―― エンジン信号エミュレーターによる誤動作条件特定の試み ――

 

1. 概要

BP-VE エンジンとフリーダムコンピュータ(以下、フリーダム)の組合せにおいて、「パワー低下」「エンジン停止」「激しいハンチング」などの深刻な誤動作が頻発する事象が確認されている。

 

これらの誤動作については、発生中の各信号をオシロスコープにより直接観測することに成功しており、誤動作時の信号状態そのものについては、すでに解析を完了している。
(誤動作時の詳細な信号状態については『BP-VE とフリーダムコンピュータの組合せで不具合発生 その1』を参照されたい。)

 

しかしながら、「どのような条件下で誤動作が発生するのか」という根本的な発生条件については、依然として不明であった。

 

そこで本研究では、誤動作発生条件を机上で再現・制御することを目的として、フリーダムコンピュータ専用のエンジン信号エミュレーターを新規に作成した。

本稿では、そのエミュレーターの設計思想、ハードウェア構成、およびソフトウェア仕様について、詳細に記録する。

 

 

2. エミュレーターの定義と目的

 

2.1 エミュレーターとは

本稿における「エミュレーター」とは、実際のエンジンから出力される各種センサー信号を、時間・位相・振幅の点で忠実に再現する装置を指す。

語源は emulate(模倣する、再現する)であり、対象システム(本件ではフリーダムコンピュータ)に対し、実物と区別できない入力信号を与えることを目的とする。

 

フリーダムコンピュータを含む ECU は、

  • クランク信号
  • カム信号
  • 各種アナログセンサー信号

を周期的に受信し、それらを基に

  • 燃料噴射時期および噴射量
  • 点火時期
  • バルブタイミング制御量

を演算し、エンジンを制御している。

 

したがって、エンジンを実際に回転させることなく、これらの信号を正確に再現できれば、ECU は「エンジンが動作している」と認識し、通常通り制御動作を行う。

 

2.2 エミュレーターを用いる利点

エミュレーターを用いる最大の利点は、机上環境で ECU の挙動を安全かつ詳細に観察できる点にある。

 

実車走行中において、

  • オシロスコープを接続すること自体が困難
  • 走行しながら波形を観測することは極めて危険
  • 誤動作が一瞬で消失する場合、再現が困難

といった制約が存在する。

 

エミュレーターを用いれば、

  • 任意の条件を意図的に作り出せる
  • 同一条件を何度でも再現できる
  • ノイズや異常信号を意図的に注入できる
  • ECU の反応を時間をかけて観測できる

という利点が得られる。

 

本研究では、この特性を活用し、誤動作を「再現可能な現象」として捉えることを目的とした。

 

 

3. エミュレーターの設計方針

 

3.1 基本方針

フリーダムコンピュータがエンジン制御を行う上で、最も本質的な入力信号は、

  • クランク信号
  • カム信号

の2系統である。

 

他のセンサー信号(水温、吸気温、スロットル開度等)は一定値で代用可能であり、エンジン回転および同期認識に直接関与するのは、上記2信号である。

 

2024年当時の仮説として、

  • 誤動作の主因は クランク信号の読み落とし

である可能性が高いと考えていた。

 

そのため、本エミュレーターでは、

  • クランク信号を意図的に「追加」「間引き」できる
  • クランク信号のパルス幅を可変にできる
  • カム信号の位相を進角・遅角方向に自由に変化させられる

構成とした。

 

また、

  • 始動時相当の 100rpm
  • 設定上の上限である 10000rpm

まで、回転数を断続的に変化させ、全回転域での ECU の挙動を確認できるようにした。

 

 

4. エミュレーター構成

 

4.1 システム全体構成

 

4.2 エミュレーター部構成

 

5. エミュレーター詳細仕様

 

5.1 使用したマイコンおよび周辺部品

  • Raspberry Pi Pico 2
  • Pico Explorer Base
  • 4ビット双方向ロジックレベル変換モジュール(BSS138 使用)

各部品の詳細

Raspberry Pi Pico 2 H(完成品)
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g130982/
販売コード:130982

 

Pico Explorer Base
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g116239/
販売コード:116239

 

4ビット双方向ロジックレベル変換モジュール(BSS138 使用)
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g113837/
販売コード:113837
Raspberry Pi Pico の I/O 電圧は 3.3V 系であるため、フリーダム側の 5V 系信号とのインターフェースにはレベルシフタが必須である。
本モジュールは仕様上 10MHz 程度まで動作可能である。

 

ECU コネクタ(NA8 Sr.2 用)
AliExpress にて調達。

  • 26pin メス:917992-6 / 90980-11390
  • 22pin メス:917989-6 / 90980-11392
  • 16pin メス:917983-6 / 90980-11425

※フリーダム側 64pin オス(178883-6 / 30050-64A)は今回は未使用。

 

 

6. ハードウェア仕様

 

6.1 フリーダムコンピューターへの入力信号(全て 5V 系)

  • クランク信号(マイコン生成)
  • カム信号(マイコン生成)
  • 水温(固定抵抗による一定値)
  • 吸気温(固定抵抗による一定値)
  • スロットル開度(可変抵抗:全閉〜全開)
  • 吸気圧(可変抵抗:全閉〜全開)
  • O2 センサー(可変抵抗:A/F 10〜20 相当)

 

6.2 フリーダムコンピューターからの出力信号(観測対象)

  • イグニッション信号(5V 系、1-4 / 2-3 の 2 出力)
  • インジェクター信号(12V 系、4 気筒分)
  • VVT 信号(12V 系、PWM 制御 0〜200)
  • ISCV 信号(12V 系、PWM 制御 0〜255)

 

6.3 回路図

(ピン番号は NA8 Sr.2 ECU 用。左下のトランジスタに Raspberry Pi Pico の出力を接続。)

 

7. ソフトウェア開発

 

7.1 開発概要

エミュレーター用ソフトウェアは、本稿に記載する仕様書を基に、ChatGPT によって生成した。

 

この程度の仕様書であっても、ChatGPT はエンジン制御の概念を十分に理解しており、制御として破綻したソースコードが出力されることはなかった。

 

やりたいこと、目的、制約条件を明確に与えることで、人間では到底不可能な速度で実装案を提示してくる点は、従来の開発手法と比較しても特筆すべき点である。

 

初期段階では、

  • 回転数 1000rpm 固定
  • クランク信号・カム信号を周期的に出力

する最小構成のコードを作成した。

この段階で、フリーダムコンピューターは想定通りの出力を示し、エミュレーターとして成立することを確信できた。

 

しかし、その後の道のりは長かった。

  • 位相変更処理
  • LCD 表示
  • ボタン操作
など、細部において仕様通りの挙動を得るのに苦労した。

 

特に、カム信号位相を連続的に変化させる処理は最も難航した部分である。

出力されたコードを精査し、修正提案を行いながらのやり取りを繰り返し、最終的には数十回に及ぶ修正を経て完成に至った。

数十回の修正要求にも一切不満を示さず対応する ChatGPT に対し、月額 3,500 円でここまで付き合うエンジニアは存在しないだろう、というのが率直な所感である。

 

なお、最も手間取ったのはRaspberry Pi Pico 2 の開発環境構築であった。

従来の Pico に関する情報は豊富だが、新型である Pico 2 に関する情報は極めて少なく、事実上ベータ版ファームウェアしか存在しない状況であった。

ChatGPT の支援がなければ、Pico 2 への書き込みすら行えなかった可能性が高い。

 

 

8. ソフトウェア仕様書詳細

本節では、作成したエミュレーターソフトウェアの仕様を、原仕様書に基づき詳細に記載する。

 

本エミュレーターは、回転数の変化により信号の時間幅(実時間)が変動する。
そのため、時間軸を実時間(µs など)で指定すると、回転数に依存して信号形状が変化し、実車信号との同等性が崩れる。

そこで本エミュレーターでは、時間軸をすべて角度(度)で指定し、回転数が変化しても、実車信号と同様の角度位置でパルスが発生するように設計した。これにより、回転数が変化しても、波形の「角度上の意味」を一定に保つ。

 

8.1 回転数調整範囲

  • 調整範囲:100rpm〜10000rpm
  • ステップ:100rpm
  • 初期値:1000rpm

エンジン始動時の挙動を確認する目的で、下限回転数を 100rpm に設定した。

 

8.2 カム信号(実車信号測定値)

カム信号は以下の角度条件で定義する。

  • 0度から Lo スタート
  • 160度から 180度まで Hi
  • 180度から 315度まで Lo
  • 315度から 337.5度まで Hi
  • 337.5度から 348.75度まで Lo
  • 348.75度から 360度まで Hi

上記は、実車信号測定結果に基づく定義である。

(クランク2回転720度で、カム1回転360度)

 

8.3 クランク信号(実車信号測定値)

クランク信号はノーマリー Lo とし、以下の角度位置で Hi パルスを出力する。
(合計 8 発)

  • 0度
  • 70度
  • 180度
  • 250度
  • 360度
  • 430度
  • 540度
  • 610度

上記は、実車信号測定結果に基づく定義である。

(クランク2回転720度で、カム1回転360度)

 

8.4 クランクパルス幅

  • 調整範囲:0.25度〜10.00度
  • ステップ:0.25度
  • 初期値:5度(実車信号測定値)

 

8.5 カム‐クランク位相

  • 調整範囲:±180度
  • ステップ:1度
  • 初期値:6度(実車信号測定値)

 

9. テストモード

本節では、クランク信号に対して意図的な異常(追加・欠落)を与えるテストモードについて記載する。

 

9.1 クランクパルス追加(Test1)

Test1 は、クランク信号に対して 1 発余計なパルスを挿入する機能である。

  • 追加パルス幅:1度〜10度(1度ステップ)

追加位置は以下 2 系統を想定する。

 

追加位置 1(パルス間中央狙い)

パルスとパルスの間(中央)を狙い、Lo‐Hi‐Lo の追加パルスを挿入する。

 

追加位置 2(TDC 基準の 8 か所)

1 番気筒の TDC から順に、720 度までの 8 か所を対象とし、1〜8 の番号で追加位置を指定する。

 

9.2 クランクパルス間引き(Test2)

Test2 は、クランク信号から 1 発パルスを削除する機能である。

  • 間引く位置:1 番気筒 TDC から順に 720 度までの 8 か所
  • 指定方法:1〜8 の番号で指定

 

10. 押しボタンおよび LCD 表示仕様

本節では、Pico Explorer Base のボタン、および LCD 表示に関するユーザインターフェース仕様を記載する。

 

10.1 基本ボタン機能

  • A ボタン:決定(Select)
  • B ボタン:一つ前に戻る(Return)
  • X ボタン:Up
  • Y ボタン:Dn

 

10.2 LCD 画面のボタン案内表示

LCD 画面四隅に以下の案内を常時表示する。

  • A ボタン:Select
  • B ボタン:Return
  • X ボタン:Up
  • Y ボタン:Dn

 

操作体系は次の通りである。

  • X,Y ボタンでカーソル移動
  • A ボタンで Select(決定)
  • B ボタンで Return(戻る)

 

10.3 電源オン時のメインメニュー表示

電源投入時、LCD に以下の 5 項目を表示する。

1 行目:回転数モード
2 行目:位相モード
3 行目:クランクパルス幅モード
4 行目:クランクパルス追加(Test1)
5 行目:クランクパルス間引き(Test2)

カーソル初期位置は、電源オン時は回転数モードとする。
下層画面から戻った場合は、遷移前のモード位置にカーソルを復帰させる。

 

メインメニューにおける各ボタン機能は次の通りである。

  • A:決定
  • B:戻る
  • X:カーソル Up
  • Y:カーソル Dn

 

11. 各モード画面の仕様

11.1 回転数モード

表示内容:

  • 1 行目:「回転数」
  • 2 行目:現時点の回転数(最大 5 桁、単位 rpm)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:「電源オン画面」に戻る
  • X:回転数 Up
  • Y:回転数 Dn

ここで設定した回転数は保持する。

 

11.2 位相モード

表示内容:

  • 1 行目:「位相」
  • 2 行目:現時点の位相(±180度、単位 度)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:「電源オン画面」に戻る
  • X:位相 Up
  • Y:位相 Dn

ここで設定した位相は保持する。

 

11.3 クランクパルス幅モード

表示内容:

  • 1 行目:「クランクパルス幅」
  • 2 行目:現時点のパルス幅(単位 度)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:「電源オン画面」に戻る
  • X:パルス幅 Up
  • Y:パルス幅 Dn

ここで設定したパルス幅は保持する。

 

11.4 クランクパルス追加(Test1)画面

表示内容:

  • 1 行目:「クランクパルス追加」
  • 2 行目:パルス幅(単位 度)
  • 3 行目:追加位置(1〜8)
  • 4 行目:Fire!

 

操作仕様:

  • X,Y ボタンで 2,3,4 行目間をカーソル移動
  • A ボタンで Select(決定)
  • B ボタンは機能なし
  • 4 行目(Fire!)で A ボタンを押すと、クランクパルスを 1 発追加し実行する

モード内で設定した値は保持する。

 

2 行目(パルス幅)選択時の下層画面

表示内容:

  • 1 行目:「パルス幅」
  • 2 行目:現時点のパルス幅(単位 度)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:一つ上の層に戻る
  • X:パルス幅 Up
  • Y:パルス幅 Dn

ここで設定した値を保持する。

 

3 行目(追加位置)選択時の下層画面

表示内容:

  • 1 行目:「パルス追加位置」
  • 2 行目:追加位置(1〜8)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:一つ上の層に戻る
  • X:位置 Up
  • Y:位置 Dn

ここで設定した値を保持する。

 

11.5 クランクパルス間引き(Test2)画面

表示内容:

  • 1 行目:「クランクパルス間引」
  • 2 行目:パルス幅(単位 度)
  • 3 行目:追加位置(1〜8)
  • 4 行目:Fire!

