一昔前に培風館から刊行された書籍、「振動論」を紹介する。著者は戸田盛和横浜国立大学教授。
著者の戦時中の経歴としては、1940年に東京帝国大学理学部物理学科を卒業し、同年に東京帝国大学工学部助手に就任している。その後、1941年に京城帝国大学助教授に赴任しているのだが、京城という地名は、現在のソウルになる。
本書は、山内恭彦氏が監修した新物理学シリーズ第3巻であるが、新物理学シリーズは大学中級以上の学生を対象としている。
ところで、私の専門は物理でなく、化学である。大学中級レベルの物理などを勉強したことはなく、本書の内容は私にとって目新しく、実に興味深い。
どこが興味深いかというと、振動という物理は、調和解析harmonic analysisという数学と表裏一体となっている点にある。調和解析では、周期関数を対象として、フーリエ変換などを駆使して解析する。
フーリエ解析のような調和解析については、基礎知識があるのだが、調和解析という数学がこれほどまで物理と密接に関連しているのは想定外であった。