昨日、4月16日、火曜日に、霞が関ビルの霞が関プラザホールで開催された米国知的財産権法協会(AIPLA、American Intellectual Property Law Association) 代表団による講演会に出席いたしました。この講演会は、日本弁理士会と米国知的財産権法協会との共催になります。

 

冒頭で今堀克彦日本弁理士会副会長が挨拶し、次に米国知的財産権法協会代表団団長がスピーチしました。

 

更に、Osha Bergman Watanabe & Burtonの渡辺裕一米国特許弁護士が、“How to Protect AI-related Inventions in the US”というタイトルで講演いたしました。

 

この講演で、AIが支援した発明(AI-assisted Inventions)の発明者的確性に言及しているのですが、このトピックは興味深いので、このブログで取り上げます。

 

Thaler v Vidal(2022年8月5日判決)で、連邦巡回控訴裁判所、略称、CAFCは、発明者は自然人に限定され、AIは発明者になれない旨を判示いたしました。この判決は下記になります。

 

https://cafc.uscourts.gov/opinions-orders/21-2347.OPINION.8-5-2022_1988142.pdf

 

この判決に対して上告されたのですが、米国連邦最高裁は上告を受理せず、CAFC判決が確定しています。
 

ところで、この判決では、AIが支援した発明について、AIが共同発明者になれるかというようなことまでは判断していないということもあり、米国特許商標庁が2024年2月13日に公表した「AI支援発明の発明者的確性に関するガイダンス」“Inventorship Guidance for AI-Assisted Inventions”を発表いたしまました。

紹介しています。

 

このガイダンスでは、AI支援発明であっても、自然人とAIが共同発明者になるのでない旨を明記しています。

 

自然人と人工知能が共同発明をしたときには、共同発明に関するPannu v. Iolab Corp., 155 F.3d 1344, 1351 (Fed. Cir. 1998)と同様に考えています。

 

Pannu v. Iolab Corp.では、共同発明者に求められる要件は、下記の通りと判示しています。

(1)  発明の着想または実用化に何らかの重要な貢献をすること、

(2)  その貢献が発明全体に基づいて判断される場合に、クレームされた発明に対して質的にある程度の貢献をすること、及び

(3)  真の発明者に対し、当該技術分野の周知の概念および/または現在の技術水準の説明を超えることをすること

 

自然人がこれらの要件を満たしたときには、自然人が発明者になります。また、人工知能は発明者になる資格がないので、自然人のみが発明者ということになります。

 

それでは、自然人がこれらの要件を満たさず、人工知能のみが発明の着想、及び、実用化に重要な貢献をしたときには、どうなるのでしょうかね。

 

ところで、Thaler氏の人工知能DABUSが生成した絵画が著作権法上の著作物か否かが問題となっています。米国著作権局の解釈では、人工知能が創作をして著作物を完成したときには、著作物性の要件をみたさず、著作権は発生しないとされています。また、米国連邦地方裁判所も同様の解釈を採用しています。この連邦地裁判決上訴され、現在、CAFCに係属しています。

 

なお、AIPLAの講演では、米国著作権法に言及していませんが、このあたりは小職が補いました。