 

操作仕様:

  • X,Y ボタンで 2,3,4 行目間をカーソル移動
  • A ボタンで Select(決定)
  • B ボタンは機能なし
  • 4 行目(Fire!)で A ボタンを押すと、クランクパルスを 1 発間引いて実行する

モード内で設定した値は保持する。

 

2 行目(パルス幅)選択時の下層画面

表示内容:

  • 1 行目:「パルス幅」
  • 2 行目:現時点のパルス幅(単位 度)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:一つ上の層に戻る
  • X:パルス幅 Up
  • Y:パルス幅 Dn

ここで設定した値を保持する。

 

3 行目(位置)選択時の下層画面

表示内容:

  • 1 行目:「パルス追加位置」
  • 2 行目:追加位置(1〜8)

 

操作仕様:

  • A:機能なし
  • B:一つ上の層に戻る
  • X:位置 Up
  • Y:位置 Dn

ここで設定した値を保持する。

 

12. オシロスコープ・トリガー用信号

  • 出力ピン:GP7
  • 仕様:TDC で立ち上がり 1 発
  • 通常状態:Lo
  • パルス時:Hi
  • パルス幅:20µs 固定

目的は、オシロスコープにおいて1 番上死点(TDC)の波形を確実にトリガし、表示を安定して停止させることにある。

 

13. Pico2 周辺の写真

Pico2 周辺の写真

 

14. エミュレーターの画面表示

以下に、エミュレーターの画面表示例を示す。

  • メイン画面
  • 回転数画面
  • カム位相画面
  • クランク信号幅画面
  • クランク信号 1 発追加画面
  • クランク信号 間引き画面

 

 

 

15. まとめ(本稿の位置づけと所感)

本稿「BP-VE とフリーダムコンピュータの組合せにおける不具合発生(その4)」では、誤動作の原因特定そのものではなく、その原因特定を可能にした エンジン信号エミュレーター(シミュレーター)の仕様と設計思想に焦点を当てて記述した。

 

●誤動作の具体的な再現条件および原因の切り分けについては、すでに前稿「その3」にて説明済みであり、
本稿はあくまで、

  • どのような考え方でエミュレーターを設計したのか
  • なぜこの仕様が必要だったのか
  • どこまでを再現し、どこを切り捨てたのか

といった 検証のための土台を記録することを目的としている。

 

●本エミュレーターの開発を通じて、改めて強く感じたのは、AIの活用可能性の大きさである。

AI の持つ知識量と処理速度は、すでに人間を遥かに凌駕している。

ただしそれは「何でも勝手に解決してくれる存在」という意味ではない。

  • 何をしたいのか
  • 何を検証したいのか
  • 何が分かっていて、何が分かっていないのか

これらを 人間側が明確に言語化し、構造化して指示できた時、AI は非常に強力で、かつ忍耐強い「相棒」となる。

数十回に及ぶ仕様修正、コード修正、設計意図の再説明にも付き合い続ける存在は、少なくとも従来の開発現場には存在しなかった。

 

●また、本研究を通じて再認識したのは、エンジン制御という分野の本質的なシンプルさである。

 

エンジン制御は一見すると極めて複雑で難解に見えるが、
本質的には、

  • クランクがどこにあるか
  • カムがどこにあるか

この 2 点を正しく認識し続けられるかどうかに集約される。

 

不要な要素を一つずつ引き算し、「本当に必要な信号は何か」を突き詰めていくことで、問題の構造は驚くほど単純な形で姿を現す。

今回のエミュレーター設計は、その「引き算してシンプルにする」という姿勢の重要性を、改めて強く実感させる結果となった。

 

ーーー

ちなみに本原稿。要点と流れをなぐり書きした原稿を、ChatGPTに「論文調に仕上げて」と指示して完成させた。

最近のAIは、日本語も極めて上手。偽メールが来たら、騙されてしまうだろう。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

免責事項(Disclaimer)
本記事に掲載している回路図・改造手法・ソフトウェア等は、特定の条件・環境での動作を確認したものであり、すべての環境で安全に動作することを保証するものではありません。誤使用、改造、実装により発生したいかなる損害・事故・故障についても、筆者および当サイトは一切の責任を負いません。
この情報に基づいて何らかの作業を行う場合は、ご自身の責任において安全・法令遵守の下で実施してください。

2025年夏、誤動作再発と原因特定・対策記録

 

概要

 2024年夏、カム信号およびクランク信号に対する誤動作対策回路を導入して以降、エンジンは安定して動作していた。
 しかし2025年夏、使用年数約10年のイグニッションコイルを交換したことを契機として、フリーダムコンピューターの誤動作が再発した。

 つまり、ノイズ源の条件が変化すると、既存の対策が成立しなくなることが明らかになった。
 本稿は、誤動作の真因の特定と、その結果に基づく対策方針・実装内容の記録を目的とする。

 

 

基本方針

 トラブル対応において最も重要なのは、原因の正確な特定である。
 原因認識を誤れば、対策もまた誤った方向へ進む。

 本件では以下を基本方針とした。

  • 誤動作の発生条件を再現可能な形で明確化する
  • 経験則ではなく、再現性を伴う検証に基づいて対策を立案する

 

 

 

誤動作トリガーの特定

 イグニッションコイル交換を境に誤動作が再発したことから、誤動作の主たるトリガーとなるノイズ源は点火系であると判断した。

 

 ガソリンエンジン用ECUの歴史は、点火ノイズとの戦いそのものである。
 点火系が発生するノイズは極めて大きく、単にノイズを抑制するだけでなく、**「一定の誤動作が発生することを前提とした設計」**が行われている。

 

 ダイレクトイグニッションが軽自動車を含む広範な車種に採用されている最大の理由は、高電圧配線を最短化することでノイズを最小限に抑える点にある。
 燃費向上等の副次的効果は、増加コストを正当化するための説明に過ぎない。

 

 OBD-IIにおける失火検知は、排ガス悪化を基準値の1.5倍以上引き起こす失火を対象とする。
 主な検知手法は、クランク角速度の揺らぎ、すなわちトルク変動の検出である。

 

 巨大な点火ノイズを発生させるガソリンエンジンは、日本の制御技術なくして成立しない。
 国外メーカーがEVシフトに走った背景には、この技術的限界があると推測している。

 

 このレベルの問題を、個人が根本的に解決することは現実的ではない。
 本来は、ノイズ源そのものを低減する、あるいはノイズの影響を受けにくい構造にすべきである。

 

 実際、BP-VEエンジンにおいても、

  • セミダイレクトイグニッションの採用
  • イグニッションコイル近傍へのノイズ対策コンデンサ配置

 といった設計上の配慮が確認できる。

 

 以上を踏まえ、本件では
 「誤動作モードに入らないこと」自体を目標としない
 という判断に至った。

 

 代わりに、

 誤動作モードに入った場合、それを検出し、自動的に通常モードへ復帰させる

 という戦略を採用した。

 

 

 

前回対策に対する反省

 前回は、不具合現象を経験的な推測に基づいて仮説化し、トライ&エラーによって複数の対策を実装した。

 結果として、当時のノイズ条件下では機能したものの、ノイズ条件が変化すると成立しないことが明確になった。

 

 前回の具体的対策内容

 クランク信号およびカム信号を、NPNトランジスタ受けからPNPトランジスタ受けへ変更NPN→PNP化により、GND基準でのノイズマージンは増加した。
 しかし、イグニッションコイル交換によりノイズレベルそのものが変化し、確保したマージンを超えたと考えられる。

 

 

今回のアプローチ

 今回の対策では、以下を明確な目標とした。

  • 誤動作の発生条件を定量的に把握する
  • ノイズによる誤動作が発生しても、検出・復帰が可能な構造を構築する

 そのため、フリーダムコンピューターの挙動を再現可能な専用エミュレーターを製作した。

 

 

 

エミュレーターの製作

 実車からの各種信号を模したエミュレーターを製作し、フリーダムコンピューターに接続。

 各種信号を変化させ、フリーダムコンピューターの挙動を確認・検証した。

 

エミュレーターの外観

  • Raspberry Pi Pico 2
  • Pico Explorer Base
  • 4ビット双方向ロジックレベル変換モジュール BSS138使用

 これらを使って作成。

 

 

 

エミュレーターによる検証結果

 誤動作モード遷移条件

 エミュレーターによる検証の結果、以下の挙動が確実に再現された。

 

 正常モード

  • クランク1回転あたり、クランク信号は4発

 

 正常モード → 誤動作モード

  • クランク1回転中に4発 + 1発(ノイズ相当)=計5発が入力されると、誤動作モードへ遷移

 

 誤動作モード → 正常モード

  • 誤動作モード中に、意図的に1発追加して5発とすると、正常モードへ復帰

 

 以上から、

  • 誤動作モードを検出可能であれば
  • クランク信号を1発追加することで、確実に正常モードへ戻せる

 ことが明らかになった。

 

 正常モードとは、1番気筒上死点を正しく認識している状態である。
 誤動作モードとは、1番気筒上死点を誤認識している状態である。

 

 

 

対策回路の設計思想

 誤動作モード検出後、クランク1回転以内に正常モードへ復帰させることを目標とした。

 

 誤動作モード検出条件

  • カム信号と点火信号(2–3)が重なった場合を誤動作と判定

 通常モードでは両信号は位相的に重ならない。
 誤動作モードでは、1番気筒上死点の誤認識により両信号が重なる。

 ※カム進角時は本判定が成立しないため、後述の設定変更が必要となる。

 

 

 通常モード時の波形

 ・上 カム信号

 ・下 点火信号2−3

 上下の波形がズレている

 

 誤動作モード時の波形

 ・上 カム信号

 ・下 点火信号2−3

 上下の波形が重なる

 

 

 

 

対策回路図

 概略説明

 ・カム信号と点火信号2−3が重なった時(誤動作モード検出)、クランク信号に1発追加(通常モードに戻す)する。

 ・「カム信号と点火時期2−3」が重なった時、クランク信号に同期して、クランク信号の約1ms後に、約200us幅のパルスを1発入れ、その後約1秒間「カム信号と点火時期2−3」をマスクする。

 詳細説明は割愛する。

 

 

 

実装写真

 

 

 

 

ノイズレベル変化と負荷依存性

 誤動作の直接的原因は、プラグ点火回路由来のノイズである。

 

 ノイズの大きさは負荷条件により大きく変動する。

  • 高負荷時
    • プラグ要求電圧が高い
    • 放電時間は短い

 

  • 軽負荷時
    • プラグ要求電圧が低い
    • 放電時間が長くなる、または複数回放電する

 

 放電時間が長いほど、誤動作が発生する確率は高くなる。

 

 実際、

  • 全開走行時に誤動作モードに入った事は無い
  • ハーフスロットル等の軽負荷時のみ誤動作発動

 という結果が得られている。

 

 

 

 

フリーダムコンピューターの挙動に関する考察

 エミュレーターにより、以下の挙動が確認された。

 

  • クランク信号が減る(3発)場合
    → 一時的に不安定になるが、自動的に正常モードへ復帰

 

  • クランク信号が増える(5発)場合
    → 誤動作モードへ移行し、自動復帰しない

 

 この挙動は、設計上の不具合、すなわちソフトウェア的バグと考えて差し支えないだろう。

 

 

 

設定変更の必要性

 誤動作モード移行時、クランク信号が1発ずれることで、フリーダムコンピューター上の1番気筒上死点位置がずれる。

 その状態でVTC学習が行われると、誤ったカム最遅角位置が記憶され、再起動後も性能低下が残る

 

 これを防ぐため、以下の設定変更を行う。

  • VTC学習機能の停止
  • アクセルオフ時に必ずカム進角がゼロになる設定

 学習は取り付け初期のみ必要であり、通常運用中は不要と判断した。

 

 FCSS Ver.2.54

 1 係数 => 14 その他の係数 => 14 その他の係数2 => 1 バルブタイミング制御

 10 VTCアイドル制御フラグ => 1

 13 VTC学習回転数下限 => 10000

 

 

 

考察

 VVTマップおよびバルブタイミング制御設定を、今回の誤動作分析の視点で見直すと、この誤動作は既知であり、その結果として現在の制御仕様が形成されたとも解釈できる。

 VVTマップにおいてアクセルオフ領域がゼロで埋められている点、バルブタイミング制御の後半項目が誤動作対策的内容である点は、その痕跡と考えられる。

 これはあくまで私見であり、主観的解釈である。

 

 

 

総括

 本件は、ノイズ条件の変化により顕在化した、設計上の境界事象である。

 根本解決は困難であるが、誤動作を前提とした検出・復帰機構を追加することで、実用上の問題は解消できた。

 7年前に生産中止となった制御系ではあるが、同様の事象に直面した際の記録として、本稿を残す。

 

免責事項(Disclaimer)
本記事に掲載している回路図・改造手法・ソフトウェア等は、特定の条件・環境での動作を確認したものであり、すべての環境で安全に動作することを保証するものではありません。誤使用、改造、実装により発生したいかなる損害・事故・故障についても、筆者および当サイトは一切の責任を負いません。
この情報に基づいて何らかの作業を行う場合は、ご自身の責任において安全・法令遵守の下で実施してください。

 

【概略】

ハイトーンを出すのに必要なエアビームの基本的な作り方を、ハイトーンを出すためのエアビームの作り方で、2次元モデルを用いて可能な限りシンプルに説明した。

次に3次元モデルを考えてみる。

 

人間の口の形は人それぞれで千差万別であり、最低でも3次元で条件を成立させる必要がある。最終的には「吹き続けると、バテて音が出なくなる。」と言う、時間軸を入れた4次元での条件成立が必要。

 

 

【理想の定義】

「上前歯と下唇で作られるエアビームの位置」と「唇の一番息が漏れやすい位置」が、完全に一致していること。この条件を満たせば、「楽に」ハイトーンが出る。

 

※「楽に」と言っても、エアビームが作れていない時と比較して「楽である」と言う意味。腹圧を上げて真っ赤な顔して吹くのは、「程度の差はあれ、変わらず必要なこと」とである。

ハイトーン用の細いエアビームに、音量を稼ぐために息をたくさん入れるのに高い腹圧が必要なのは、ハイトーンを出すためのエアビームの作り方で計算結果を示して説明済み。

 

 

【理想の条件が揃わないと何が起きるか】

 

[事例1]

●私の上唇の形状は、図1のように「出っ張り」がある。これに図2のような「中央にエアビーム」を組み合わせてみた。つまり、「上前歯と下唇で作られるエアビームの位置」と「唇の一番息が漏れやすい位置」が、一致していない場合である。

 

●結果、fやffでは音が出るのだが、mpやpでの演奏が完全に不可能になった。早いパッセージや、跳躍も、比較的難しくなった。伝わるかわからないが、唇が軽くは反応しなくなる。プッって軽く息を入れても、音が出ない。

 

