職場にヘビースモーカーの方がいらっしゃる。
その方は60を過ぎ嘱託として勤務されている。
職場は年々喫煙環境が狭まってきており、水金は全面禁煙、月火は午前中禁煙となっている。
喫煙できると言っても決められた休憩時間のみなので拘束時間中に何本も吸えるわけではない。
来年には全日全面禁煙になるので喫煙者にとってはかなり厳しい状況になりそう。
その方も全面禁煙デーはソワソワして朝から落ち着きがない。
そんな日はフレックスを利用して早帰りする始末。
見ているこっちもさすがに「ちょっとくらい吸わせてあげれば。。。」とも思ってしまう。
かく言う自身も元喫煙者。
いつから吸い始めたかなんて「よし二十歳になったからタバコ吸うぞ!」なんて人間はいまだ会ったことがない。
昔は1日1箱以上は吸っていて今よりも喫煙環境は悪くなかった。
分煙という概念もそれほどなく大学時代も教授とゼミ室で吸いながら談義していたし。
古くは電車でも飛行機の中でも吸えた。
初期の頃はあまり覚えてないが学生時代はラッキーストライクを主に、社会人になってからは赤マル(マルボロ)からマルメン(マルボロメンソール)、メンソールは男性機能がアレになるという噂があってやめマイルドセブン、セブンスター、ホープとだんだんキツめのものに嗜好が変化。
当時仕事において喫煙率が高い上に自席でも吸えた時期もあった。
そのうち喫煙所ができ、そこでの談義も様々な情報を得たりコミュニケーションを深めるには格好の場所でもあった。
タバコの価格が上がるといえばカートンでまとめ買いをしても焼け石に水。
あっという間に吸い尽くす。
飲み会にいけば愛用していたジッポライターを酔っ払っていくつも失くし。
ベトナムでいくつも購入した米軍仕様のレプリカを結局全部失くしたときはさすがにへこんだ。
いつまで吸うのだろう?とは漠然と思っていたがいつかはやめるぞ!とはあまり考えなかった。
しかしちょうど30歳のとき転機が訪れた。
キッカケとしてはどうかと思うが当時の客先(某金融機関)での喫煙所の空間がしんどく感じてしまったことから。
息抜きとしてぼーっと吸ってるだけでよかったはずなのだが、一緒に吸っているオジサンたちの会話があまりにもくだらなく、聞いてるだけでも苦痛に感じてしまっていた。
リラックスできないなら意味がない。
勤務中我慢するのもつらい。
じゃやめちゃおう。
喫煙経験者ならわかると思うが"やめる"というのはかなりの難作業。
ある日仕事から帰ってきて奥様に「タバコやめる!」と高らかに宣言し、夜遅く残り4本のタバコをまとめてポキッと折ってポイ。
次の日からはしばらく地獄。
まず朝起きてタバコがない。
あっやめたんだ。
通勤中の車内。
タバコがない。
あっそうか。
仕事中。
いつも吸いに行く時間。
あっない。そうだった。
帰り、帰宅後、寝る前。
タバコはどこにいった?
そんな日が続く。
一番の苦行は飲み会。
飲むと吸いたくなる。
周りは吸っている。
煙が鼻を刺激する。
酔って記憶がなかったときもしかして誰かからもらって吸ってしまったかも?と翌日確認してみる。
「1本くらい大丈夫ですよと勧めたんですが『俺を甘くみるな』と断固拒否してましたよ」と何とかセーフ。
俺、えらい。(←別にえらくない)
その後も何度か喫煙してる夢を見てハッと起き上がったり、飲み会での魔の手を振りほどきながら完全脱却。
徐々に減らしていこうなんて甘いやり方をしていたら無理だったかもしれない。
ただここまで強烈に自己洗脳すると「タバコは悪」と意識が書き換わるのでだんだんと煙すら気持ち悪く感じるようになってくる。
それよりもタバコに支配されなくなったことによる解放感が大きい。
箱にはあと何本あるか、もう少しでなくなりそうだけど近くに自販機、コンビニはあるか、これから行く場所は喫煙可能かなど一切考えなくてよくなる。
やめると決めたとき、たまたま当時の職場で"禁煙キャンペーン"なるものが開催されており同僚から「参加してみれば?」とエントリー。
ひと月吸わなかったら成功としてクオカードをもらった。
みんなの前で進呈式があり成功した人は自身を含め5名。
拍手されて得意げにしてる場合ではない。
勝手に吸って勝手にやめただけなのだから。
結局自分以外の4名はその後また喫煙者に戻ってしまったというオチ。
喫煙者に「やめた方がいいよ」なんて言うつもりはないが、確実に言えるのは"やめたら世界が変わるよ"と。
周りにもやめた人間は意外といるがみな同じことを言う。
タバコに限らず「依存を断つ」というのはすべからく世界が変わるようなインパクトはあるのだろう。
依存とか執着とか手離していったらもっと意識もフットワークも軽く生きていけそうだ。