こんにちは♪
エンジェルセラピストのタカです^^
物語
『閉店前のパン屋さん』、
今日は第2話です。
今夜19時のメルマガで
お届けした第2話を、
こちらでも公開しますね。
読み逃した方は、
こちらでどうぞ^^
第2話 ― うそと、本当 ―
翌日の夜。
不思議なことに、少しだけ
早く仕事が終わった。
本当はまっすぐ帰る
つもりだったのに、足は駅前の
パン屋さんに向いていた。
昨日の丸パンの味と、
あの笑顔が、頭から
離れなかったのだ。
正直に言うと、仕事中も
何度か思い出していた。
資料を作る手が止まって、
ふと「今日も、待ってますね」
という小さな字を思い出す。
誰かが自分の帰りを
待っていてくれる。
それだけで、午後の長い会議も、
少しだけ耐えられた。
店のドアの前で、
一度だけ深呼吸をした。
何を言えばいいんだろう。
お礼は、どう切り出せば
いいんだろう。
そんなことを考える自分が、
少しだけ可笑しかった。
「いらっしゃいませ」
昨日の店員さんが、
ぱっと顔を明るくした。
「昨日は、ありがとう
ございました。
あのパン、おいしかったです」
「本当ですか! よかったぁ」
店員さんは、自分のことのように
嬉しそうだった。
人に喜んでもらうって、
こんな顔をさせるんだ、
と少し驚いた。
今日は、昨日のクロワッサンと、
棚に並んだ丸パンを1つ買った。
すると、レジの向こうで
店員さんが小さく首を振った。
「あの丸パンは、買わなくて
大丈夫ですよ。……これ、どうぞ」
差し出された小さな包み。
中には、昨日と同じ丸パン。
「私、いつもあなたが来る頃に
合わせて焼いてるんです。
試作品って言ったの、
うそです。ごめんなさい」
心臓が、どきんと鳴った。
「どうして、私なんかに……」
「疲れた顔をしてるのに、
パンを選ぶ時だけ、すごく
優しい顔をするから。
ああ、この人は毎日、
ちゃんとがんばってるんだなって」
店員さんは、当たり前のように
言った。
そんなふうに見てくれている人が
いたなんて、思いもしなかった。
私の毎日は、誰の目にも
止まらない、透明なものだと
思っていたのに。
電車の中では、包みを
落とさないように、両手で
そっと抱えていた。
向かいの席の人が
不思議そうに見ていたけれど、
構わなかった。
この小さな包みは、
ただのパンじゃなかったから。
家に帰って、包み紙の裏を見る。
今日も、小さな字があった。
『今日は、少しだけ早く
帰れましたね』
……どうして、分かるの?
私が来た時間のこと。
昨日より、30分も
早かったのに。
時計を見たわけでもないのに。
まるで、私の一日をどこかで
見ていたみたいに。
(第2話 おわり)
明日は第3話を
お届けします。
お楽しみに♪
全5話は、
まとめ読みページにも
追加していきます。
まとめ読みページはこちら
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