科学雑誌サイエンスは、通常、科学に関する論文が掲載されているのだが、2022年12月1日付けで発行された最新号のサイエンスには世界各国で著作権法の改正が必要と提言する論文が掲載されていた。

 

昨今、人工知能AIが急速に進化して、世の中を変革する原動力となっているのだが、人工知能が威力を発揮する基盤は機械学習にある。人工知能が機械学習するときには大量のデータが必要となる。例えば、文章を使って人工知能が機械学習する場合には膨大な文章がデータとして必要となるのだが、通常、文章は著作権法で保護されている。

 

ところで、著作権法は世界各国で微妙に異なる。

 

米国、日本などでは、著作権法に例外規定が設けられていて、著作権法が機械学習を阻害しないように配慮されている。例えば、米国著作権法はフェアユースという一般規定で機械学習のような事例に柔軟に対応することができる。

 

日本では、著作権法第30条の4の規定を新設し、「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」を容認する。「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」という語句に用いられている単語は法律用語であり、法律を学んでいないとその解釈を理解するのは難しいのだが、この語句でコンピュータの機械学習は容認するという意味になる。

 

一方、国によっては、著作権法に例外規定が設けられおらず、機械学習に対応していない。そこで、科学雑誌サイエンスに掲載された論文は、世界各国で著作権法の改正を提言している。

 

このような事例があると、法律が社会のあり方を決めているということが良くわかる。科学技術が次から次へと進化しているのにもかかわらず、法律が科学技術に対応しないときには、法律が科学技術の発展を阻害し、社会が科学技術の成果を享受することができない。

 

参考文献

SEAN M. FIIL-FLYNN, BRANDON BUTLER, MICHAEL CARROLL, et al

Legal reform to enhance global text and data mining research

Outdated copyright laws around the world hinder research

SCIENCE, Vol 378, Issue 6623, pp. 951-953, Dec 2022

DOI: 10.1126/science.add6124