BP-VEとフリーダムコンピュータの組合せで不具合発生 その2

 

具体的な対策内容について、公開します。

 

【注意】

・この記事を真似する場合は、全て自己責任でお願いします。

 

・フリーダムコンピューターの破壊、走行中等の予期せぬエンジン停止、車両火災など、取り返しのつかないトラブルが発生する可能性があります。損害等が発生した場合でも、当方では一切の責任を負いません。全て自己責任でお願いします。

 

・ハンダ付けの出来が悪かったり、必要な絶縁がなされていない場合、走行中の振動で配線が外れたりショートしたりして、フリーダムコンピューターの破壊、エンジン停止、車両火災等を引き起こします。

 

・配線を間違えると、フリーダムコンピュータの破壊、車両火災等を引き起こします。

 

・フリーダムコンピュータには細かな電子部品が多数使われており、わずかな力でも部品が取れたり、配線パターンが剥がれたりして、二度と使用できなくなります。

 

・フリーダムコンピューターには静電気に弱い電子部品がたくさん載っており、不用意に触れると静電気でフリーダムコンピューターが壊れます。

 

・自信が無い方は、この作業をしないことをおすすめします。

 

 

 

1.対策回路

●回路図

 

●この回路を2組、用意する。

・クランク信号用に1組

・カム信号用に1組

 

・2SA1015と2SC1815は、手持ちのGRランク品を使用。

 

●配線

・クランク信号の「Signal_in」は、R13の上側に配線。

・クランク信号の「Signal_out」は、R33の右側に配線。

 

・カム信号の「Signal_in」は、R22の上側に配線。

・カム信号の「Signal_out」は、R102に配線。R102はゼロΩなので、左右どちらに接続しても同じ。

 

 

 

2.「対策回路基板」基板実装例

●新たにコンパクトなサイズで作成してみた。

 

●電線の色

・5V電源に赤色線と黒色線。赤が+5V、黒がGND。

・クランク信号に黄色線。

・カム信号に青色線。

の各色を使用。

 

●写真の上方が「Signal_in」、下方が「Signal_out」。

 

オモテ面

 

ウラ面

 

 

 

3.フリーダムコンピューターとの配線

 

●まず、CN1のそばにある「Q12」と「Q13」を取り外す。

もとに戻せるように、取り外した部品は保管しておく。


●「FC03b-CPU」基板に「対策回路基板」を取り付けた写真

 

・「対策回路基板」はカプトンテープでグルグル巻きにし、実験用としての簡易的な絶縁を確保。絶縁されたケースに入れることを推奨。

 

・「対策回路基板」や配線が、振動やGで移動しないように、実験用として簡易的にカプトンテープで固定。接着剤等での固定を推奨。

 

 

●左下のチップコンデンサに、赤線+5Vと黒線GNDを接続。

 

●R13上側が車両からのクランク信号(黄色線)、R22上側が車両からのカム信号(青色線)。

「対策回路基板」のクランク信号・カム信号それぞれの「Signal_in」に接続。

Q12、Q13が取り外されているのが見える。

 

●R33の右側に、クランク信号「Signal_out」(黄色線)を接続。

 

●R102に、カム信号の「Signal_out」(青色線)を接続。

R102はゼロΩなので、左右どちらに接続しても同じ結果。

ゼロΩのチップ抵抗をなくしてしまったので、半田ジャンパしてある。

 

 

 

4.その他情報

●R1が47kΩと大きいが、この値を小さくしてみたら、「なぜか」誤動作が発生。追加したPNPトランジスタのベース電流を、安定動作のために一ケタほど増やしたかったが、逆に不安定になってしまった。

 

●「オリジナル回路のまま」で、センサーのプルアップ抵抗であるR13とR22を、1kΩから10kΩに変更して、約1Vだったクランク信号とカム信号のLoレベルが0.1V程度まで下がるようにし、NPNトランジスタが確実にOFFできるようにしたのだが、「なぜか」誤動作は収まらなかった。