●何が起きているのか、メカニズムを考察してみた。

図1の「出っ張り部分」から息を出したいので、漏れやすい「引っ込み部分」からは、息がもれないようにしなければならない。fやffの時は、息の量に負けないようにするために自然と唇を閉めるので、「引っ込み部分」から息が漏れることはない。しかし、mpやpの時は、少ない息でも振動するように唇を緩める必要があり、「引っ込み部分」も緩む。その結果、「引っ込み部分」にエアビームが回り込んで「プスー」と漏れてしまい、「出っ張り部分」から息が出てくることはなく、音が止まる。

 

世の中には、「fやffでの演奏は得意だが、pは全くダメ」というプレイヤーを見かけるが、物理的に原因はこれであると考えて間違いない。pの息の量のエアビームでは、「出っ張り部分」の唇をおしのけて息を通すことができない。唇を緩めれば、漏れやすい箇所から先に息が漏れてしまうから。パスカルの原理そのままである。漏れやすいところから息が漏れないように唇を締めると、より腹圧を増す必要が生じ、結果としてマウスピースのプレスも増える。完全に悪循環にハマる。

 

 

図1 出っ張り唇

 

図2 中央にエアビーム

 

[事例2]

●図1の「引っ込み部分」からエアビームが出るように、図2の「薄い二等辺三角形」をズラして、位置が合うようにしてみた。つまり、「上前歯と下唇で作られるエアビームの位置」と「唇の一番息が漏れやすい位置」が、一致させた場合である。

 

●結果

ffからpまで、まんべんなく楽に音が出せるようになった。高速パッセージや跳躍も、比較的楽にできるようになった。

 

【考察】

事例1と2から言えること。如何にして「唇の形状」つまり息が漏れやすい場所に合わせて「エアビーム」を作るのかが、「理想」に近づける第一歩になる。

 

上級者からの「唇は柔らくどんな形状にもなるから、工夫するんだ。」のアドバイスも間違いではないが、唇の形状の調整幅には限度がある。彼らは、実際に唇の形状を工夫して、結果を出している。ウソは一つも無いし、騙そうとしているわけでもない。なので「理想的な条件がある程度揃ったうえでのアドバイスである」と受け取るのがベター。

 

例えば唇を横に引くことで「息の漏れやすい」位置を多少は調整可能であろう。しかし、唇の「出っ張り」と「引っ込み」を帳消し出来るほど、つまり直線になるまで唇を横に引くと、唇が薄くなって耐久力にも影響が及ぶ可能性があるだろう。

 

「唇を横に引いてはいけない」とはよく耳にする言葉で、意図する意味は理解できる。何事もトレード・オフの関係にあり、犠牲になる面もあるかも知れないが、唇を横に引いたほうがトータルでベターな結果が出るのなら、それはそのプレイヤーには正解である。必要であれば引けば良い、要するにバランスの問題であろう。上級者からのアドバイスは絶対的なものではなく、前提条件により話が変わることを知り必要に応じて解釈を変える、つまり真意や前提を知ったうえで、そのアドバイスの意味を自分の頭で考える事が重要。常識と言われるものが、時代時代で常に変化していることは歴史が証明している。

 

 

[事例3]

●事例1と2は、2次元の出来事。ここからは、3次元で考えてみる。

 

●事例2までの前提条件

・上唇の形状だけに注目。

・図2の下唇は、直線で厚みは均一ある。

・図2の歯は、平坦で並行で直線状である。

 

ところが、

・人の唇の形状は、平坦でも直線でもないし、厚みも均一ではない。

・歯の形状も、仮に歯並びが綺麗だったとしても、平坦でも直線でもないし、形状も均一ではない。

・平面的なマウスピースと、デコボコな歯に挟まれて、もともと曲がりくねってる唇の形は、さらに大きく変形する。

 

●では、マウスピースは口の何処に当てたら良いのだろうか?

 

結論を先に言えば、

・可能な限り歯並びの平らな部分にマウスピースを当てる

と言う事になる。

 

マウスピースのリムは、平面である。

このマウスピースの平面に合わせて歯並びも平面であれば、間にサンドイッチされる唇の均一に押されるので、「唇の形状は直線的な変化」をし、決してデコボコにはならない。

 

ところが、歯並びが荒れていて平面ではなくデコボコしていて、歯からマウスピースまでの距離が場所によって異なると、間にサンドイッチされた唇の形状は、デコボコの通りの形状となる。つまり、歯からマウスピースまでの距離が「狭い場所」では、歯からマウスピースまでの距離が「広い場所」よりも、唇をより多く潰すことになる。

 

・マウスピース側に出っ張った歯により、より多く押しつぶされた部分の唇は、潰されて伸びることになり、マウスピースのリムで固定されているのとは反対方向の唇は長くなる。

・マウスピースから離れるように引っ込んだ歯により、あまり押しつぶされない部分の唇は、潰されずに現状の長さを維持する。

 

以上のように、対マウスピースの方向に歯並びにデコボコがあると、図1の出っ張りや引っ込み以外にも、さらに出っ張りや引っ込みが出来ることになる。これは、プレスの強さとも相関がある。プレスを掛けたときに、都合良い方向に変形する場合と、都合の悪い方向に変形する場合の、両方のケースがある。

 

経験的には、

・マウスピースのリムの内径を大きくする(唇の先端から遠い位置にリムを置く)

・平らなリムにする(プレスの力を分散する)

ことで、改善することが多いと感じた。

 

マウスピースのリムを旋盤で平らにすると、耐久力的には楽になったが、唇の自由度が減ったためか音を動かすコントロール的にはマイナスであった。

 

・数本並んでいる歯の表面を、1枚の平面になるように加工すると、大きな効果を得られたと感じた。

・耐久力も増し、音を動かすコントロールもしやすくなった。

 

●下前歯の形状

図2の下唇は、直線で厚みは均一ある。これを実現するためには、下前歯が平面的で直線的である必要がある。

 

上前歯と同様な結果であった。

・数本並んでいる歯の表面を、1枚の平面になるように加工すると、大きな効果を得られたと感じた。

・耐久力も増し、音を動かすコントロールもしやすくなった。

 

下唇がデコボコの場合、エアビームがリニアに変化しなくなる。この影響は上唇の変形よりも大きいと感じた。

 

 

●さらに細かい理想条件を言えば、

・エアビームの位置

・唇の息の漏れやすい位置

・マウスピースの位置

の3つの位置が一致している必要がある。

 

ハイトーンを出すためのエアビームの作り方では、理想的な「歯」「唇」「マウスピース」の位置関係、つまり「全てが平らで並行で直線」に並んでいる前提で、理屈を説明した。

 

実際には、プレイヤーによって千差万別。条件が同じことはない。同じ道具だからと誰もが同じように音が出せるわけではないのは、実感していることだろう。

 

この3つの位置が一致するには、素質がモノを言う。

・図3の唇であれば、前歯2本で作るエアビームをそのまま利用可能で。

・歯並びは、平面的であるほうが、唇に余計なデコボコができないので、エアビームのリニアな変化がそのまま利用可能。

 

図3 出っ張りが少ない唇

 

 

 

[事例4]

私の具体的な事例。

マウスピースを当てる位置は、前歯1本分ほど左にズラしてある。先の「3つ位置」を揃えるには、ズラしたほうが都合が良かったため。

 

・唇の形状は図1のように中央が出っ張ったタイプ。事故の傷跡で大きなヘコミが有り、そのヘコミ部分が最も息が漏れやすい。

・前歯の平面具合は、左上1番と2番を使うと、かなり平面になる。

・エアビームは、唇の最も息が漏れやすい部分を狙って、前歯の左上1番を山型に加工。

 

 

[事例5]

上前歯の断面形状。

・歯の先端を平らにすれば、楽器の角度が真っ直ぐでも音が出しやすい。

・歯の先端の裏側をクサビ状に薄くすると、上唇を下唇に多めに被せて、息が下向きにでるように楽器の角度を下向きにすると、音が出やすい。

 

これらを組み合わせて形状を工夫すうると、楽器の角度を変えることで、2種類のエアビームを作ることが出来る。実際に、プロプレイヤーでもハイトーン領域では、楽器が下向きになるプレイヤーを複数みかける。

 

物理的に、図2の形状を同時に2つ作り込むことで可能になる。

・図2自体は、正面から見た図であり、楽器の角度が真っ直ぐな場合に適用。

・図2を下から見た図と考えたのが、楽器が下向きな場合に適用。

 

 

[事例6]

上前歯2本の並び方が

・「へ」の字の出っ歯

・段付きに平行移動

の場合も、楽器が下向きでエアビームを作れる。

 

イメージ的には図4を「下から見た図」と考えた状態。

このように、エアビームを「3次元で作り出す」と考えてみると、他にも組み合わせが見つかるかもしれない。

 

図4 上前歯に段差がある場合や、「へ」の字の場合のエアビーム


 

 

【その他】

 

●トランペットに限らず、金管楽器は音を出すのが難しい楽器。

音が出る出ないの差が、素質に大きく左右される。

 

例えば、ピアノはだれでも音は出せるので、すぐにバイエルなりの教則本で「音楽」をするための技術的練習を開始することが出来る。

ところが金管楽器は、まず音が出るようにならないと「音楽」をするための技術的練習を開始することができない。

 

ピアノは、鍵盤を弾けば音が出るような物理的な仕組みがあるので、誰にでも音が出せる。

リコーダーも同様に、息を吹き込めば誰にでも音が出せる。

 

フルートはリコーダーと同じ仕組みで音が出るのだが、誰にでも音が出せるわけではない。それは、物理的な仕組みの一部が省略されているから。フルートにもアダプターを付ければ、省略されていた物理的な仕組みが補完され、誰にでも音が出せるようになる。

https://www.amazon.co.jp/ledmomo-フルート-吹き方-トレーナー-マウスピース/dp/B0CFZDRPZ3

 

金管楽器にもこのようなアダプターがあれば良いのだが、物理的な分析がなされていないので存在しない。

しかし、金管楽器の音が出る物理的な仕組みは説明してきたとおりであり、物理的な条件が揃えば確実に再現して音は出る。

 

トランペットを吹くロボットが存在し、物理的な条件が揃えば確実に音が出る(だから絶対に音を外さない)ことは実証済み。

その物理的な条件が今までは明確になっていなかったが、これを明確に示せたと自負している。

 

まずは、ピアノ等と同じように物理的な仕組みにより誰でも音が出る状態、つまりスタートラインに立てることがとても大事。

このブログが、そのスタートラインに立つ手助けになればと思う。

 

最終的にトランペットが音楽的に上手になるかどうかは、ピアノ等と同様、別の練習や素質が必要になるだろう。

科学が進歩し、素質の殆どが遺伝で決まることが分かってきた現代。努力できるかどうかさえも、遺伝である程度決まってしまう。

音楽的に成功するかどうかと、音が出るかどうかは、全く別物の素質である。

 

●事例

1962年著の古い本だが、フィリップ・ファーカス著の「金管楽器を吹く人のために」と言う、奏法についての書籍がある。

1967年頃に、日本語翻訳版が出版。北村源三さんという25年間N饗の首席トランペットを努めた方が、巻末「監修を終えて」207ページで1962年から3年間ウィーンに留学したときのことを、次のように語っている。

 

ーーー引用ここからーーー

「1962年の秋から1965年の秋までの3年間、わたしはウィーンに留学し,ウィーン・フィルの首席トラムペット奏者でHermut Wobisch 氏とともにウィーン・アカデミーの教授でもある Joseph Levora 先生に師事した。大げさにいえば Levora 先生との出会いはまことに衝撃的なものであった。まず奏法のA,B,Cからすべてやりなおすこと、その前提として上の前歯2本を矯正することを要求されたのである。これは14才のときからトラムペットを吹きつづけプロとしての道を歩み始めたわたしにとってはきわめて勇気のいるスリルにみちた決断のいるしかも困難な仕事であった。

 

歯の矯正が終ったあとでの最初の練習のことをわたしは一生忘れないだろう。全く音が出なくなったのである!

以後それまでの10年余の奏法と全く訣別して,合理的奏法を学ぶのにつとめた結果,従来のわたしには演奏不能であったパッセージがらくにこなせるようになった。

例をあげればベートーヴェンの第七交響曲の三楽章,展覧会の絵、キージェ中尉,ペトルーシュカなどでぶつかるむずかしいパッセージがそれである。この事実から、(すくなくともわたしにとっては)新しく身につけた奏法は日本で学んだそれよりもはるかに合理的で正しいものであったということができょう。長年つづけた奏法を根本から変え筋肉にしみついた悪いくせを取り除くことだけについやした3年間の不安と恐怖(ヒョッとすると生活できなくなる!)は誠に深刻なものであったが、それによってもたらされた対価もまた大きなものであった。」

ーーーここまでーーー

 

北村源三さんの経歴は、ウィキを参照されたし。

上前歯2本の歯並びを、どのように変えたのかは分からない。

「より楽に音が出るようになった」ということは、「物理的な条件の精度が上がった」と考えて間違いない。

だから、25年間にわたりN饗の首席が務まったのだろう。

 

●素質

・誤解を恐れずに言えば、金管楽器の素質、つまり物理的に音が出る条件が揃っていなければ、絶対に音は出ない。しばらく試しても音が出なかったら、別の楽器にシフトすることをお勧めする。どうしても金管楽器を続けたければ、音が出る物理的な条件を作り込む必要がある。

残酷なようだが、この事実は実は多くのプレイヤーが薄々気付いてることと思う。

さまざま工夫することで、ある程度までは改善が見込めるだろう。しかし、音が出たり出なかったりするピアノでいくら練習しても、そもそも練習にならず、上達は見込めないだろう。


どの世界でも、上手いやつは最初から上手い。そんなもの。

「素質」とは、練習した結果、どのくらい「急激に」伸びるかどうか。この成長カーブの急峻さが素質。

 

・よく耳にする例え話。

素質には1から5までの5段階、努力にも1から5までの5段階ある。

5の素質があるやつは、1の努力でも急激に伸びる。1の素質で5努力したのと同じ結果が出る。

5の素質があるやつが5の努力をされたら、そりゃどうにも敵わない。

見極めも大事だし、諦めも肝心。

 

・先の北村源三さんの言葉を、どう読むか。

私は歪曲して解釈し「素質が全てだよ」と読んだ。

リスクを取って、物理的条件を揃えた。

 

●この素人が経験談から書いたブログを、信じるもよし、バカにするもよし。どう読むかは、各個人の自由である。

信じて行動に移した場合、非常にリスクが高いことを実施する必要が生じる可能性がある。全てが自己責任。

 

●素人の趣味であれば、下加線2本のソから、上加線2本のドまでの2オクターブ半が出れば、十分に素質はあると思うし、十二分に趣味を楽しめると思う。仮にきれいな音でなくとも、それは個性であり、受け入れられる場所に行けば良い。楽しいと思える環境でプレイすれば良い。

 

 

【概略】

別記事「トランペットの音が出る仕組みを、物理的に考察してみた。」で説明した「選ばれし者のみが持つ2つ目の手段」である「エアビーム」の作り方について、物理的な原理を示しながら解説する。

 

 

【考え方のベース】

●トランペットの音が出るのは、唇が振動する物理現象によるものである。

唇の振動数が、そのまま音の高さとなる。

例えばHi-Bbを出したいのなら、唇が935Hzで振動するようにコントロールすればよい。

 

●では、唇の振動数(=音の高さ)を、どのようにコントロールするのか?

