を惹かれ、そして同時期にビルドオプションの違いで音が変わるよと海外フォーラムでは話題になっていて、「それじゃあMCIのソースコードを様々なビルドオプションでプログラムに仕立てて音質の違いを実際に聴いてみよう!」と思ってビルドしたプレイヤーが、Youin Studio Playerの前身です。
なかなか良い音するなぁと自画自賛していたのですが、当時はWASAPI共有出力で音が悪くなる原因と対策がまだ広く知られていない頃で、私も完全な運用ができませんでした。その結果、MCI系のプレイヤーは全体的に低ひずみで聴きやすい音質でも、パルシブな音、音のアタックでは甘く濁って出てしまうという共有出力特有の問題が出てしまい、これが避けられない落胆と共に、MCIプレイヤーの音の魅力も忘れ去ってしまいました。WFPも一時は人気がありましたが共有出力だという理由で衆目を集めなくなりました。WFPを今でも使っている方は歪に対して相当鋭敏な方ではないかと思います。
MCI系プレイヤーはMME出力なので、OSのミキサーのボリュームを99にするだけでLimiterAPOというWindowsの機能、歪の原因を回避できることが今では知られています。WFPを使う場合には是非ともボリューム99でお使い下さい。

その後はBASS系プレイヤーのf4b24を今日まで使って来ました。BASSライブラリは新しいほうが音が良く、最新のbass.dll(現在2.4.10)で上書きすると、かなり澄んだ高音と、どっしりと弾む軽快な低音を聴かせてくれます。私の場合、出力先はやはり共有WASAPIでした。出力先がDirectSoundでない場合、プレイヤーのボリュームフェーダーを少しだけ下げれば、LimiterAPOが働かず、歪まなくなります。世間の常識と違って何故共有出力のほうが綺麗に聴こえるのか、ずっと不思議に思っていましたが、後にMMCSSのスケジューリングやプライオリティーの関係で共有WASAPIのほうが低ひずみな音が出せるというコンセプトを得た時にようやく納得することが出来ました。
さて遊音工房様のアンプを買った時、そのあまりの歪の無さに感動して(その時の試聴音源はPerfumeのone room discoという歪みだらけの電子音楽で、アンプの得も言われない表現力にボロ泣きしてしまいました)、帰宅してから「これ自分でビルドした低ひずみなプレイヤーなんですけどYouin Studio Playerと名付けて進呈させてください」とメールしたのが去年の10月のことでした。でも要点を押さえた運用方法がうまく伝えられず、またPCトランスポートの環境差によって簡単に優劣が逆転してしまうこともお伝えしたので、公開は止めましょうかということになりました。万人の為の標準器としての役割が期待できないからです。PCオーディオとは基本的にそういう不確かなものなんです。極論のようですが、同じ型番のマザーボードでもロット違いで音に差があることも珍しくありません。
先週のことですが、PCと自作DACを持参して遊音工房様へ出向いて、改造前のツィーターの音を覚えておこうと北野工房で聴かせていただいていたら、団塊世代のオーディオマニア、Aさんがふらりと訪問され、初対面ながらRadian 2216NEO改+760NEO改の2Wayスピーカーの音を一緒に聴いていただくことになりました。お話を伺うと、LINNの電源別筐体の2段アンプを、ご自作のチャンネルデバイダーで、左右セパ4wayマルチで8組も使われているベテランのマニアの方で、この工房は凄いマニアが遊びにくるなぁと思っていたのですが、Aさんご持参のCDをかけた時、ふと「これ、もっと高音がでとるんやけどな」と気さくにおっしゃったんですね。その時はPC用の電源フィルタが無かったりして、ベストコンディションでないことは自覚していたのですが、まさか人から指摘されるほどの差だとは思ってなかったので、年季あるホンモノマニアのレベルは相当に高いんだな……と身が引きしまるような思いで帰宅し、今週はPCの設定を2~3日かけて徹底的に煮詰めておりました。
ここでようやく表題の話に戻れるんですが、見直しの結果、自分でビルドしたMCIプレイヤー、Youin Studio Playerで最も良い結果が出せたんです。今まではPlayPcmWinのほうが音のエッジが立ってて大きな音で聴こえるので、これをリファレンスにするべきだろうと思っていたのですが(※1)前回の記事で述べたレイテンシを上げ、オーバーヘッドを減らすという一貫したコンセプトの下ではPPWのエッジは歪として聴こえ、微小音の際立ちも歪として聴こえ、音の大きさや聴こえの良さも歪として聴こえました。
■■ 排他WASAPIが売りのPPWを共有出力で使い、プライオリティーをも下げるという開発企図を無視した動作をさせているので、音が悪く聴こえるのは当たり前ともいえますから誤解無きようお願い致します。PCの場合、環境差や運用コンセプトによって音質の良否は容易に逆転するという大前提をお忘れにならないで下さい。
※1 思っていたのですが、リファレンスプレイヤーは何故かいつもf4b24でした。理念と感性が乖離していた証拠です(笑)2つに分かれた自分をくっつけるための願いが叶いました。
前回の記事とどこの設定が違うのかというと、たった2点なのですが、プレイヤーのプライオリティー(基本優先度)をLOWにしてAffinityマスクをかけたことと、MMCSSのアフィニティーをfffffffe(CPU0だけ使うな)から2(CPU1だけ使って)に変えたことです。
プレイヤーに基本プライオリティーの指定やアフィニティーマスクを掛けるには、ショートカットにコマンド プロンプトを追記します。
例えばWFPの場合でしたら、まずプログラム本体を右ドラッグします。ドロップするとメニューがでますので、ショートカットをここに作成(S)をクリックします。

