イヌは「ワン」と吠え、ネコは「ニャー」と鳴きますが、植物は超音波でおしゃべりをするようです。
米国で発行されている生命科学系の学術雑誌に「セル」"Cell"がありますが、英単語"Cell"には細胞という意味があります。
2023年3月30日に発行された学術雑誌セルに植物に何日も水を与えないで脱水状態にすると、超音波を発生するという論文が掲載されました。この超音波は「喉が渇いた」とか、「水が欲しい」という意味なのかもしれません。
そして、近くにいる昆虫はこの超音波を聞くことができるのです。そうすると、植物が昆虫に話しかけているということになるのでしょうか。
植物といっても、トマト、タバコ、小麦、トウモロコシなど限られた種で実験がされています。
植物の木部では水が導通しているのですが、水が不足すると、木部に気泡が生成したり、気泡が破裂することがあります。このように気泡が関わるプロセスで超音波が発生するとのことです。
植物の木部で気泡となると、それほど一般的なトピックではないのですが、船が水中でスクリューを回しますと、条件によっては、たくさんの気泡が発生します。この現象はキャビテーションと命名されているのですが、船舶工学などでキャビテーションについては膨大な研究成果があります。
キャビテーションでは気泡の生成及び消滅に伴って、音が発生します。
ちなみに、潜水艦では静音といいますか、音を発生しないことが求められています。そこで、キャビテーションが発生しないようにするためには、どうしたらよいかというような研究がされています。
ここで、船のスクリューから植物にトピックが戻るのですが、植物が発生する音はキャビテーションの一種ということになりそうです。
ただし、植物の体内で気泡が生成、消滅する頻度はそれほど多くなく、スクリューを回すときのキャビテーションと比較すると、気泡の生成、消滅する頻度は大変に小さくなります。
文献
“Sounds emitted by plants under stress are airborne and informative”
Cell, vol. 186, no. 7, pp. 1328-1336, 2023