唇の振動数を制御する手段は、物理式が示す次の2つだけである。

・唇の「硬さ」をコントロールする。

・唇の「長さL」をコントロールする。


 

・物理式から、「唇を硬く」すると「唇の振動数f」は大きくなる。(高い音が出る)

・物理式から、「長さL」を小さくすると「唇の振動数f」は大きくなる。(高い音が出る)

「長さL」や「唇の硬さ」と「唇の振動数f」の理屈は、別記事「トランペットでハイトーンを楽に出す:物理式の分析」で詳細を説明した。

 

音の高さを変える物理的な手段として、多くの楽器が採用しているのは、振動体の「硬さ」と「長さ」を変えることである。

・ギター等の弦楽器は、硬さの異なる弦を4本ないし6本用意し、それぞれの弦の長さを変えることで広い音域をカバーしている。

・皮物と言われる打楽器は、大きさ(=長さ)と張り具合(=硬さ)で様々な音域をカバーする。

・金管楽器も同様で、唇の硬さと長さを組み合わせることによって、広い音域をカバーしている。

 

金管楽器で唇の硬さを変える方法は、なんとなくイメージできるであろう。

では、唇の「長さL」を変えるには、どうしたら良いだろうか。

 

例えば、フィリップ・ファーカス著の「金管楽器を吹く人のために」と言う著書のP124に、この「長さL」を観察した結果が記載されている。

・1オクターブ上がると、「長さL」は半分になる。

・1オクターブ下がると、「長さL」は2倍になる。

 

事実を観察した結果、「長さL」と「音の高さf」は、完全に正比例の関係だったということが、示されていた。

この本が書かれたのは1962年。60年以上前から、分かっていたことである。

 

 

[注意]

何度か説明したが、「息の強さや量」は「音の高さ」に直接は関係しない

強い息や量は、あくまでも音量を出すため、つまり唇の振幅を大きくするために必要となる。

 

ここをゴチャ混ぜにして考えてしまうと、迷子、迷宮に入る。

ピアノやギターを強く弾いても、音階が表現できるような音の高さの変化が起こることはない。これが物理の法則である。物理式の示す通りである。

 

トランペットの演奏上、息の使い方は非常に重要である。しかし、「音の高さ」を考える場合には、一旦息のことを忘れる必要がある。

繰り返すが、音の高さを決める要素は、唇の「硬さ」と「長さ」の2つだけである。

 

 

●では、この「長さL」をどのようにコントロールするのか?

2つの手段がある。

・1つ目は、唇を締めたり緩めたりすることで制御する方法。

・2つ目は、概略でも書いたが「選ばれし者のみが持つ2つ目の手段」である「エアビーム」を使って制御する方法。

 

「1つ目」については、世にたくさんの書物やHP、動画があるのでそちらを参照いただきたい。

ここでは、全く語られていない「2つ目」について説明する

 

●先に結論を具体的に言えば、次の通り。

・「上前歯と下唇で細く薄く整形したエアビーム」を「上唇と下唇の合わせ目」に当てることで、振動する唇の「長さL」を強制的に決めてやることで、音の高さを強制的に決める。

 

●物理現象は、条件が揃えば必ず再現する。

逆に言えば、条件が揃わないと物理現象は再現しない。

 

上級者からのアドバイスで結果が出ない場合は、唇が振動するための物理的条件のうちのどれかが欠けていることが原因である。

これは断言できる。

 

●上級者からのアドバイスにウソは一つもなく、間違いなく効果があった経験談を形容詞で伝えようとしている。本当に親身になってアドバイスしてくれている。しかしながら、物理的な条件が揃わない場合は、効果があった「その物理現象」は絶対に再現しない。

 

●数多くの教則本やホームページ、動画等が存在するが、この「選ばれし者のみが持つ2つ目の手段」である「エアビーム」についての記載は見たことがない。知っていて言わないのか、本当に知らないのかは、不明である。

 

 

【単純化したモデルの作成】

●まず、音が出る物理的な条件を絞り込み、それぞれの相関関係を整理する。

「何処に向かって努力すれば結果が出るのか」を、論理的に提示していくことが目的だ。

 

●唇を希望する周波数(音の高さ)で振動させるための、前提条件を整理する。

まず、アンブッシャーを構成する各「パーツ」をリストアップし、それぞれの「役目」と「位置関係」について整理する。

 

パーツリスト

・上前歯

・下前歯

・上唇

・下唇

・マウスピース

※可能な限り単純化するために、骨格や口腔内の形状等の他の要因を、ここでは無視する。

 

●これらのパーツは立体であり、「個別パーツ」としても「それぞれの位置関係」としても3次元的に考える必要あある。

つまり、各パーツの「形状」と「配置」は人によって3次元的に異なることが、話を非常にややこしくしている。

(更に言うと、時間軸による「変形」で物理条件が変わっていくので、最終的には4次元で考えねばならない。バテる正体は何?って話。)

 

物事を考えるコツは、なるべく単純化すること。

ここでは、3次元を2次元にすることで、さらに単純化してみる。

 

●2次元化して考えるのに、最も単純な形状は「直線」と「平面」である。

全てのパーツの「形状」と「配置」が、直線状であり平面状である、として考えを進める。

 

単純化した形状と配置は、次の通り。

①上前歯と下前歯は、厚みは一定で、形状は平面で、先端形状は直線であり、上下方向にも平面になるように配置されている。

②上唇と下唇は、厚みは一定で、形状は平面で、先端形状は直線であり、上下方向にも平面になるように配置されている。

③マウスピースのリムの円周上は、元々平面と考えられる。(テーブルの上にマウスピースを立てられるのは、リムが平面だから。)

 

②の上唇と下唇を、①上下の歯と③マウスピースで、サンドイッチした状態が、アンブシュアである。

単純化したこの形には、人によって異なる「歯並びによるのデコボコ」もなければ「唇のデコボコ」もない。

究極の単純化であると仮定して、考えを進める。

 

この時、それぞれの位置関係は次の通りとする。

・上唇と上前歯は面で接触していて、一体化している。

・下唇と下前歯は面で接触していて、一体化している。

・上唇と上前歯の先端の位置は同じ。

・下唇と下前歯の先端の位置は同じ。

・上唇と下唇は接している状態。

・マウスピースは、上唇と下唇の合わせ目を中央に、上下に均等に配置。

 

これらパーツの「形状」と「配置」を図にしたのが下図。

口を横から見た図。左側が楽器側で、右側が口腔内。

この状態を「単純化モデルのデフォルト状態」(初期状態)と呼ぶことにする。


このデフォルトの状態では、実は息が唇を通り抜けることができない。

理由は、真っ平らな上前歯と下前歯が合わさることにより、前歯で息がせき止められて、唇まで到達できないから。

 

逆に言うと、「どこからも息が漏れない」ようになっている。

ここでは、このことが非常に重要であることを覚えていて欲しい。

 

 

 

【口腔内の空気の圧力分布はどの様になっているのか?】

結論を先にいうと、口腔内の空気の圧力分布は、全ての場所で完全に同じ圧力になっている。

口腔内と繋がっている肺の中の空気も、同じ圧力になっている。

 

●「パスカルの原理」をご存知だろうか。

Wikipediaによると次のように説明されている。

ーーここからーー

「密閉容器中の流体は、その容器の形に関係なく、ある一点に受けた単位面積当りの圧力をそのままの強さで、流体の他のすべての部分に伝える。」という流体静力学における基本原理である。

ーーここまでーー

 

ちょっと何言ってるのか分からないと思うので、風船で考えてみる。

ここで言う「密閉容器」を、風船であるとする。

「風船の内部の空気の圧力は、すべての部分で同じ」と言う事を言っているのがパスカルの原理。

まあるく膨らんだ風船は、どこの部分でも全く同じ圧力が掛かっている。

 

口腔内でも全く同じことが起きる。

トランペットを吹いた時、肺の中の空気を横隔膜を押し上げて圧縮することで、口腔内の圧力高くなることを感じると思う。

肺から口腔内に送られた空気は、風船を膨らます時のように圧縮されており、その時の口腔内と肺の空気の圧力は完全に同じ圧力になる。

同様に口腔内のすべての部分が受ける圧力は、すべての場所で完全に同じ圧力になる。

 

「肺の中」から「アパーチャとなる上下唇の合わせ面」まで、全ての場所に同じ圧力がかかる。

これが「パスカルの原理」から言えること。

 

 

 

【息は唇のどの部分から出てくるのか?】

結論を先にいうと「物理的に最も弱い場所」から漏れ始める

 

●横隔膜等で肺を圧縮して空気の圧力を上げていき、それに伴い口腔内の圧力を上げていくとどうなるか?

口腔内の空気の圧力に耐えられなくなった「アパーチャとなる上下唇の合わせ面」のどこかから、息が漏れ始めることになる。

 

●では、「アパーチャとなる上下唇の合わせ面」の、いったい何処から一番最初に息が漏れ始めるのか?

息が漏れ始める場所を積極的にコントロールすることは、はたして可能なのだろうか?

 

答えは、「物理的に最も弱い場所」から息が漏れ始める。

 

●具体的に「物理的に最も弱い場所」とはどこだろうか?

・上下唇の合わせ目の形状は直線ではなく、波を打っているのが普通であろう。

・上下の唇の厚みも、場所によって異なるのが普通であろう。

 

上下の唇を閉じたときに、結果的に

・上下唇の「重なり代」が少ないところ

・上下唇の「重なり圧」が小さいところ。

から息が漏れ始める。

 

例えば下図のような上唇、中央が「出っ張り」その両脇が「引っ込み」のM字型の場合、どこから先に息が漏れ始めるだろうか?

上下の唇を閉じた時、「中央部」よりも「その両脇」の方が、「重なり代」も「重なり圧」も小さい、ことがイメージ出来ると思う。

つまり、「アパーチャとなる上下唇の合わせ面」の、いったい何処から一番最初に息が漏れ始めるかと言うと、先に息が漏れ始めるのは中央部ではなく、その両脇から先に息が漏れ始めることになる。

 

 

他方、下図のように大きな出っ張りが無い上唇を持つ方も、存在するであろう。

上で設定した「単純化モデルのデフォルト状態」は、このような上唇の形状に近い。

ここでは「単純化したモデル」を使って話を進めるので、こちらの段付きが少ない上唇をイメージしていただきたい。

 

 

 

 

 

【唇の特定の場所から息が出るようにコントロールする方法】

●「アパーチャとなる上下唇の合わせ面」の、何処から一番最初に息が漏れ始めるのかを、積極的にコントロールする方法を考える。

上の「単純化モデルのデフォルト状態」では、前歯で息がせき止められて、どこからも息が漏れないようになっている。

 

口腔内の圧力を上げても、前歯に守られている上下の唇には、空気の圧力が「全く掛からない状態」にある。

もしも前歯を取り除いたら、口腔内の圧力は上下の唇の全ての場所に均等に掛かるようになる。

つまり、もしも歯が無ければ、柔らかい上下の唇は、口の中の圧力に押し出されて、外側に出てしまう

 

多くの上級者は「唇は柔らかくせよ」と口を酸っぱくして言う。

ところが、唇を柔らかくしたら、物理的に口腔内の圧力に負けて、唇は外側に出てしまう。
しかし上級者は、実際に唇を柔らかくして演奏している。

ここに大きな矛盾が生じる。なぜそんな事が可能なのか?

 

この矛盾を解消するには、「唇の裏のすべての部分に歯を置き、唇に直接口腔内の空気の圧力が掛からない状態」にすればよい。

※実際には、上下唇の合わせ面の僅かな部分のみに、口腔内の空気の圧力が掛かるように、セッティングする。

 

 

●「単純化モデルのデフォルト状態」を工夫して、必要な形状のエアビームを作る。

次のように、各パーツの「形状」と「配置」を変更していく。

 

 

●下図のように、上前歯が下唇に乗るように「配置」を変更する。

これにより、「硬い上前歯」が「柔らかい下唇」に接触する。上前歯が下唇に刺さるようなイメージ。

これを「事例1の状態」と呼ぶことにする。

下図「事例1の状態」は、「主に上唇を振動させる」モデル例である。

 

●下図はマウスピース側から口を見た図である。

 

・上前歯の「形状」をこの図のように変更し、下唇との間に薄い二等辺三角形を作る。

 

・もしくは、下唇の「形状」をこの図のように変更し、上前歯との間に薄い二等辺三角形を作る。


 

・このような形状にすると、わずかに顎を上下させるだけで、容易にそして確実に「長さL」を、しかも顎の動きに対してリニアにコントロール可能な「エアビーム」が完成する。

(顎を上げると、上前歯が下唇にめり込んでいき、「薄い三角形」が小さくなる。)

 

・この「長さL」に整形されたエアビームが、上前歯の目前に配置されている上唇に直接当たり、振動する上唇の「長さL」を制限することが可能となる。

 

つまり、「長さL」を顎の動きでコントロールすることで、「音の高さf」をダイレクトにコントロールすることが可能となる。

 

・顎を上げて「長さL」が半分になれば、音は1オクターブ高くなる。

・さらに、口腔内の圧力は「薄い三角形」のわずかな部分の唇だけに掛かる。唇の他の部分には、一切圧力が掛からない。つまり、この「薄い三角形」部分以外の唇が振動することはない。

 

・マウスピース無しの唇だけでのバズィングでHi-Bb(935Hz)を出すことも可能である。音階を奏でることも可能。「それが出来るから何?」って言う「意義の議論」は別として、物理的には可能という話。つまり、「マウスピースのプレスがゼロでも、Hi-Bbは出る」って話。その時の音色や音量は、別問題。あくまでも「音の高さ」の話。

 

 

【今後の展開】

直線と平面で単純化したモデルによる「エアビーム」作成の説明は、一旦ここまでとする。

 

現実的には、様々な要因が4次元で複雑に関係し合い、ここで示した「理想的な状態」に近づけるのは簡単ではない。

 

歯の形状と歯並び、唇の形状、歯と唇の関係、マウスピースの形状と歯と唇の関係、などなど、キリがないくらいの組み合わせがある。

今後は、これらの組み合わせについて説明していきたい。

 

 

【その他】

金管楽器の演奏において、呼吸法を含めて息の使い方は大変重要であり、マスターすることが必須である大変重要な事項である。

 

●息の強さや量は、いつどんなときにどうして必要になるのか、ここで簡単に説明しておく。

ここで作られたエアビームは「薄い三角形」である。1オクターブ高くするには、長さLを半分にすれば良い。

 

では、長さLを半分にした時、「薄い三角形」の面積は、どのくらい小さくなるだろうか?

