2024年3月15日、金曜日に月刊パテント2024年3月号がオンライン発行されました。今月号はファッションローについて特集しています。

 

日本弁理士会の会員におかれましては、会員専用ウェブサイトにアクセスすることで月刊パテント3月号にアクセスすることができます。それ以外の皆様におかれましては、2024年5月上旬に月刊パテントのバックナンバーとして無料公開されます。

 

ところで、ファッションローという名称の法律が制定されているわけではなく、ファッションに関連する法律のことをファッションローといっています。具体的には、不正競争防止法、商標法、意匠法、著作権法などの関連規定になります。

 

服装、衣料品などのデザインが著作権法に定める著作物として保護されるかというと、日本法では無理ではないかと考えています。このような論点になりますと、幼児用椅子事件、平成27年4月14日知財高裁判決が、TRIPP TRAPPという幼児用椅子について著作物性を容認した事例を強調する傾向があります。

 

しかしながら、実用品について著作物性を容認したTRIPP TRAPP事件は、著作権法の著作物性に関する典型的な裁判例でなく、極めて珍しい例外的な事案になります。

 

このような例外的な事案を根拠として、意匠法の保護対象となるような実用品、応用美術が、著作権法で保護されると一般化することはできないと考えます。

 

また、幼児用椅子事件(平成27年4月14日判決)であっても、結局は、著作権の侵害は認めないという結論となっています。

 

また、TRIPP TRAPPという幼児用椅子については、令和になってから新たな訴訟が提起されています(令和3年(ワ)第31529号)。原告は前回の訴訟と同じですが、被告は前回の訴訟と異なります。この訴訟であっても、著作権の侵害は容認されていません(東京地方裁判所令和5年9月28日判決)。

 

この東京地裁判決は、著作物性を認めると明言するのでなく、「仮に、これに著作物性を認める立場を採用した場合であっても」という表現をしています。

 

仮に、これに著作物性を認める立場を採用した場合であっても、基本的にはデッドコピーの製品でない限り、製品に接する者が原告製品の細部に宿る上記直線的構成美を直接感得することはできず、まして、複雑かつ曲線的形状を数多く含む被告各製品に接する者が、原告製品の 表現上の本質的な特徴を直接感得することができないことは明らかである。

したがって、被告各製品の製造販売等は、明らかに原告製品を複製又は翻案するものではなく、原告らの主張を前提としても著作権侵害を構成するものとはいえない。

 

それでは、幼児用椅子のような実用品について、どのように知的財産で保護すればよいかというと、意匠登録出願をして、意匠登録することでしょうね。

 

ファッション業界の現状としては意匠登録をする慣行がないとのことですが、意匠登録することなく、デザインについて権利を主張するというのが無理筋なのです。意匠法という法律が制定されているのですから、意匠権を取得して、意匠権という権利を主張すべきですね。

 

また、意匠登録の要件に新規性がありますので、新作のデザインを公表する前に意匠登録出願することが求められます。