アンリ・ポアンカレ(1854-1912)は、フランスの数学者、哲学者ですが、「科学と仮説」はポアンカレの著書になります。それにしても名著ですね。

 

ポアンカレが逝去して、既に100年以上が経過していることもあり、「科学と仮説」の著作権は満了しています。より正確には、フランス語の原文に関する著作権は満了しているのですが、日本語、英語などに翻訳した翻訳文については著作権が満了しているか否かは定かではありません。

 

序文の冒頭のフランス語を英語に機械翻訳すると、下記のようになります。

 

For a superficial observer, scientific truth is beyond the reach of doubt; the logic of science is infallible and, if scientists sometimes make mistakes, it is because they have ignored its rules.

 

日本語に機械翻訳すると、下記のようになります。

 

表面的な観察者にとっては、科学的真理は疑う余地のないものである。科学の論理は無謬であり、科学者が間違いを犯すことがあるとすれば、それは彼らがそのルールを無視したからである。

 

第一章は「数学的推論の本質」になるのですが、冒頭は、下記の通り

 

The very possibility of mathematical science seems an
insoluble contradiction. If this science is only deductive
in appearance, from whence is derived that perfect rigour
which is challenged by none? If, on the contrary, all the
propositions which it enunciates may be derived in order
by the rules of formal logic, how is it that mathematics
is not reduced to a gigantic tautology? The syllogism 

can teach us nothing essentially new, …

 

冒頭で「数理科学の可能性そのものが、解決不可能な矛盾である」と断言しているのですが、この段落では、形式論理formal logic、三段論法syllogismに言及しています。要するに、論理学について、記述しています。

 

このような観点から序文の冒頭を読み返すと、「科学の論理」といっても、数理科学などの論理、又は、論理学を意味しているようです。日本語では、論理と論理学を区別するのですが、英語では論理と論理学とを区別しないといいますか、英単語のlogicには論理という意味もあれば論理学という意味もあります。

 

また、序文には「科学的真理」という用語が用いられているのですが、論理学における命題の真偽で真という意味が含まれているのかもしれません。

 

即ち、論理学の中心テーマとしては命題が真なのか、偽なのかというようなことが問われるのですが、命題が真というときには、英単語ではtruthになります。また、英単語のtruthには、真理、真実という意味もあります。

 

科学というと、数学、物理学、化学、生物学などを包含するのですが、本書の主眼となる科学となると、論理学、数理科学、数理物理などのようです。