三角形の面積を求める公式は、「底辺x高さ 割る2」 である。

 

答えは、底辺と高さがそれぞれ半分になるので、1オクターブ上がった時の三角形の面積は1/4となる。

 

息が出てくる面積が小さくになれば、口腔内の圧力が一定だった場合、出てくる空気の量は面積減に比例して減る。

出てくる息の量が減ると、音量を決める「唇の振幅」は小さくなる。

出てくる息の量を増やして音量を増すには、口腔内の空気の圧力を上げるしかない。

 

以上の物理的背景から、高い音でも低い音と同じ音量を保つためには、口腔内の圧力を高める必要がある。

多くのプレイヤーが顔を真赤にして、気を失って倒れそうになりながら高い音を吹いているのは、このような物理的な背景があるから。

 

繰り返すが、息の強さや量は「音の高さ」には直接は関係しない。

ここを分けて考えないと、話がややこしくなって、原因にたどり着けない。

 

●参考までに、空気が出てくる面積が小さくなった時、同じ空気の量が出てくるようにするためには、口腔内の圧力をどのくらい上げる必要があるのか、計算してみた。ChatGPTに計算してもらった。ベルヌーイの法則と連続の式を使用。

答えは、息が出てくる面積が1/4になると、元と同じ量の息を得るためには、口腔内の圧力を16倍にする必要がある。つまり2乗の関係になる。

人間の肉体では、難しいのかもしれない。

 

●ここでの事例は、エアビームの形状が三角形の場合の話である。三角形の場合、顎を上げていくと、「長さL」は直線的な反比例関係になる。しかし、息が通る「量」は顎の動きに対して二乗に反比例する。では、もしも三角形の斜辺が二次曲線的である場合、どのように「長さL」と「息の量」が変わるか、と考えながら、自分の前歯を見つめてみるのもよろしいかと。

 

●振動体である唇の「長さL」と「硬さ」を上手くコントロールして、「音の高さ」と「音量」をバランスをよく両立させていくことになる。

さらに、「音色」という重要な課題もある。「音色」は、唇の「硬さ」と相関が深いのは、既知の事実であろう。

 

ーーーー

●「長さL」が小さいと高い音が出ることを、物理的に実験で再現させた動画を撮影したので掲載。音が出るので、再生時注意!

 

「エアダスター」と言う、ホコリを飛ばすスプレー缶から出てくる圧縮空気を、息に見立てて使用。

左手の「人差し指と中指」の間の皮膚を唇に見立てて、圧縮空気を当ててみた。

ノズルの先端の穴径は、約0.5mm。(Φ0.5)

 

唇ではなく、指の間の皮膚でも、「長さL」が小さい空気を至近距離から当てれば、「長さL」を保ったまま皮膚が振動し、高い音が出る。

指と指の間を締めると音の高さは高くなり、緩めると音の高さは低くなる。

エアダスターはホームセンター等で1本500円程度で入手可能。

 

この「ピー」音の周波数を観測すると、1900Hz前後。トランペットで言うと、ダブルHi-Bbくらいの音の高さ。

 

 

●人間の肺は、何気圧までの圧力を作ることが出来るのか?

実験してみた。

手元に自動車用のターボメーターがあったので、息を吹き込んで値を読んでみた。

 

結果は、1.2kg/cm2。つまり1.2気圧。

大気圧が1kg/cm2なので、たったのプラス0.2kg/cm2。

クラクラするまで頑張ってみたが、これが限度。

 

人間の能力では、この程度までしか圧力を上げられないようだ。

肺の中の圧力は、咳をする時には1.5kg/cm2くらいまで行く、らしい。継続して1.5kg/cm2を作るのは、体に良くない、らしい。

 

 

 

 

 

【概略】

音色の可視化その2。

同じ音域の3種類の楽器の音色比較。

トランペット、コルネット、フリューゲルホーンの音色を可視化して比較してみた。

 

 

【使用した楽器】

●トランペット

 :YAMAHA YTR-83 + EM1

●コルネット

 :Besson Sovereign BE928 + Deniswick 3

●フリューゲルホーン

 :YAMAHA YFH-8315G + Deniswick 3FL

 

 

【吹奏条件】

●mf程度の演奏

●五線の第三間のド(実音Bb)

 

 

【結論】

●詳細は、下記の観測波形を参照。

・音色から想像するよりも、ずっと倍音の違いが小さく、驚いた。

・基音と第2倍音のバランスは、どの楽器も同程度で大きくても3dB程度の差しかない。

・第3倍音以降で、やっと差が見られるようになる。

「あの音色の違いは第3倍音以降が効いている」と言うことになる。

 

【考察】

●楽器の重さによる違いか?

・YTR-83とYFH−8315Gは、軽めの楽器。高次倍音が20次以降まで出ている。

・Besson 928は重めの楽器。重めの楽器。9次倍音程度までしか出ていない。

 

●マウスピースの仕様の違いか?

・EM1はカップ径16mm、スロート3.65mm。カップ容積は、小指の爪半分まで入るくらい浅い。

・Deniswick 3と3FLのカップ径は17mm、スロートは4.58mm。カップ容積は、小指の第一関節まで入るくらい深く大きい。

完全に真逆の仕様なので、データ上でももっと大きな差が出るかと思っていたが、意外であった。

 

●常日頃感じてるが、道具の違いよりも、プレイヤーの違いの方が、音色の差は大きいのかもしれない。

例えば、音を聞けば誰が吹いてるのか識別可能。ウォーミングアップの音を聞けば、その人の習熟度がある程度想像できる。などなど。

 

 

【観測波形】

五線の第三間のド(実音Bb)
mf程度
 

●トランペット : YAMAHA YTR-83 + EM1

基音と第2倍音は同程度。第3第4倍音が基音から−10dB。第5,6,7倍音が基音から-20dB。以下数dBずつ低下。

高次倍音は20次以降まで伸びる。

 

●コルネット : Besson Sovereign BE928 + Deniswick 3

基音と第2倍音は同程度。第3倍音が基音から−5dB。第4倍音が基音から-20dB。以下10dBずつ低下。

高次倍音が非常に少ない。非常に重い楽器だと感じるが、その影響か?

 

●フリューゲルホーン : YAMAHA YFH-8315G + Deniswick 3FL

基音と第2倍音は同程度。第3倍音が基音から−15dB。第4,5,6倍音が基音から-20dB。7次以降が急激に低下。8,9次が急降下。

高次倍音は20次以降まで伸びる。

 

【測定条件】

●測定機:iPhone6 内蔵マイク

●測定に使ったアプリ:Audio Frequency Analyzer●測定時期:2017年2月頃

 

【その他】

・それぞれの音色は、息の量、音の大小、楽器の特性、プレイヤーの個性等で、大きく変わるもの。なんとなく傾向が分かる、と言った程度のデータである。

・スマホのアプリの記録ボタンを右手で押す必要があり、演奏はすべて片手運転。

・測定位置は、ベルの直近。スマホに右手が届くギリギリの遠さ。

・波形のピーク高さは、時々刻々と変化。幅で5dB程度は振れていて、記録ボタンを押した瞬間のデータが記録されている。何度か記録して、平均的と思われた記録データを提示。

 

【概略】

音色の可視化。

「倍音成分がたっぷり含まれた音が良い音だ」という話を耳にするので、倍音の量を測定してみた。

 

【結論】

・倍音はそれなりに入ってた。

・良い音かどうかは完全に主観、好き好きなので、よく分からん。

・「ジャズ系の道具にしては、基音が多めでかなりマイルドな音色だ」、という自覚がある。(主観)

 

※音色の雰囲気

・Sin波が最もマイルド。「ポー」って雰囲気の音色。

・倍音が増えると、「パーン」って雰囲気のパリパリした明るい音色に。

 

 

【観測波形】

音の大きさはmf程度。

 

●五線の第二線のソ(実音F)

・基音が350Hz前後。

・第2倍音、第3倍音は基音とほぼ同じ、第10倍音辺りまでが-15dB、音色としての倍音は十分に聞こえてると推測。

・20倍音以上まで観測されてるが、基音に対して-20dB以下ではあまり音色には貢献してないと推測。

 

●五線の第三間のド(実音Bb)

・基音が470Hz前後。

・第2倍音は基音とほぼ同じ、第3倍音、第4倍音が-10dB、第5倍音、第6倍音が-15dB、音色としての倍音は十分に聞こえてると推測。

・20倍音以上まで観測されてるが、基音に対して-20dB以下ではあまり音色には貢献してないと推測。

 

●五線の上のソ(実音F)

・基音が700Hz前後。

・第2倍音が-10dB、第3倍音が-15dB、音色としての倍音は十分に聞こえてると推測。

・15倍音当たりまで観測されてるが、基音に対して-20dB以下ではあまり音色には貢献してないと推測。

 

●上加線2本のド(実音Hi-Bb)

・基音が935Hz前後。

・第2倍音、第3倍音が-15dB、音色としての倍音は十分に聞こえてると推測。

・15倍音当たりまで観測されてるが、基音に対して-20dB以下ではあまり音色には貢献してないと推測。

 

●上加線4本のソ(実音HiーF)

・基音が1400Hz前後。

・第2倍音が2800Hz前後で基音に対して-10dB、音色には寄与してそう。

・第3倍音以降は、基音に対して-20dB以下であまり音色には貢献してないと推測。

 

●上加線5本の上のド(実音ダブルHi-Bb)

・基音が1870Hz前後。

・第2倍音が3740Hz前後、第3倍音が5600Hz前後で、基音に対して‐20dB、ほとんど音色には寄与してないだろう。

・ピアノの最高音のC8が4190Hz前後で、音程として聞こえる上限あたりらしい。

・人間の耳の感度は「2kHzから4kHz」で非常に感度が高い。ただただ痛い、耳障りなだけであろう。

 

 

【測定条件】

●測定機:iPhone6 内蔵マイク

●測定に使ったアプリ:Audio Frequency Analyzer

●楽器等:楽器 YTR-83、マウスピース EM2

●測定時期:2017年2月頃

 

 

【その他】

・それぞれの音色は、息の量、音の大小、楽器の特性、プレイヤーの個性等で、大きく変わるもの。なんとなく傾向が分かる、と言った程度のデータである。実際に波形を見ながら音を出してみることをお勧めする。お師匠様の音色を可視化して、目標とするもよし。

・スマホのアプリの記録ボタンを右手で押す必要があり、演奏はすべて片手運転。

・測定位置は、ベルの直近。スマホに右手が届くギリギリの遠さ。

・波形のピーク高さは、時々刻々と変化。幅で5dB程度は振れていて、記録ボタンを押した瞬間のデータが記録されている。何度か記録して、平均的と思われた記録データを提示。

 

 

【概略】

トランペットでハイトーンを「楽に」出すにはどうすれば良いのか、物理式を分析することで、その答えを導いてみる。

 

 

【課題の整理】

音が出るのは物理現象であり、「条件が揃えば確実に再現可能」なのが物理現象。

逆に言えば、条件が揃わなければ再現しないのが物理現象。

 

トランペットは難しい楽器である。難しいって、何が難しいのか?

他の楽器と比較しながら、課題を整理する。

 

 

●まず音楽を奏でる以前に、「思った通りに音が出せる」必要がある。

 

「思った通りに音が出せる」とは、どんなことか?

ここでは次のように定義する。
 

「1.弾いた瞬間に音が出ること。」

「2.想定した高さの音が出ること。」

※ここでは可能な限り話をシンプルにする目的で、微妙な音程外しや音色、音量等を無視して話を進める。

 

音楽を奏でるには、楽器として少なくともこの2つの機能が必要で、この2つが機能しないと音楽を始めることが難しい。

少なくとも、「ピアノとギター、打楽器」は、上記2つの機能を楽器自体が持っている。いわゆる「猫でも音は出せる」って話の通り。

 

 

●ピアノとギター、打楽器

ピアノやギター、打楽器の演奏が簡単とは言わないが、少なくとも「音が出なくて苦労すること」は、まずありえない。

弾いた瞬間に、想定した高さの音が出る。もしも出なければ、それは楽器の故障であり、楽器自体の修理が必要だ。

 

「1.弾いた瞬間に音が出ること。」「2.想定した高さの音が出ること。」のどちらも、楽器任せ。

 

様々な教則本が大量に存在し、その多くが「思った通りに音が出せる」前提で書かれている。

ピアノ教室に行けば、即時にバイエルから練習が始まる。

音さえ出れば、各種教則本で練習を始めることが出来る。

 

 

●木管楽器

「木管楽器」は、さすがに猫には音が出せない。

 

「1.弾いた瞬間に音が出ること。」「2.想定した高さの音が出ること。」のどちらも、ピアノ等に比べれば難しいが、比較的容易である。

 

「1.弾いた瞬間に音が出ること。」

振動体(リード等)の状態が目に見えるので、マウスピースを含めて振動体(リード等)のセッティングを目視確認すれば、高い確率で物理的条件の再現が可能。例えば上級者が振動体をセッティングすれば、多少のコツの習得は必要だが、物理的条件が揃う可能性は高い。

 

「2.想定した高さの音が出ること。」

基本的には運指によって物理的に管の長さを変えて音の高さを変える仕組みなので、間違いなくクリアできる。もしも出ない音があれば、マウスピースを含めた楽器自体に原因がある。

 

 

●金管楽器

問題は、トランペット含めた「金管楽器」である。

 

「1.弾いた瞬間に音が出ること。」「2.想定した高さの音が出ること。」のどちらも、ピアノやギター、打楽器等に比べると、かなり難易度が高い。

もちろん猫には演奏は無理。

 

「1.弾いた瞬間に音が出ること。」

木管楽器のように、振動体のセッティングを上級者が代理で行うことは、物理的に不可能。経験を形容詞等によるイメージで伝えるのが精一杯。物理的条件の精度を上げるのに、イメージだけで伝えるのは難しい。

 

「2.想定した高さの音が出ること。」

同一運指でも、複数の高さの音が出る。

ピアノのように、「この鍵盤を弾けば間違いなくこの高さの音が出る。」ようにはなっていない。

誤解を恐れずに言えば、同一の「この鍵盤」を弾いても、違う高さの音が出るのが金管楽器である。

 

 

音の高さは、「唇の振動数」で直接決まる。唇が440Hzで振動すれば、440Hzの音が出る、一対一の関係。

唇が振動を継続しけなければ、音にならない。

なので、「如何にして唇の振動数を、想定した高さの音の周波数と同じに、一発でコントロール出来るか」が、腕の見せ所となる。

 

一般的にその方法は『「唇の締め具合」と「息」を調整することで実現する』と説明される。ウソは一つも無い。
世の中には、この説明だけで音が出せるようになる人も、たくさん存在する。

逆に、いつまで経ってもマトモに音が出ない人も、それこそたくさん存在する。

 

それは何故か?

