ヘルマン・ワイル(1885-1955)という数学者、理論物理学者は、1939年に下記の警句を発しています。

 

昨今、トポロジーの天使と抽象代数の悪魔が、数学の各分野の魂をめぐって争っている。

 

In these days the angel of topology and the devil of abstract algebra fight for the soul of every individual discipline of mathematics.

 

ワイルは、トポロジーの業績もあれば抽象代数の業績もあるのですが、それにしても「トポロジーの天使と抽象代数の悪魔」とは、どのような意味なのでしょうね。数学に関連する単語を省略すると、下記のようになります。

 

昨今、天使と悪魔が各人の魂をめぐって争っている。

 

In these days the angel and the devil fight for the soul of every individual.

 

要するに、トポロジー、抽象代数などの数学が天使と悪魔に関連しているのかもしれません。

 

1939年という時代背景を考慮いたしますと、1938年3月にドイツがオーストリアを併合していますし、1939年9月1日にドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が始まっています。

 

ワイルは、ナチスドイツの迫害を逃れるべく、1933年に米国に亡命し、プリンストン高等研究所に所属しました。

 

戦争という国家非常事態に鑑み、どの分野の数学者であっても、軍隊に志願するのが奨励されていたのですが、数学の軍事研究が天使と悪魔を創造するということなのかもしれません。

 

ところで、ノバート・ウィーナー(1894-1964)という数学者は、下記の書籍で数学者が神を創ったと立論しています。

 

19世紀のドイツ人哲学者、ルートヴィッヒ・アンドレアス・フォイエルバッハは、「キリスト教の本質」という著書で神が人間を創ったのでなく、人間が神を創ったと提唱しています。

 

 

 

そうすると、ノバート・ウィーナーの思想、即ち、数学者が神を創ったという思想はフォイエルバッハの思想の延長上にあって、創造主を数学者に限定しているのが特徴になります。

 

ところで、ノバート・ウィーナーは、どの数学者が神を創ったか特定していないのですが、ヘルマン・ワイルは神を創った数学者の一人なのかもしれません。

 

ちなみに、ヘルマン・ワイルは下記の著書も残しています。本書は、数学が専門でない一般人であっても分かるように記載されています。

 

なお、念のために付言いたしますが、上記の警句はこの書籍から引用しているというわけではありません。