もしも「これでOK」であれば、対策としては非常に簡易になるのだが、そうは行かなかった。


●試しにPNPとNPNのトランジスタの代わりに74HC05(オープンドレインのインバータ)を使ってみたが、誤動作発生。しきい値的には余裕があるはずなのに、「なぜか」理屈どおりに動かない。

 

※これらの微妙な現象から、狭いスイートスポットの中を絶妙なバランスで動作をしていそうなことが、推測できる。

 

●クランクセンサーのLo出力時の出力インピーダンスを測定すると、約220Ωであった。1kΩのプルアップ抵抗(R13、R22)では、Loレベルが約1Vに上がるのは当然。なのでプルアップ抵抗を1kΩから10kΩにして、Loレベルと0.1Vにしてみたが、「なぜか」誤動作が発生する。

 

ここのプルアップ抵抗が1kΩと「とても小さい」ことに、何かの意図を感じる。

 

●当方の車両は、NA8のシリーズ2。

・他の車両では、この回路定数ではうまく行かない可能性がある。車両の配線が異なるため、微妙に条件が異なるから。

・上記の通り動作のスイートスポットが狭いようで、「なぜか」理屈どおりに動いてくれない。

 

 

誤動作が起きる瞬間の波形を捉えるのは難しく、完全な解析は出来ていませんが、状況証拠的にはビンゴと考えてます。

この対策回路をつけてからまだ300kmほどの走行ですが、快適に走行できています。

 

BP-VE と フリーダムコンピュータ の組合せで不具合発生

 

 

●「BP-VE」と「フリーダムコンピュータ」。

この組み合わせの場合、確実にフリーダムコンピューターが誤動作を起こす。

 

・走行中に突然エンジン不調となり、激しくハンチングを起こす。

・アクセルを全開にしても、パワーが出ない。

・クラッチを切るとアイドリングできず、エンジン停止。

・エンジンを再始動すると、何事もなかったようにアイドリングする。

このような不具合現象が発生。

 

2015年5月の納車時から、この不具合現象の原因を突き止めるべく、日々戦ってきた。

9年経過した2024年5月、ようやく原因を突き止め、不具合現象から開放された。

 

不具合現象の、原因と対策をレポートする。

 

 

【不具合現象の原因】

●原因は、フリーダムコンピューターの「クランク信号とカム信号の取りこぼし」であった。

 

 

【クランク信号とカム信号の説明】

●クランク信号とカム信号の波形をオシロスコープで見ると、写真のようになっている。フリーダムコンピューターのコネクタ部分で観測。

 

●2つの信号の特徴

・クランク信号は、1回転で4発出てくる。

・カム信号は、クランク2回転で1パターン出てくる。

・1番気筒の上死点が推測可能なように、それぞれユニークな波形となっている。

 

フリーダムコンピューターは、この2つのデジタル信号から、1番気筒の上死点位置とエンジン回転数を推測し、燃料噴射時期と点火時期を決めている。

 

●2つのデジタル信号の電圧レベルは、オシロスコープによると以下の値。

・Hiの電圧レベルが、約5V。

・Loの電圧レベルが、約1V。

 

写真 クランク信号とカム信号

 

【不具合発生のメカニズム 1】

●フリーダムコンピューターは、クランク信号とカム信号を「NPN型のトランジスタ」で受信している。オシロスコープで観測したとおり、2つの信号のLoの電圧レベルが約1V。

 

つまり、トランジスタのVbe電圧が1Vと言うこと。NPN型のトランジスタは、Vbeが約0.6V以下でなければoffすることが出来ない。

 

「トランジスタがoff出来ない」ので、フリーダムコンピューターはLo信号を受け取ることが出来ない。結果、クランク信号とカム信号を、フリーダムコンピューターを取りこぼし、エンジン不調に陥る。

 

 

【不具合発生のメカニズム 2】

●NPN型トランジスタのVbeは約0.6V。Loの電圧レベルが1Vでは全くoffすることが出来ず、フリーダムコンピューターはクランク信号とカム信号を1発も受け取れず、そもそもエンジンはかからないはずである。しかし、エンジンは普通にかかる。