音が出るのはただの物理現象であり、再現できないのは何らかの物理的な条件が揃っていないから。それだけである。

 

 

●「1.弾いた瞬間に音が出ること。」「2.想定した高さの音が出ること。」が出来ないことによる弊害


では、この2つ「弾いた瞬間に、想定した高さの音が出ること」が出来ない場合、どんな事が起こるのか。


「1.弾いた瞬間に音が出ること。」

ピアノ演奏で、もしも弾いてから0.1秒遅れて音が出たら、演奏は可能か? 0.2秒遅れて音が出たら? ある音は0.1秒遅れだが、別のある音は0.2秒遅れで音が出たら? もしくは音が全く出なかったら? テンポに合わせて演奏するのは難しいだろう。テンポ60で1拍は四分音符であり1秒、16分音符の長さは0.25秒。四分音符を刻むだけでも、マトモな演奏は難しい。

 

「2.想定した高さの音が出ること。」

ピアノの鍵盤のうちの1つを弾いた時、想定と違う高さの音が出ることはあるか?

ギターの弦を弾いた時、想定と違う高さの音が出ることはあるか?

100%想定通りの高さの音が出る。当たり前だ。もしも出なければ、楽器の故障だ。

もしも弾くたびに違う音が出てしまったら、演奏は可能か? マトモな演奏は難しい。

 

 

●どうすれば目的を達成できるのか?

 

トランペットは他の楽器と同様、「息を入れた瞬間に想定した高さの音が出ること」が求められている楽器。ところが、息を入れた瞬間に音は出ないし、想定した高さの音が出ないのが常である楽器がトランペット。ハイトーンが出る出ない「以前の課題」である。

 

唇の振動数がそのまま音の高さとなる。唇の振動開始とともに音が出る。

ピアノやギター、打楽器等の、他の楽器と、基本的には全く同じ仕組みである。

 

・ピアノは、弦をハンマーで叩くことによって振動を開始する。

・ギターは、弦を指で弾くことで振動を開始する。

・打楽器は、スティックで叩くことで振動を開始する。

これらは、外力により受けたエネルギーにより振動が開始した後も、エネルギーが熱として消費されてゼロになるまで振動が継続する。

 

では、唇はどのようにして振動を開始し、振動を継続するのか?

上級者は、息を入れた瞬間に音が出せるし、音を継続することも出来る。

 

「振動」とは、繰り返し動くことである。

「唇を振動させる」とは、唇を繰り返し動かし続けることである。

唇の振動を開始させ、その振動を継続する手段として、息を使う。

 

方法として『「唇の締め具合」と「息」を調整することで実現する』と言われている。


具体的にどうすれば実現できるのか、物理式を分析することで答えを導いてみる。
 

 

【物理式の分析】

別記事「トランペットの音が出る仕組みを、物理的に考察してみた。」で提示した物理式の意味を考えてみる。

 

音の高さは、物理法則に則って決まる。

可能な限り単純化するために、ここでは弦楽器を想定した物理式を流用して考えてみる。

 

この式には、周波数(=振動数)が決まる条件が表現されている。

 

 

 

 

●右辺の「ルート内」の意味を考えてみる。

・μlipはヤング率と言われるものに該当し、物質により一定と言われる。弦楽器で言えば、硬い弦なのか、柔らかい弦なのか。

・Tlipは、弦楽器の張力からイメージすれば良いと思う。強く引っ張れば硬くなって、音は高くなるイメージ。

 

まとめると、

・分母のμlipは一定で、変わるのは分子のTlipのみ。

・さらにルートの中にある値であり、音の高さに与える影響は小さくなる傾向にある。

 

ギターで考えてみる。

張力Tを変えた時のイメージは、ギターのチョーキング。

 

 

●右辺の残り「1/2L」の意味を考えてみる。

分母に長さLがある。

これは、「周波数」は「長さL」に反比例することを意味する。

 

・長さが長いほど、周波数は下がる。

・長さが短いほど、周波数は上がる。

 

ギターで考えてみる

弦の長さを半分にすれば、2倍の周波数になり、1オクターブ上がる。

 

 

●式の分析のまとめ

・周波数をコントロールできる要素は、「張力Tlip」と「長さL」の2つだけ

 逆に言えば、「たった2つ」をコントロールするだけで実現できる。

 

・ギターでは、周波数つまり「音の高さ」のコントロールに、主に「長さL」を使っている。

 「チョーキング」で「張力T」を使うこともあるが、主に使うのは「長さL」である。

 

ここで、式の意味が明確になった。

 

 

【金管楽器と物理式の関係】

●金管楽器のマウスピースのカップのサイズから、必要な長さLを推測する。

チューバ、トロンボーン、トランペットは、Bbキーの楽器であれば、実音で1オクターブずつ音の高さが上がっていく。

マウスピースのカップの直径を「長さL」と仮定して、比較してみる。

「1オクターブの差」と「長さL」は、どのような関係にあるのか。

 

 

●一般的な金管楽器のマウスピースのカップの直径(おおよその値)

・チューバ   29.5mmから33.3mm、中央値31.40mm±6%、大小の差3.8mm

・トロンボーン 23.9mmから28.0mm、中央値25.95mm±8%、大小の差3.9mm

・トランペット 15.0mmから17.5mm、中央値 16.25mm±8%、大小の差2.5mm

※楽器に関わらず、大きさの範囲は±8%程度の範囲に入る。

 

 

●チューバの直径を100%とした時の直径比

・チューバ   中央値 31.40mm 100%

・トロンボーン 中央値 25.95mm 83%(−17%)

・トランペット 中央値 16.25mm 52%(−48%)、(トロンボーン比63%)

※トランペットは、極端に小さい。

 

 

●楽器間の大きさの差分

・チューバ   29.5mmから33.3mm トロンボーンとの差、最小1.5mm、最大9.4mm

・トロンボーン 23.9mmから28.0mm ー

・トランペット 15.0mmから17.5mm トロンボーンとの差、最小6.4mm、最大13.0mm

※かなりの語弊があるが、チューバとトロンボーンでは大きな差が見られない。

 

 

●比較結果

・音の高さが低い楽器ほど「長さL」は長く、音の高さが高い楽器ほど「長さL」は短い、と言える。

 物理式の「長さL」は、金管楽器においても 音の高さ(=周波数)に大きな影響がある。

 

・トランペットのマウスピースのカップ直径は、異常なくらい小さく思える。

 楽器間の音域変化の、1オクターブ当たりの「長さL」は、反比例の関係にはあるが、直線的は関係ではない。

 

マウスピースのカップの形状は、長い歴史の中で様々な試行錯誤があり、現存しているモノが今日のところの結論であろう。
トランペットの場合の唇の振動する「長さL」は、想像以上に小さい数字なのかもしれない。

 

ハイトーンを出す時は、イメージ的には「針のような細い息を出す」と言う話を、耳にしたことはある。上前歯の形状を工夫して実験すると、その効果は明らかに見られた。

 

 

【考察】

・音の高さは「長さL」の支配が非常に大きいと推測する。

 

・「長さL」の絶対値が小さいほど、コントロールの幅の絶対値は小さくなる。つまり、小さいマウスピースほど、コントロールがシビアになる。僅かな「長さL」の変化で、音の高さが変わるようになる。

このことは、ギターのフレットを見れば、感覚的にも理解できると思う。「長さL」が小さくなるほど、フレットの間隔は狭くなっていく。

上記物理式に、実際の音階の周波数を代入して計算すると、フレットの間隔通りで、半音あたりに必要な変化量はどんどん小さくなる。

 

 

【結論】

物理式から得られた結論。

・音の高さは「長さL」をコントロールすることで、ほぼ決まる。

 

「線密度μ」と「張力T」が一定で、「長さL」がコントロールできていれば、物理的に音は絶対に外れない。もしも音が外れるとすれば、変数のどれかが変わっているからである。

この考え方がブレると、永遠に迷走、迷子になる。

 

物事を複雑にしようとする輩は、どこにでも居る。「いかにシンプルに考えられるか」を考えることが重要。パラメータは何と何があって、その中で影響力が大きいのはどのパラメータなのか。影響力の小さなものは、後回しにする、など。

 

初めは「大きな音を捨てる」のも、やり方の一つ。「音がまったくない」こと(ゼロ)に比べれば、「決して大きな音ではないが、音がある」方がはるかに重要である。

 

例えば、長時間吹いてバテてきて唇が腫れてきたとすると、条件が変わることになるので、音は外れるだろう。時間軸での物理的変化は、想像以上に大きいと感じる。細かく言えば、気温でもコンディションは変わる。満腹なのか空腹なのかでも変わる。何がどのように変わったのか、冷静な分析が必要。実験するには再現性を確保するために、可能な限り同じ条件で行うことが非常に大事。

 

重要なのは「長さL」をコントロールできること。上手く行かない時は、『なぜ「長さL」がコントロールできていないのか?』と考える。「バテるとなぜ「長さL」が変わってしまうのか?」と考える。

 

 

※「金管楽器を吹く人のために」と言う書物がある。著者はフィリップ・ファーカス。1962年の発行で、60年以上前の著書。

「アパーチャのサイズ」に言及。具体的な図が124ページにあり、「長さL」と「音の高さ」が反比例の関係にあることを示している。

具体的には、

・「長さL」が2倍になれば1オクターブ下がる。

・「長さL」が半分になれば1オクターブ上がる。

と書かれている。

 

 

[その他]

●「長さL」の具体的なコントロール手法は、別記事「トランペットの音が出る仕組みを、物理的に考察してみた。」で、具体的な事例を提示して、概略を説明済み。

 

●楽器の角度なども、物理的条件に関わる一因となる。低音から高音まで、全く同じ楽器の角度である必要はない。高い音になるに従い楽器が下を向く人もも居るし、低い音ほど楽器が下を向く人もいる。高い音になるほど楽器が右向きになる人もいる。マウスピースが唇の中央から大きく外れている人もいる。

音が出ることが正義、その人にとっては正解。万人に共通な構え方など無い。

 

●チューバで、トランペットの音域以上の高い音を出す人がいる。

物理的な条件さえ揃えば可能なことであり、不思議ではない。

 

●前記事にも書いたが、「息の強さや量」は、「音の高さ」には直接は関係がない。「息」と「音の高さ」は、あくまでも間接的な関係にある。

例えば、ギターやピアノを強く弾くと、音の高さは高くなるのか? 経験上でも、音階を奏でるほどには音の高さは変わらない。

厳密には、弦の振幅が増えて長さLは長くなるが、張力Tが増すので、物理式の通りに音の高さに影響が出る可能性はある。振幅が増えて弦が長くなるのは、ギターの「チョーキング」のイメージである。長さLも増えるが、張力Tの方が、より音の高さにより効くのであろう。ドラムなどを強く叩くと、振幅が大きい間は音が高くなるのを感じることがある。

 

●書籍や論文、ホームページ、動画等で、様々な立場の方が、それぞれの「経験」から、ハイトーンを「楽に」出すコツを説いている。それらの情報に、ウソは一つもないと思う。なぜならウソをつくメリットがないからだ。「こうしたら上手く行った」「こう指導したら上手く行った」と言う経験談に、ウソはひとつもない。

 

しかしながら、残念ながら、どの情報にも一貫した再現性は見られない状況にある。あるプレイヤーには効くアドバイスが、別のあるプレイヤーには全く効果がないと言うアドバイスがほとんど。

 

アドバイスする方も、そのアドバイスが一部の人にでも効果が出れば自信となり、誰にでも同じアドバイスをするのが自然であろう。しかしながら、あるプレイヤーでは結果が出ているものだから、「結果が出ないプレイヤーの努力が足りない」と他責に走り、自分のアドバイスに問題があることを意識することはない。これは特に音大等の比較的上級者を指導する立場の指導者が陥りやすい罠であろう。指導者と同様、元々音が出るプレイヤー、つまり「物理的に音が出る条件が揃っている」前提でのアドバイスであるにも関わらず、自分のアドバイスに間違いが無いことにより自信を付け、結果が出ない理由を他責に求めるのは、ごく自然なことであり、責めるようなことではない。

悪意が無いだけに、かえって非常にタチが悪いと感じる。

 

本来は、なぜ同じアドバイスをしたにも関わらず「一方では結果が出るが、他方では結果が出ないのか」を考えねばならない。

どうして粘膜奏法になってしまうのか。どうして必要以上に唇に力を入れてしまうのか。どうして必要以上にプレスを掛けてしまうのか。それらが良くないことであることを、多くの人は知っている。見れば、音を聞けば、分かる。

多くの上級者は、診察は出来るけど、処方箋は書けない。

 

どうして粘膜奏法になってしまうかと言うと、そうしないと音が出ないからなのである。どうしてそうしないと音が出ないのか、考えたことがありますか? あなたは処方箋を書けますか?

