裁判例によると、
「いわゆる用途発明とは、物の一属性に基づき、その物をある特定の用途に用いることについての発明であって、その発明の成立には、その用途について発見的であることと、その確認が明確にされていることが必須である(東京高裁 昭和54(行ケ)109 S59. 6.21)。」
「用途発明は、既知の物質のある未知の属性を発見し、この属性により、当該物質が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明であると解すべきである(東京高裁 平成10年(行ケ)401 H13.4.25)。」
とされています。
また、平成6年度改正特許法における審査審判の運用においては、
「用途発明とはある物の特定の性質に着目してその物の利用方法を発見したことに基づく発明(物の発明の場合も方法の発明の場合もある)と解される」
とされています。
用途発明は化学分野、特に医療発明の分野で頻繁に出てくる概念です。電気や機械分野よりも、その使用用途を見出すのが予想困難である分野です。例えば、心臓の薬から増毛剤、とか。
用途発明は、用途発明同士を比較することで、特許性が生じますので、後願を排除するためには、新規な用途と思われる部分に、当業者が反復継続して所定の効果を挙げることができる程度まで具体的・客観的なものとして記載され、顕著な効果の存在を示すことが必要です。
日本では、「公知の物の新規用途に関する発明」を「物の発明」として特許を得ることができますが、米国では「物」としての権利は認めておらず、「方法の発明」としてしか特許を得ることができません。これは、欧州でも基本的には、「方法の発明」としての権利取得です。それには例外があり、「医薬発明」については物として権利を取得することができます。
"Substance X for use for the treatment of disease Y."
という形式がEPC2000で認められるようになりました。
それまでは、いわゆるスイスクレームというやつで、
"Use of substance X for the manufacture of a medicament for treatment of disease Y."
という形式でした。この形式だと、「use(使用)」のクレーム方式だと診断方法自体を特許対象から除外するというEPCの規定と齟齬するとの可能性があったことで、条約上明文化されました(EPC54条(5))。これは医薬品に限定的に適用されるもので、そのほかの技術分野には適用されないようです。また、スイスクレーム形式で書いたからといって排除されるわけではないとのこと。

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