その理由を推測してみた。

 

●フリーダムコンピューターに、使用されているトランジスタを調べてみた。トランジスタ2個入りの5本足のチップトランジスタで、どうやら抵抗器内蔵型のトランジスタのようだ。

 

抵抗器は2種類。

・トランジスタのベースにシリアルに入る抵抗器R1

・トランジスタのベース・エミッタ間に入る抵抗器R2

仕様書によると、R1とR2ほぼ同じ値らしい。

 

トランジスタのベースに掛かる電圧Vbeは、ほぼR1とR2の抵抗値の比で決まる。Loの電圧レベルは約1V。R1とR2の抵抗比はほぼ1:1。結果、VbeはLoの電圧レベルの半分の約0.5Vとなる。

Vbe約0.5Vは、トランジスタの動作としては非常に不安定な領域。トランジスタがONするかもしれないし、OFFするかもしれない、とても微妙な領域。わずかでもベース電流が流れば、トランジスタはONしてしまうだろう。つまり、トランジスタがOFFできずに、フリーダムコンピューターは信号を取りこぼす機会があるだろう。

 

●冷間時よりも温間時の方が、不具合が発生しやすいように感じていた。フリーダムコンピューターも走行すれば、発熱してだんだん温度が上がってくる。半導体は、温度が1度上がると、-2mVの変化が起こる。つまり温度が上がると、トランジスタのVbeは下がり、トランジスタはよりOFFしにくくなり、結果としてフリーダムコンピューターは信号をより取りこぼしやすくなる。

 

走り始めは「今日は調子がいいなあ」なのだが、段々と機嫌が悪くなるのは体感済み。このことからも、かなりギリギリの線でフリーダムコンピューターが動いていることが分かる。

 

ROHM UMG5N データシートより

 

 

【対策】

●クランク信号とカム信号の受けを、NPN型トランジスタからPNP型トランジスタに変更する。

 

改修したのは、「FreedomCOMPUTER FC03b-CPU」基板。

・Q12がクランク信号、Q13がカム信号受けのトランジスタ。

・Q12とQ13を取り外し、代わりに手元にあったトランジスタで実験的に回路を組んだ。

・黄色い配線がクランク信号、青い配線がカム信号。赤と黒は5V電源。

・具体的な改修には、相応のハンダ付け技術が必要。基板上には細かな部品が多く、難易度は高め。

 

 

【対策の効果】

●効果は絶大。

全く不具合現象が出なくなった。論理的に不安定な状態を解消したのだから、当然の結果であり、不思議でもなんでもない。

 

 

【不具合発生時に何が起きていたのか】

●クランク信号1発分遅れたタイミングで、燃料噴射および点火が行われていた。クランク信号の間隔は約70度と約110度で、1発分ズレが差分の40度分となり、クランク軸が40度先行して回転。例えば点火時期がBTDC30度の設定なら、ATDC10度で点火される結果に。この点火時期では、不具合発生時にアクセル全開にしても、パワーが出なくて当たり前だ。

 

正常時のインジェクター1信号とクランク信号の関係

 

不具合発生時のインジェクター1信号とクランク信号の関係

 

 

【考察】

●VVT機能付きなので、カム信号の位置は常に変化する。

「クランク信号とカム信号の位置関係がある条件」の時にどちらかの信号が落ちると、「1番気筒上死点位置を読み誤る」のではないかと推測。

カムの最大進角は40度であり、クランク信号1発分ズレの40度と値が重なり、何らかの相関はありそうに思える。

 

●クランク信号とカム信号をNPNトランジスタで受けるのが、設計的に間違っているわけではない。あくまでもセンサーとの相性の問題。BP-VPのセンサーとフリーダムコンピューターの相性が悪かった、と言う話。

 

 

【最後に】

この不具合は、この組合せ「BP-VEとフリーダムコンピュータ」では、確実に発生するでしょう。同様の不具合で悩む方の参考になれば、と思います。

 

不具合解消に力を貸してくれた友人達に感謝します。ありがとうございました。