 

●上級者からのアドバイスでも、人によって言っていることが180度異なる、真反対のアドバイスの場合がある。

例えばマウスピースの大きさで言えば、「大きい方が良い」「小さいほうが良い」と、人によっては真反対のことを言う。

アドバイスを受けた方は、もはや何を信じて良いのか全くわからなくなり、路頭に迷い、マウスピースを次々と買い続ける終わりのない旅に出ることになる。

最終的には「人によって骨格や歯並びが違うから、自分に合うものを自分で探すしか無い。」となる。その通りであり、ウソは一つもないし、もちろん悪意もない。

 

●得られたそのアドバイスの「物理的な意味」は何なのか? この記事が「物理的な意味」を特定するための「羅針盤」になればと思う。

多くのアドバイスには「物理的な理由」が提示されていない。あくまでも「個々人が感じる経験則」からくるアドバイスではあるが、そのアドバイス自体には間違いはなく、「楽に音が出る物理的条件」に有利に働くような「共通した物理条件の何か」が必ず存在する。それを読み解くヒントになればと思う。

 

音が出るのは「単なる物理現象」であり、条件が整えば確実に再現可能なのが物理現象。逆に言えば、条件が揃わなければ再現しないのが物理現象。アドバイスで結果が出るのは、物理的な条件が揃っている場合のみである。

 

●この記事の内容を活用するおつもりなら、よくよく吟味してからにしてください。

悪意はないので、ものすごくタチが悪いかも、です。

 

最後までお読みいただいたあなたに、心より感謝いたします。

 

【概略】

車両のスピード(車速)を測定する目的で、車両にはスピードセンサーが付いている。

スピードセンサーには様々種類があり、次のような方式がある。

・リードスイッチ式

・ホール素子式

・誘導式

・光学式

 

「リードスイッチ式」は、平成初期頃までの比較的古い車で使用されていることが多い。

リードスイッチは機械式の接点を持つため、ON/OFFの際にチャタリングと呼ばれる振動が起こり、電気的なノイズが発生する。

ECUが「走行中か」「停止中か」を判定するのには支障はないが、正確なスピード(車速)を測定するには、このノイズを除去する必要がある。

 

ノイズを除去する方法は、大きくは次の2つ手法が考えれれる。

1.センサー自体を、原理的にノイズ(チャタリング)が出ないタイプに交換する。

2.ノイズを除去する電気的な回路を追加する。

 

今回は2の「ノイズ除去回路」を作成してみた。

 

【目的】

「トリップメーター」と「燃費計の距離」が、合ったり合わなかったり、時には数%オーダーで大きくズレたり。

燃費計の意味が薄れている状態だった。

燃費計を燃費計として成り立たせるために、原因を探るとともに改善案を考えることにした。

 

【注意】

この記事を参考にしたことにより発生したあらゆる損害に対して一切の責任を負いません。

実施する場合は、全て自己責任で実施してください。

 

【回路仕様】

・出力は3つ。(フリーダムコンピューター、燃費計、外付け速度計。)

・接続先の信号電圧が、12Vでも5Vでも動作すること。(オープンコレクタとする)

・車速180km/h程度までは測定できること。

 

【ノイズ除去の手段】

・コンデンサと抵抗器による積分回路により、ノイズ(チャタリング)を除去する。

・積分された信号を、シュミットトリガ入力のロジックICを通過させることにより、より安定した動作を狙う。

 

【車両側の仕様】

・スピードメーターは機械式。ミッションからメーターまで、機械的にメーターケーブルで接続されている。

・メーターケーブル1回転で、4パルスの電気信号が出てくる。

・機械式のスピードメーターは、メーターケーブルが637回転で走行距離1kmになるように規定されている。

 

・60km/h(60km/時)の時のパルス数(周波数)を計算してみる。

60km/時の時には、1分間に1km走行する。(1km/分)

1km/分でメーターケーブルは637回転、1回転あたり4パルスの電気信号が出てくる。

1分あたりのパルス数は 637回転x4パルス = 2548パルス/分。

1秒あたりのパルス数は 2548パルス/60分 = 42.47パルス/秒 = 42.47Hz

 

・180km/h(180km/時)のパルス数(周波数)を計算してみる。

180km/hは60Km/hの3倍の速度であり、1分間に3km走行する。

と言うことで3倍してみると 42.47Hzx3 = 127.4Hz

 

・約15%ほどマージンを乗せて、「上限周波数150Hz」を目安として回路設計する。

150Hzは約212Km/hに相当。

ただし、パルスのduty比が50%であることが前提。


【回路図】

回路の説明

・左側が電源回路。12Vを5Vに変換。

・中央部がノイズ除去回路。CRによる積分回路。

・右側が増幅回路。負荷側の信号レベルをLoレベルに引っ張るオープンコレクタ。

 

・R1でC1の充電時間が決まる。

・R2でC1の放電時間が決まる。

・R3は、リードスイッチの下限電流である1mAを超える電流を流すのが目的。

・D1は、C1への充電電流経路をR1だけに限定するのが目的。

 

・シュミットトリガ入力のロジックICとして、TC74HC14(東芝製)を選択。

メーカーによりトリガーレベルは異なるので、各メーカーに合わせた時定数の選択が必要となる。

 

 

【完成品外観】

取り外してメンテ出来るように、コネクタを取り付けた。

表面

裏面

 

【動作確認の手順】

・LTspiceでシミュレーションを使用。180km/hの時の信号を入れて動作確認。

・回路完成後に、同様に180km/hの時と同じ信号を入れて動作確認。

※車載後、180km/hでの動作確認は行っていない。少なくとも100km/h前後までは、問題なく動作した。

 

【シミュレーションに使った回路】

 

【動作確認】

室温において、以下の条件まで動作した。

・約230Hz(ターゲット上限周波数150Hzの5割増。325Km/h相当。)

・duty比が約60:40 の矩形波(duty比50:50よりも厳しい方向。)

 

約230Hzを超えたところでで出力波形が消滅、動作しなくなった。

 

※テスト車両では、リードスイッチOFF時間よりもON時間が若干短めだったので、その傾向に沿ったLo短めのduty比にセットしてテストした。

 

●動作確認1

入力テスト信号の周波数を上げていき、出力信号が消滅する周波数を確認。

ch1:入力信号 約230Hz(2v/div)

ch2:出力信号(2v/div)

 

●動作確認2

CR積分回路が、設計通りに動いているか確認。

ch1:入力信号 約230Hz(2v/div)

ch2:C1の上側(1v/div)

 

※「C1の上側」の波形が、約2.5Vを中心に上下均等に振幅するように、R1、R2、C1の値を調整するのがミソ。

 

●動作確認3

車両に取り付け、実走行して動作を確認。

「トリップメーター」と「燃費計の距離」の進みの差を確認することで、動作確認とする。

 

・トリップメーター 364.4km(目視)

・燃費計 364.461km(デジタルデータ)

 

その差0.016%。

トリップメーターの読みは目視であり、いい加減である。

問題となるノイズ(チャタリング)は、十分に除去できていると考えて良いだろう。

 

●動作確認4

発生しているノイズの大きさと、除去できるノイズの大きさを確認し、改めてノイズマージンを確認。

 

・リードスイッチに外部から衝撃を加えた場合に、どの程度のノイズ(チャタリング)が発生するのか、確認した。結果は最大でも40us程度。具体的には、リードスイッチが内蔵されているスピードメータを外して、「ドライバーの柄」でスピードメータを引っ叩いてみた。チャタリング自体は数ms継続するが、観測された中でのONもしくはOFFのパルス幅は、一番長かったものでも40us程度だった。

 

・どのくらい長いノイズまで除去できるのか。「C1の充放電カーブは上りも下りも2ms弱」「出力波形が狭い方が1ms」から、その1msの半分の500usのノイズまでなら除去出来ると推測する。

 

まとめると、ノイズとノイズ除去性能が1桁違うので、ノイズは除去できると推測。

・発生するノイズの最大パルス幅は、40us前後。

・500usのパルス幅のノイズまでは除去できそう。

 

過大な衝撃が加わった場合は、想定以上の最大パルス幅のノイズが発生する可能性はある。

 

【その他】

●回路ショート等の事故防止目的で、バッテリーとの配線間にはヒューズ等を入れることを推奨。

 

●この作品は4代目。

・3代目では富士スピードウェイの本コースのストレートで、180km/hを超える辺りからスピード信号が消滅。フリーダムコンピュータで取ったログを、後で見返して気づいた。フリーダムのログでは、180Km/hから段階的に135Km/h、90Km/h、45Km/hになり、最後にはゼロKm/hになった。(フリーダムは、単位時間あたりのパルス数から車速を計算しているものと推測。)

 

メーターケーブル1回転で4パルス出る仕様。そのパルス数が、3/4に減り、2/4に減り、1/4に減り、最後には0/4。リードスイッチ1個に対して4個の磁石があり、1回転する間に4つの磁石が順番にリードスイッチをON/OFFして4パルスが出る。リードスイッチと4個の磁石の距離がそれぞれ微妙に異なり、ON時間が微妙に異なるため、パルス数がだんだん減る現象に見えたものと推測。

 

・どのくらいのパルス幅から読みこぼすのか、試算してみる。180Km/hの時の周波数は127.4Hzで、周期に直すと7.849ms。リードスイッチがONする時間は、duty比50%とすると半分の3.925ms。4ms未満のパルス幅の信号は、消えてしまう回路設計だったのだ。

 

・対策を施したのが、今回の回路。答えは上記したこれ。『※「C1の上側」の波形が、約2.5Vを中心に上下均等に振幅するように、R1、R2、C1の値を調整するのがミソ。』

対策前は、イメージ的には「C1上側」の波形が「約1Vを中心に上下均等に振幅するように」なっていて、車速が上がった場合には波形が小さくなって、ICのスレッショルドレベルの2.5V付近に届かなくなって、スピード信号出力が消滅してしまった。

 

 

【概略】

トランペット用のさまざまなミュートが存在する。ミュートは弱音器としての機能だけではなく、特徴的な音色に変えることが出来るアイテム。音色は、倍音の構成で決まる。オープン(ミュートを付けない状態)の時の倍音成分と、ミュートを付けた時の倍音成分を、測定して数値化して比較し、ミュートによる音色の違いを考察した。

 

【注意】

素人が興味のおもむくままに測定した結果であり、「ある程度の傾向が分かる」程度の測定結果です。この記事により生じた損害に対して一切責任を持ちません。

この記事の一番下に、測定器等の測定条件を提示。スマホもアプリも容易に入手可能。ご自分でご確認ください。

 

【調査したミュートの種類】

・オープン状態

・ストレートミュート NEW TONE LINED製

・カップミュート NEW TONE LINED製

・ハーマンミュート銅 HARMON製

・ハーマンミュートアルミ HARMON製

 

【測定結果に対する考察】

測定波形は、下の方に提示。

 

●オープン状態

オープン状態を、比較基準の倍音分布とする。

mf程度の吹奏で、明るめだがややメロウな響き。

 

・基音と第2倍音がほぼ同じ大きさ。第3, 4倍音が基音に比べて約10dB低く、第5, 6倍音がさらに約5dB低い。第7倍音以降は基音よりも20dB低く、人間の感覚で言えば1/10の音量であり、ほぼマスクされて聞こえないと考えて良いだろう。(−20dBの音量差でも、音色として認識出来る可能性はゼロではない。)

 

●ストレートミュート NEW TONE LINED製

・第1, 2, 3倍音を抑えて、第4倍音以降が強調される。

・第4倍音以降の強調で、音色は固めに感じる。

 

●カップミュート NEW TONE LINED製

・第3倍音以降を抑える。

・基音と第2倍音が強めでしっかりした音だが、第3倍音以降が抑えられており角が落ちた柔らかな音色に感じる。

 

●ハーマンミュート銅 HARMON製 パイプ無し

・第2, 3倍音を抑え、第4, 5, 6倍音が強め。

・アルミ製と比べると基音が強めで音程が明確だが、4, 5, 6倍音も強めで硬いと感じる音色。倍音が強いので「遠くの音」とは感じられない。効果音的には面白そうな音色。

 

●ハーマンミュートアルミ HARMON製 パイプ無し

・第2倍音はやや抑えめ、第3倍音を特に抑えて、第4倍音以降も抑える。

・まさに「遠くの音」が聞こえてるような音色。高い音は低い音に比べると減衰しやすく「これは遠くの音である」と人間は感じる。例えば、遠くの花火や雷は「ドーン」とか「ゴロゴロ」と低い音だが、近くの花火や雷は「パーン」「パリパリ」等の高い音が混じって聞こえる。

 

●ハーマンミュートアルミ HARMON製 パイプ有り

・同じアルミ製でも、パイプを付けると特に基音が大幅に抑えられ、第2倍音も抑えられている。

・「遠くの音」とも異なる。「コソコソ話」の雰囲気、か。

・基音よりもオクターブ上の第2倍音が大きく、マイク等でうまく音を拾えば、まるでピッコロトランペットで演奏しているみたいな音域になる、かも。。。。


【各波形】

横軸が周波数[Hz]、縦軸が強度[dB ]。

 

・オープン状態

mfでの吹奏。

基音と第2倍音がほぼ同じ大きさ。第3, 4倍音が基音に比べて約10dB低く、第5, 6倍音がさらに約5dB低い。第7倍音以降は基音よりも20dB低く、人間の感覚で言えば1/10の音量であり、ほぼマスクされて聞こえないと考えて良いだろう。(−20dBの音量差でも、音色に影響がある可能性はある。)

 

・ストレートミュート NEW TONE LINED製

第1, 2, 3倍音を抑えて、第4倍音以降が強調される。

 

・カップミュート NEW TONE LINED製

第3倍音以降を抑える。

 

・ハーマンミュート銅 HARMON製 パイプ無し

第2, 3倍音を抑え、第4, 5, 6倍音が強め。

 

・ハーマンミュートアルミ HARMON製 パイプ無し

第2倍音はやや抑えめ、第3倍音を特に抑えて、第4倍音以降も抑える。

 

・ハーマンミュートアルミ HARMON製 パイプ有り

同じアルミ製でも、パイプを付けると特に基音が大幅に抑えられ、第2倍音も抑えられている。

 

【測定条件】

●測定機:iPhone6 内蔵マイク

●測定に使ったアプリ:Audio Frequency Analyzer

●楽器等:楽器 YTR-83、マウスピース EM2

●音の高さ:五線譜の第三間のド(いわゆる、チューニングのBb)。mf程度の軽い吹奏。

●測定時期:2017年2月頃

 

 

【その他】

・それぞれの音色は、息の量、音の大小、楽器の特性、ミュートのバラツキ、プレイヤーの個性等で、大きく変わるもの。なんとなく傾向が分かる、と言った程度のデータである。

