このブログでは、なぜか本業である特許法についてほとんど言及していません。特許法のトピックを取り上げない理由がなにかあるかというと、そのような理由は特にありません。
そこで、今回は久しぶりに特許法のトピックになります。どちらかというと気まぐれですね。
特許出願が特許されるためには、乗り越えなければならない要件は複数あるのですが、代表的な要件は、産業上利用可能性、新規性、進歩性になります。
例えば、産業上利用可能性がある発明であっても、新規性がないときには特許にはなりませんし、産業上利用可能性及び新規性がある発明であっても、進歩性がないときには特許にはなりません。
ところが、例外的に、新規性がない発明であっても、進歩性があれば特許が取れる場合があります。
この例外について文章としてどのように表現するかという問題はあるのですが、特許法の専門家が驚愕し、意外に感じるように工夫すると、上記のような表現になります。
誤解を招きやすい表現になるのですが、化学物質に関する選択発明は、新規性はなくても進歩性があれば、特許が取得できるということになります。
以下、誤解を招かないように例示で説明いたします。
ある特許文献に膨大な数の化学物質が開示されていることがあります。特に特許請求の範囲に記載されている発明について、マーカッシュ形式で記載したときには、100万以上の化学物質とか、1千万以上の化学物質が含まれることがあります。
この特許文献が既に公表されている場合において、100万以上の化学物質の中から特定の10の化学物質に限定して、特許請求の範囲に記載して、特許出願をしたときを考えます。
これらの10の化学物質は、上記の特許文献に形式的には開示されているとします。要するに、100万以上の化学物質にこれらの10の化学物質が含まれるとします。
そうすると、この特許出願は新規性がないと判断することが充分に可能になります。
ところが、特定の10の化学物質に格別に顕著な効果が認められるとき、進歩性があると判断されることがあります。要するに、100万以上の化学物質が形式的に公表されているのだが、これらの10の化学物質は格別に性能がよいとか、薬効が優れているというようなときには、進歩性があると判断されることがあります。
このようなときには、新規性も同様にあるということになり、特許が付与されます。
講学上、選択発明といわれるものになります。