『扉は閉ざされたまま』 石持浅海 | ぱぶろの読書感想文

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ちょっと趣向の変わった作品が読みたいなー
と思い、例によって『本格ミステリディケイド300』を読んでいたところ、興味が湧いたのが
石持浅海さんの『扉は閉ざされたまま』です。

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この作品に限らず、石持さんの作風として特徴的なのが〝論理の積み重ね〟です。
目の前の状況から各登場人物が〝何が起きた(起こっている)のか〟を推測し、それを開示し合議するような形で真相に迫っていくスタイルになっています。

時には探偵役と犯人の駆け引きを絡めた〝ぶつけ合い〟にもなっていて、
その行く末を見守ることで地に足をつけつつもハラハラする展開が生まれるのが素晴らしい!


『扉は閉ざされたまま』は犯人視点の倒叙式となっていて、冒頭の殺害シーン・事件前・事件後の大きく3つのパートで展開されます。

一歩一歩堅実に真相に向かい、所謂〝アクロバティック〟な論理展開はありませんが、
〝探偵VS犯人〟の構図を犯人側から読むことで臨場感が生まれ、退屈にはなりません。

また、探偵と犯人が能力的に対等な存在とすることで駆け引きが生まれ、読み応えのある作品になっていると思います。





ネタバレ感想





なんといっても〝論理のぶつけ合い〟がウリ!
わずかでも不可解な点を見逃さず真相を探る優佳と、
そうはさせまいと阻止する、というよりはひたすらに遠回りさせる伏見のやり取りは楽しめました。

その上で、最後まで伏せられている伏見の目的が効いている気がします。
犯罪の隠蔽ではなく〝時間稼ぎ〟をすることで伏見の言動や誘導が窮屈にならず自然な形で推理合戦が展開されている印象です。

そして、それに応えるかのように自然な形で真相に迫る優佳のやり方に味があります。

終盤で明かされるように、かなり早い段階で優佳は異常性に気付いているものの、
推理の積み重ねによる確証なしに一足飛びには事を運びません

そこがこの作品の魅力でしょう。ゆっくりと一歩一歩進んでいく、その確実性に重きを置いていると思います。

しかし、にも関わらず強引な憶測で話が進んでしまう部分があるのは残念です。
この作品だと〝ベッド〟〝ウィスキー〟そして〝眼鏡〟すね。

特にベッドの問題は優佳が〝新山が眠っていない〟と根拠づけた重要な要素として書かれています。
が、そこに至る論理展開には納得できません。

〝猛烈な眠気を感じたなら、より近い手前のベッドを使うはず〟と書かれていますが、決して断定できませんよね。

たまにいますよね。部屋に入ってまずベッドに荷物を置く人。それに限らず、ワタシ は一度ベッドを使ったら、もう片方のベッドを使うことはまずありませんそれがセミダブルであっても。

必要以上に部屋を汚すのは〝行儀・見栄えが悪い〟という理由で。
急激な体調不良なら話は変わるかもしれませんが、眠気では。。

新山がベッドに居ないと断定するには根拠薄弱だと思います。


ウィスキーもそう。
新山が部屋に入るなり眠り、目が覚め入浴しようと準備を始めたが、集合時間が迫っていることに気付き諦めた。
わずかな時間を睡眠に充てることにし、集合時に忘れないようにウィスキーを出しておいた。その時午後6時前、日はすっかり陰っている。その後熟睡。

とも考えられます。〝蓋然性に欠ける〟と言われそうですが、この作品なら確証を持って次のステップにいってほしいところ。
もう一押し、ウィスキーが日光を浴びる時間帯からそこにあった断定できる何かが必要だったと思います。


最後に眼鏡。これは他殺の可能性を示すモノとして書かれています。
実はワタシも極度の近視なので新山の〝視界〟は理解できます。

確かに初めて泊まる部屋ならば風呂まで眼鏡無しで行くのは抵抗があります。
ただ、寝起きで枕元に眼鏡を置いたまま途中まで行っていたなら、わざわざ引き返して眼鏡を掛けるかというと疑問です。

部屋の外にある大浴場に行くなら間違いなく眼鏡を取りに行きますが、部屋内の風呂ならそのまま行くでしょうね。

細かいところですが、優佳の存在を持ち上げる為の強引な論理に感じてしまいます。


石持さんの作品全般で、こういった飛躍した憶測で話が進む場面が目立ちます。
一つずつ丁寧に謎を解明していく趣旨が壊れてしまって残念です。

また、登場人物の持ち上げもどうかと。
眼鏡の話もですが、大したことない場面で〝なんて頭のいいヤツなんだ〟という記述が多く、
〝凄い人物〟押し付けられてしまいます。流れの中で表現して欲しいところです。

『扉は閉ざされたまま』そういった要素が少ない方なので楽しめましたが、残念ながら石持さんの他の作品はとても楽しめるモノではなかったです。


余談ですが、碓氷優佳シリーズ化は失敗だと感じます。〝理性で感情を制した全てを見通す冷たい探偵、但し興味があるのは謎解きだけ〟というキャラクターですが、イマイチ魅力がわからない。

表面的には事件の核には首を突っ込まず、あくまで傍観者というスタイルと、〝優佳の上に立てる人間はいない〟という作者の強い意思・願望によって作品内の事件が茶番にしか見えません。。
一つぐらい優佳視点の作品があればまた違ったかもしれません。