・スマホのアプリの記録ボタンを右手で押す必要があり、演奏はすべて片手運転。

・測定位置は、ベルの直近。スマホに右手が届くギリギリの遠さ。

・波形のピーク高さは、時々刻々と変化。幅で5dB程度は振れていて、記録ボタンを押した瞬間のデータが記録されている。何度か記録して、平均的と思われた記録データを提示。

 

 

【注意】

初心者や初級者向けのアドバイスではない。

ある程度経験を積んだ、中上級者向けのアドバイスである。

 

・高い音が出にくいと感じる。

・音色がこもってしまう、苦しそうな音色になってしまう。

・長く吹き続けていると、だんだん音が出なくなってしまう。いわゆるバテてしまう。

こんな悩みをお持ちのトランペット奏者向けの情報。

 

こちらの情報により生じた損害等について、当方では一切責任を持ちません。

素人の勝手な思い込み、試行錯誤の結果が書かれているだけです。

全て自己責任で実施してください。

 

 

【概略】

トランペットの音が出るのは、物理的に唇の振動が継続するから。物理法則に則って、唇が振動を継続するから、音が出る。唇が継続して振動する仕組みを、物理的に分析・考察した。

 

ここでは主に、「音の高さを変えるのに必要な条件」について、分析・考察した。音色については、また別途。

 

 

【トランペットの難しさ】

トランペットは、音を出すだけでも難しい楽器。

音が出せるかどうかの難易度は、ハッキリとしたデータがあるわけではないが、イメージ的には次のように感じている。(独断と偏見による)

 

例えば、素人100人がトランペット演奏にトライしたら、

・50人は、全く音が出せないか、5線の下加線1本のドが何とか出せる。

・50人は、5線の第2線のソが楽に出せる。

・内20人は、5線の第3間のドが楽に出せる。

・内10人が、5線の上のソが楽に出せる。

・内5人が、上加線2本のドが楽に出せる。

・内1人が、上加線4本のソが楽に出せる。

 

トランペットの何が難しいのかと言うと、「音の高さを変えること」。

 

音が出るかどうかは、ただの物理現象のはず。にも関わらず、プレイヤーによって出せる音の高さに、これだけの差が出る。木管楽器では、「リードのセッティング」と「奏者の息の圧力(流量)」が釣り合えば、運指通りにすべての音の高さが出せるもの。リコーダーでは、小学生ほどの体力でも自由な演奏が可能なくらい、呼吸が出来る程度の人なら誰でも低い音から高い音まで出せる。

 

では、どうして金管楽器では、音が出る人と出ない人に差が出てくるのか?

 

 

【結論】

この違いは何か?

音が出るのはただの物理現象であり、唇が振動すれば音は出る。

 

物理現象とは「条件が揃えば」確実に再現が可能なものであるが、トランペットに関しては再現性が見られない。

「再現性が無い」ということは、「何らかの条件が揃っていない」と考えるのが妥当であろう。

 

●研究結果では、違いは次の通り。

・比較的「軽く音が出る人」は、音の高さのコントロールに「2つ」の物理的な手段を使っている。

・比較的「力まないと音が出ない人」は、音の高さのコントロールに「1つ」しか物理的手段を持っていない。

 

世の上級者は、知らず知らずに、全く意識せずに「2つ目」の手段を使って、音の高さをコントロールしている。しかし多くの上級者たちは、その事に全く気づいていない。と言うよりも、気づくことが出来ない。なぜなら、すでに口の中に「それ」が内蔵されているところからのスタートなのだから。知らず知らずに標準装備されているものを、改めて意識することは無いだろう。

 

つまり上級者に「2つ目」の仕組みを尋ねても確実に認識がないので、上級者がこの「2つ目」について言及することは無いだろうと推測している。上級者がこの「2つ目」の仕組みをアドバイス「しない」のではなく、アドバイス「できない」のである。これは仕方のないことである。

 

 

【唇の振動周波数を表す物理式】

世の論文等を複数読んでみた。さまざまなモデルが考案され、それに対する実験結果や物理式等が導かれていた。

しかし、この「2つ目」について書かれている論文等や考察は、見つけられなかった。

 

ギターやバイオリンの「弦」は、構造が単純なので単純な物理式でその動きを表現できる。

対して唇の形状は複雑であり、式はどうしても複雑になる。

 

 

かなり乱暴だが、ここでは可能な限り単純化した式を使って、考えることとする。

さらに単純化のために、ここでは「上唇のみがパタパタと振動する」ことを前提とする。

また、管楽器の管内の物理的な音響効果も複雑なので、ここでは無視する。

以上から最も単純な「弦の物理式」を流用して考えることとする。

 

次式が「弦の物理式」を流用した式である。

 

 

 

この式から分かること。

・唇の振動する長さ「L」が短いほど、高い音になる。(分母のLが小さいほど、fは大きくなる。)

・唇の張力「Tlip」が大きいほど、高い音になる。(分子のTlip が大きいほど、fは大きくなる。)

・唇の線密度「μlip」が小さいほど、高い音になる。(分母のμlipが小さいほど、fは大きくなる。)

 

式の見方のコツ。

ポイントは、各パラメータが「分母にある」のか「分子にある」のか、だけを見る。どのパラメーターがどのように効くのかの傾向が、ここを見るだけで分かる。他の難しそうなところは、とりあえず無視する。

 

弦楽器からイメージすると、長さLを変えることが音の高さを変えるのには一番効くように、感覚的には思える。

 

 

※式から、音の高さを決めるのに、息の量は無関係なことが分かる。例えば弦を弾いて音を出す場合、強く弾いても音の高さは変わらないことは理解できると思う。(強く弾くと振幅が増えて、結果的にLとTが変わるので、厳密に言えば音の高さは変わる。)

 

 

【2つ目の正体】

1つ目の音程コントローラ

誰もが持っている「1つ目」の音程コントローラーは、「唇の張力・圧力の調整」である。

例えば

・唇を横に引いたり、逆につぼめたりすることで、唇の張力が変わる。

・唇を閉じたり開けたりすることで、唇の線密度(硬さ)が変わる。

・唇を閉じたり開けたりすることで、空気の通り道(アパーチャ)の寸法が変わり、唇の振動する長さが変わる。

以上の動作で、上式の「L, Tlip, μlip」の3つ共に調整できるので、音の高さをコントロールできる。

 

2つ目の音程コントローラ

選ばれし者が持つ「2つ目」の音程コントローラーの正体は、「口腔内の空気をある形に整形して、エアビームとして吹き出す仕組み」である。上唇と下唇の接する場所に対してピンポイントで、その「ある形に整形した圧縮空気」を当てる。「エアビームをある形に整形する」ことで、上式のLを単独でコントロールできる。

 

これの何が凄いかと言うと、Tlip, μlipを一切変えずに、音の高さをコントロールできる。上級者の演奏を見ると、口元がほとんど動かない。そのカラクリが、これ。Tlip, μlipをほとんど変えること無く、Lをコントロールするだけで演奏しているから、口元がほとんど動かない。

 

更に凄いのは、楽器の運指以外の音程を出せること。楽器を付けていても、マウスピースだけのように中途半端なあらゆる音の高さが出せる。エアビームでLを決めることで、強制的に狙った高さの音が出せる。ベンディングなども、同様に可能となる。

 

同様に、マウスピース無しのバズィングで、曲を奏でることも可能。よって、必要なプレスも遥かに小さくて済む。

 

別途音色についても書こうと思うが、豊かな音色には柔らかい振動体が必要。つまり、唇を固くしなくてもLをコントロールできれば、柔らかい豊かな音色を作れる。逆に言えば、音程を変えるために唇の線密度(硬さ)μlipを大きく変化させる「1つ目」しか持ってないプレイヤーに、物理的に豊かな音は出せない、不可能である、と言うことになる。

 

 

【具体的な方法】

整形されたエアビームを作る、具体的な例を示す。

この事例は前提として、上前歯が下唇に乗っかる形のアンブッシャーで実行可能。

 

あくまでも一例であり、誰にとっても正解と言うものではない。全てがケースバイケース。

 

●以下に、2例示す。

・上前歯2本と下唇で、背の低い二等辺三角形を作る。図1

・上前歯1本と下唇で、背の低い三角形を作る。図2

具体的には、上前歯の形状を調整して、必要な三角形を作る。


※上前歯の形状を変えなくても、自分の口をよくよく観察すると、必要な条件が揃う可能性はある。

 

●三角形の概略寸法

長さL(ラージエル)、長さl(スモールエル)

・Lは、前歯2本分で16から20mm前後、1本だと8から10mm前後。

・lは、0.5mm程度でも十分に効果が得られた。

 

それぞれの三角形で決められた長さL及びlの形状に整形されたエアビームを、上前歯の目前にある上唇にダイレクトに当てる。

 

●口を閉じるように顎を上げていくと、下唇が上がって三角形が小さく、つまりLとlが小さくなる。つまり、口をわずかに開け閉めするだけで、音の高さを変えることが出来る。

つまり、形状が三角形であることがミソ。三角形の場合、「顎を動かした量」と「唇の長さ」がリニアに変わるので、感覚的にコントロールしやすいと推測できる。

 

●各図は正面から見た図だが、上前歯を下から見たと考えた図としても、同様な結果が得られる可能性がある。

図1を下から見たと考えると、上前歯が「への字」に並んでいる歯並びに該当し、答えの一つになる可能性がある。

図2を下から見たと考えると、2本の上前歯が「平行にズレている」歯並びに該当し、答えの一つになる可能性がある。

 

これらのケースでは、楽器が下向きの方が結果が出やすいと推測する。

 

※2次元的に見ても答えがないときは、もう1次元足して3次元で考えてみると、答えが見つかることも。

 

 

 

図1:上前歯2本と下唇で、背の低い二等辺三角形を作る。

 

 

図2:上前歯1本と下唇で、背の低い三角形を作る。

 

 

【その他】

●誰にでも共通な万能な正解はない。前提が変われば、正解は変わる。

前提となる唇の形状、歯並び、骨格は、人それぞれで異なる。

ぜひ様々トライして、自分の正解を探していただきたい。

 

●想像力が全て。

唇を左右に引くと、何が変わり、どんな結果を招きそうか?

唇を締めると、何が変わり、どんな結果を招きそうか?

マウスピースの直径を変えると、唇と歯の関係がどのように変わり、どんな結果を招きそうか?

唇を巻いたら? 楽器の角度を変えたら? マウスピースを当てる位置を変えたら?

 

「あるべき姿」を物理的に論理的に考察した上で、先人たちの貴重なアドバイスに耳を傾ける。そうすれば、先人たちのアドバイスの、真の目的に気付ける確率は格段に上がる。

「真の原因は何なのか」が明確になれば、対策は打てる。(原因の特定を間違えば、対策も間違える。)

 

3次元的に立体的に条件が揃わなければ、結果は出ない。長時間の演奏による条件の変化もあり、時間軸も入れた4次元で考える。

 

●多くが、トレード・オフの関係となる。

例えば

・二等辺三角形の高さを大きくしすぎると、上唇を三角形の高さに合わせて動かさねばならず、口の動きが増える。

・メディアンスペースのような特定の長さのエアビームでは、特定の音の高さだけが出せる。

 

●唇の形状

唇は真っ直ぐではないし、真円でもない。一定な変化率ではない非線形な形状をしている。

図では下唇が直線で描かれているが、実際には円弧を描いているだろうし、凸凹でもある。

下前歯の形状や配置によっても、下唇の形状は大きく変わる。

 

●歯並び

「歯並びが良い」と言っても、上記のように僅かにアンバランスである方が結果が出やすい傾向にある。

あまりに歯並びが良すぎると、口を閉じていくと下唇と上前歯の間の生きの通るスペースが一気に無くなってしまい、実際に空気の流れが止まって、音も止まる。

 

●重要な条件

・上下唇を閉じた時に、最も息が漏れやすい場所。

・三角形のエアビームを絞った時に残る部分。

位置関係が、完全に一致している必要がある。

 

風船が丸く膨らむのは、風船の内側は均等な圧力がかかっているからである。

口腔内も全く同じで、口の中には唇付近を含めて全て同じ圧力になっており、空気が漏れやすいところから一番最初に空気が漏れる。

 

例えば、上唇の中央が「ハート型」になっている場合は、この上前歯の形状では結果が出にくい。

下唇と接する面積が、「ハート型」の部分は沢山重なり、「ハート型」の両端は重なりが比較的小さい。

口腔内に同じ圧力が掛かったとすると、先に息が漏れるのは「ハート型」の両端部となる。

 

「プスーッ」って音が出なくなるのは、この現象。「ハート型」の両脇から先に息が漏れてしまう。私はこのタイプである。

意図しない弱い場所にエアビームが流れ込み、エアビームを当てたい場所には当たらない。

水が低いところに流れるように、漏れやすいところから先に息が漏れる。

 

●長時間吹いていると音が出なくなる原因の一つに、下唇の腫れがある。

・下唇がマウスピースのカップに沿って腫れると、せっかく作った三角形が消滅していしまい、音が止まる。

・何とか口を開けて息が通るようにするが、口を開けると意図しない場所から息が漏れる。

・息が漏れるから、プレスを多く掛けて息の漏れを回避する。

・さらに下唇が腫れ上がり。。。。。。悪循環に入る。

 

対策として

・下唇をなるべくカップの外に出す(マウスピースを当てる位置を、唇の上の方にする)。

・下唇にプレスを掛けない(プレスは上唇だけ)。

などが考えられるが、この対策が可能であれば幸せなことである。

 

 

【コラム】

なぜ私が「2つ目」に気づいたのか。

私はもともと音が楽に出せる、アマチュアプレイヤーであった。

 

しかし事故により、2度、全く音が出なくなった経験をしている。

一度目は、前歯を欠損、脱臼した時。

二度目は、上唇中央を切断した時。

 

マウスピースを含む「楽器と奏法」を一切変えていないのに、全く音が出なくなった。つまり、音が出ないのは楽器や奏法の問題ではないと考えた。改めてプロや上級者の演奏を、たくさん眼の前で聞いた。上級者であればあるほど、音の高さが変わっても口元がほとんど動かない。

「これには絶対になにか仕掛けがある」と確信。この自分のカンを信じて、20年試行錯誤。仮説を立てて検証を繰り返してきた。ライブ直前に仮説を立てて調整して、結果ロクに音が出なかったことも、一度や二度ではない。音が出る仕組みが分かってくると、どうしてこんなにもマウスピースの種類があるのか、目的や物理的な理由が分かるようになる。怪我の功名であった。