何年か前の話。
 
社員の一人が、付き合っていた彼女と結婚しようかという話になった時、
彼女の父親(どこかの大学の哲学の教授らしい)に、
 
そんな中小零細企業の、しかも土木作業員なんかに娘はやれない
うちの娘と一緒になりたいなら、すぐにそこを辞めて、
自分が紹介する大手の会社に入り直せ うちの一族は皆そうしている
と、言われたそうな。
 
良い話だし、きっとそっちに行くのだろうなと思っていたが、彼は行かなかった。
その後、この事が原因かどうかは知らないが、
結婚の話はなくなった様だった。
何にせよ、娘を思う父親の気持ちとしては、そういう事もあるのだと思う。
それに、その頃うちの会社はボロいプレハブだった訳で、
この状況を見たらきっと不安になるだろうし、
社員の奥さんにとってもそれは同じだろうし、
彼はもちろん、皆が今後、少しでもそういう思いをしないで済むようにと、改装改築を決断した。
 
何をどうしたって、人間を職業で判断する人達は存在する。
給料の多さよりも、見た目や聞こえを優先する人々。
大学の教授である父親ですらそんなレベルなのだから、
こちらはいちいち受け止めずに、「へぇそうなんだ」と出来る事を淡々と行っていけばいいのだ。
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当時の事務所。
今見ると確かにボロい・・・。
雨漏り2か所、風が吹くと、トタンがバリバリ音を立ててうるさかった。
 
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改装後。
大幅な建て替えは出来なかったけれど、だいぶ綺麗にはなった。
金を生まない所に金を掛けないという方針でいたが、やって正解だったと思う。
そしてあの頃よりも、少しずつ環境や待遇も改善出来ていると思う。
もちろん、みんなの頑張りがあってこそだ。
 
さて、改装のきっかけになった前述の社員だが、数年前に結婚した。
またもや同じ事を言われた様で、
義父の紹介でゼネコンの子会社に再就職したそうである。
辞めたいと言ってから、2週間であっという間に辞めていった。
人間辞める時はそんなものである。
 
人手不足の中、一人減ったら大変かなと思ったけれど、
全くそのような事はないようで安心している。
 
それでも人手不足への対策は今後の課題だとあれこれ考えていたら、
想像もしていなかった所からご縁を頂き、若者が1人入社する事になった。
オッサンばかりの中でも居やすいような、そんな環境を創ってあげたいと思う。
捨てる神あれば拾う神あり。
先が見えない事に一喜一憂しても仕方がない。
出来る事をやっていればなるようになる。
 
世の中そんなものである。