最近、カントの著作を読みつつ、アレコレと考えています。
「純粋理性批判」、「実践理性批判」などは難解な日本語訳となっているので、読んでも読んでも良くわからない。原文のドイツ語が難解なので、日本語訳が難解なのはやむを得ないものがあります。
ところで、「純粋理性批判」、「実践理性批判」などを発表する前、カントは「形而上学の夢によって解釈された視霊者の夢」という書籍を上梓しています。
日本語訳は、講談社学術文庫からカント「視霊者の夢」として刊行されています。要するにドイツ語タイトルの前半のみが日本語訳に反映される一方、ドイツ語タイトルの後半は省略されています。
この書籍は「純粋理性批判」などと異なって、読みやすい日本語になっています。
タイトルにある「視霊者」とは、18世紀に活躍したスウェーデン王国のエマヌエル・スヴェーデンボリ(1688ー1772)のことになります。
スヴェーデンボリは22才でウプサラ大学を卒業した後、イギリス、フランス、オランダで遊学し、28才で就職し、鉱山技師になります。
ところが、その3年後、1719年、31才のときに貴族に叙勲されます。
1745年に霊的な体験が始まり、その体験をまとめた著書の刊行を始めます。有名な著書は「神秘な天体」全8巻であり、1749年から1756年にかけてロンドンで出版しました。
カントはスヴェーデンボリの霊視のような霊的体験について、形而上学から解説しています。
読みやすい普通の日本語になっているので、スラスラと読めます。カントは霊視のようなことにどちらかというと批判的のようです。
本書の内容は、カント哲学といってよいかとなると良くわからないのですが、純粋理性批判の背景となっているので、お勧めです。
ところで、スヴェーデンボリはスウェーデンでは有名な科学者、神学者であり、スヴェーデンボリの死後、スヴェーデンボリの思想を反映した教会が世界各国で設立されているようです。日本では東京都世田谷区にあるとのこと。
スヴェーデンボリの思想を反映した教会は、キリスト教の流派としては、正統派でなく、異端という主張もありますが、私はキリスト教にそれほど詳しくないので、正統派なのか異端かは判断できません。興味ある読者におかれましては自己責任でお願いいたします。