リブログにあるように、先日、商標侵害訴訟の東京地方裁判所判決を紹介しましたが、商標権者が知的財高等裁判所に控訴し、その控訴審判決がされました。

 

知財高等裁判所令和5年12月26日判決、令和5年(ネ)第10011号

 

そこで、今回はこの控訴審判決を紹介いたします。控訴は棄却されたのですが、その理由は原審と異なっています。

 

原審は、商標の類比について判断していないのに対して、控訴審は、商標は類似しないと判断しました。私の理解としては、商品の出所識別機能が限定的であることから、商標の類似範囲が狭く解釈されているということになります。この理解といいいますか要約が正しいか否かは分からないのですが、判例の抜粋は、下記の通り。

 

本件商標及び被告標章が商品の出所識別標識としての機能を果たすとしても、「バレないふたえ」及び「バレナイ二重」という表現そのものは、本件化粧品の品質及び効能に関するありふれた表現であるから、当該表現による出所識別機能は、かなり限定的なものであるといわざるを得ない。

 

加えて、前記(6)及び(7)のとおりの本件商標及び被告標章の使用態様も併せ考慮すると、本件化粧品に係る需要者は、一般に、商品又はその包装等において、商品の出所を識別し得る外形的な表示(視認することのできる文字、模様、色彩等)の具体的態様に従って、商品(本件化粧品)の出所を識別しているものと認めるのが相当である。

 

前記(8)において認定した取引の実情に照らすと、本件商標と被告標章の類否の判断においては、商品(本件化粧品)又はその包装等において具体的にされている出所識別標識の外形的な表示の態様、すなわち当該出所識別標識(商標)の外観の異同が、それらの称呼及び観念の異同と比べ、より需要者に対し強く支配的な印象を与えるものとして相対的に重要になるものと解される。

 

以下、これを踏まえて本件商標と被告標章の類否について検討する。

 

(中略)

 

以上によると、本件商標と被告標章は、これらから生じる称呼及び観念をいずれも同一にする一方、これらの外観は、看者である本件化粧品の需要者にとって相紛らわしくない程度に相違するところ、前記アにおいて説示したところも踏まえ、これらの事情を総合して全体的に考察すると、本件商標と被告標章については、これらが同一の商品(本件化粧品)について使用された場合であっても、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできないから、少なくとも本件化粧品に使用される限りにおいては、被告標章は、本件商標に類似するとはいえないと評価するのが相当である。

 

証拠の評価に関して、『本件化粧品について使用される本件商標又は被告標章に接した取引者又は需要者に対し本件商標又は被告標章がどのような観念を想起させるものかにつき検討するに当たり、本件商標と一言一句違わない「バレないふたえ」の語の使用例及び被告標章と一言一句違わない「バレナイ二重」の語の 使用例のみを考慮する必要はない』と判示しています(判決20ページ)