(大谷翔平のあのポーズ)

 

前回のブログでは、過去にマイケル・サンデル教授が「イチローの年俸は高すぎるのか?」というテーマで東大生相手に対話をしたことをChatGPTを使ってその応用編として掲載しました。

 

 

前回のブログにご意見をいただいた方々には感謝いたします。

 

それらのコメントのなかで税負担の問題が出されました。

そもそも大谷翔平氏の懐には年間100億円も入らず、連邦政府や州政府という国家や地方自治体が得をするようになっているという指摘もありました。これは総理大臣のような通常の高額所得者、小学校教師のような普通の労働者との税制の問題を考える上で大事なポイントだと思います。

 

また、大谷翔平の労働を具体的労働と抽象的労働との関係で考えるとどうなるのかという疑問もありました。これは労働価値説の有効性を考えるうえで鋭角の疑問だと思います。マルクスは『資本論』ですでに予防線を張っていますが。

このマルクスの問題は、またあらためで考えます。

 

 

1.そもそもショーヘイの懐に入る額で考えるとどうなのか?

 

国や地方自治体に徴収される税問題を考えることも大事なことです。

これは、所得格差を是正するために所得から税を徴収し、社会保障費や生活保護の原資として活用し、再分配するという役割があるからです。

経済格差を図るジニ係数が、当初所得と再分配所得を計測しているのもその意味があります。

 

しかし、今回のブログは税制のその機能を考察するものではありません。

あくまで一人または家族が生活する金額をはるかに超えて余りある額を大谷翔平氏が得ていることの社会的な意味を考えるものです。

 

いやいや、税負担として高額所得者の9割5分くらいを徴収しているのではないか?

というような疑問を持つ人もいると思いますので、一応、現在の税制を考えたうえで、サンデル教授の問いを修正してみます。

 

 

では、実際に大谷翔平氏が得るお金はいったいいくらくらいなんでしょうか?

 

それを日本の総理大臣と小学校教師と比べます。

でも、日本とアメリカではそもそも税制度が違うし、アメリカだと大統領と比べるべきではないかとか言われそうですが、今回の対話はそういう所得と税の厳密性を求めるものではありませんので、おおまかな比較ということでご勘弁ください。
 

なお、大谷翔平氏に課税や節税の問題にご興味がある方はあらかじめこちらをご覧ください。

 

 

 

 

 

昨日のサンデル教授の問いは以下の通りでした。

 

大谷翔平は10年間で約1015億円という契約をしています。年俸に直すと約100億円です。
今、日本では、小学校教師の年収約740万円です。
総理大臣だと、年収約4000万円です。
果たして、大谷翔平の年俸100億円は高すぎるのでしょうか?

 

1ドル=157円で計算するとこうなります。 

※2024年5月26日は1ドル156.96 円。(156.9550円 5月25日, 23:50:00 UTC · 免責条項)

つまり

1円=0.006369426ドル。

 

大谷翔平:10,000,000,000円=63,694,260.00ドル

総理大臣だと、年収40,000,000円=254,777ドル

小学校教師年収7,400,000円=47,133ドル       

                                                      

日本とアメリカではそもそも税制度が違うし、アメリカだと大統領と比べるべきではないかとか言われそうですが、今回の対話はそういう所得と税の厳密性を求めるものではありませんのでご勘弁ください。

 

アメリカの所得にかかる主な税制度はこうなっています。 

      

連邦税 州税
課税所得税 税率 100万ドルまで 100万ドル超
0~11,000ドル以下 10% 一律12.3% 一律13.3%
11,000ドル超~44,725ドル以下 1,100.00ドル+課税所得の12%
44,725ドル超~95,375ドル以下 5,147.00ドル+課税所得の22%
95,375ドル超~182,100ドル以下 16,290.00ドル+課税所得の24%
182,100ドル超~231,250ドル以下 37,104.00ドル+課税所得の32%
231,250ドル超~578,125ドル以下 52,832.00ドル+課税所得の35%
578,125ドル超 174,238.25ドル+課税所得の37%

 

※こちらを参考にして、上の表を作成しました。

 

 