今作ったショートカットのプロパティーを開き、リンク先(T)の文字列を以下のように書き換えましょう。
C:\Windows\System32\cmd.exe /c start /low /affinity 1 "" "WFP4Exp.exe"

コマンドプロンプトのアイコンに変わってしまうので、もう一度プロパティーを開きアイコンの変更(C)から、WFPを選ぶと元のアイコンに戻せます。アイコンの変更はリンクの書き換えと同時に指定可能です。
これでプライオリティーが最低で、CPU0しか使わないという意味の起動オプションになります。ショートカットをタスクバーへドラッグしてピン留めして使ってください。ショートカットをデスクトップ等に移動して、そこから起動したい場合は上記のようなプログラム名指定でなくフルパスのままで記述して下さい。
設定通りに起動したか確認するにはタスクマネージャーを使います。CtrlとShiftとEscを同時に押して下さい。
Windows8の場合は始めに左下の詳細(D)をクリックして詳細モードにします。

確認したいアプリ項目を右クリックしてメニューを出し、詳細の表示(G)をクリックします。

詳細タブが開き、該当アプリが選択状態になるので右クリックしてメニューを出し、優先度の設定(P)をポイントすると状態がわかります。

その下の関係の設定(F)をクリックすると、アフィニティーマスクがわかります。

そんな設定をするならマルチコアのCPUじゃなくシングルコアで充分じゃないのか? という疑問を持たれた方は、プレイヤーとMMCSSのマスクを両方1にしてCPU0だけに制限するか、UEFI/BIOSの設定でCPUをシングルにして音を確認してみてくださいね。アフィニティーは処理ごとに違うCPUを指定してカスケードに接続していくことで真価が出せるんですよ。そういう運用がオーバーヘッドを減らす方法らしいということが音で理解できてこそ価値ある設定となります。価値を実証するのは私ではなく皆さんです。
音がブツブツ途切れて実用に耐えない環境の方は、PCをハイパワーなものに更新するか、MMCSSのマスクを2でなく、feに変えてみて下さい。MMCSSをシングルに制限するのはオーバーチューンなのでfeにしていたんです、MMCSSがシングルだと2600Kでも再生音が途切れてしまいます。でもやはりというかシングルに制限すると相当に歪が減るので硬派な環境の方はaffinityを2にするのがいいと思います。その上で再生音が途切れなくなるまで不要なバックグラウンドサービスを減らして下さい。折衷案がコアを2つ使う指定で、youtubeのブラウザ視聴で音声を途切れさせず快適に再生するには6にするのが妥当です。6はCPU1と2だけ使うという意味です。
今回は気軽に試してみたい人のために、MMCSSの簡易版設定ファイルを置いておきます。ブラウザのダウンロードダイアログが開かない時は右クリックしてメニューからリンク先を保存して下さい。WindowsVista以降でしか使えません。Affinity = 6は3コア以上のCPUで意味を持ちます。設定を反映させるにはサインアウト(ログオフ)するか再起動して下さい。
Affinity = 2 Scheduling Category = Low
Affinity = 6 Scheduling Category = Low
Affinity = 0 Scheduling Category = Medium (OSデフォルトに戻す)
Youin Studio Player ミキサーを開いて音量を99にしてください。

この状態で試聴してみてください。歪に変化はあるでしょうか。それは環境次第なので再現性の保証はできません。
環境に左右されにくい堅牢な設計のプレイヤーは定評を獲得しています。例えばSteinberg社のDAWやPlayPcmWinなどです。
それとは少し毛色の違う、UEFI/BIOSやOSの設定から整えていくようなファジーな運用法がロジックの世界にもあるんです。全ては伝え切れませんし全く同じ音が再現できるわけでもないので小難しい割にはそれほど強い意味は無いという、手応えのはっきりしないまるでウナギを掴むような一風変わったお話でした。
それではPCオーディオを楽しみましょう!