 

これを上の大谷翔平、小学校教師、総理大臣に当てはめるとこうなります。

 

大谷翔平: 63,694,260.00ドル
該当条件:578,125ドル超    174,238.25ドル+課税所得の37%

63,694,260-578,125=63116135
税額計算 63,116,135×0.37=23,352969.95
連邦税  23,352,969.95+174,238.25=23,527,208.2
 
州税は、8,471,336.58ドル。
 
合計で31,998,544.78ドル。
 
円換算だと合計税額は50億2377万2123円です。
つまり、大谷翔平氏の実収入は、約100億円から税額を引くと約50億円です。
 
総理大臣:254,777ドル
該当条件:231,250ドル超~578,125ドル以下    52,832.00ドル+課税所得の35%

254,777-231,250=23,527ドル
税額計算 23,527×0.35=8,234.45ドル
連邦税  8,234.45+52,832=61,066.45ドル
 
州税は、31,337.571ドル。
 
合計で92404.021ドル。
円換算だと合計税額は1,450万7,433円です。
つまり、総理大臣の実収入は、約4000万円から税額を引くと約2549万円です。
 
小学校教師:47,133ドル       
該当条件:44,725ドル超~95,375ドル以下    5,147.00ドル+課税所得の22%

47,133-44,725=2,408ドル
税額計算 2,408×0.22=529.76ドル
 連邦税      529.76+5,147=5,676.76ドル
 
州税は、5,797.359ドル
 
合計で11,474.12ドル。
円換算だと合計税額は180万1436.896円です。
つまり、小学校教師の実収入は、約740万円から税額を引くと約559万円です。
 
サンデル教授の問いを次のように言い換えてもよいわけです。
 
大谷翔平は10年間で約1015億円という契約をしています。年俸に直すと約100億円です。
実収入ベースだと、約50億円です。
日本では、小学校教師の実年収は約559万円です。
総理大臣だと、年収約2549万円です。
果たして、大谷翔平の実年収約50億円は高すぎるのでしょうか?
 
※税額の算出方法が適切ではないかという指摘がありましたので、修正しました。
 
 
2.実収入50億円は働かなくても贅沢できるだけではない
 
ちょっとピンと来ませんか?
 
では、大谷翔平氏が、手元に1000万円だけ残して、49億9000万円で米国債の10年ものを買って、毎年クーポンを受け取ることにします。
どうなるでしょうか?
今、米国債は年利約4.4%です。
毎年クーポンを受け取るなら、2195万円が入ります。
最初の年に1000万円を残して、それから毎年2000万円以上の取得できるわけです。
毎年10年間100億円を年俸として受け取る契約だと、毎年2000万円が上乗せされ、どんどん収入が増えていきます。
毎年、ベンツを買ってもいいわけです。
いや、車好きなら二年目からはベントレー、三年目はランボルギーニ、四年目はロールスロイス、5年目はフェラーリとランクを上げていくことも可能です。買い替える必要もないのです。
何も働かなくてもお金が手に入るのです。
 
トマ・ピケティやブランコ・ミラノビッチなどは、現在の経済の仕組みは、資産家の資産が増えるだけでなく、高額所得者は資産からの所得も労働からの所得も増えていることを明らかにしています。
 
大谷翔平氏は、毎日テレビのCMを目にします。
野球の働きだけの労働収入だけでなく、スポンサー契約なども収入として入ります。
そのうえ、資産を運用するだけで実際には米国債以上の利回りで収入を得ていると思われます。
 
実年収50億円と言うのは贅沢しても、一生働かなくてもよい収入です。
毎年年越し派遣村に集まるような人々を年間給与500万円だと1000人雇用できる額でもあります。
 
一人の才能ある野球選手がその額を得ていることの社会的意味をサンデル教授は問うているのです。
みんながベンサムのような人なら「いいんじゃない」で終わるでしょう。
そこにカントとかアリストテレスのような人々がいるとそれで終わらないのが世の中です。
 
実収入50億円と言うのは一度手にすると、今の経済システムの中では働かなくてもよいだけではなく、どんどん金持ちになっていく額なのです。