特許法の理論としては、発明を開示する代償として、特許が付与されるという開示代償説が通説になります。そして、明細書は発明を開示するために必須な技術文献とされています。
2022年9月1日に情報処理学会で発表した、空飛ぶ円盤に関する演題は、明細書は技術文献として価値があるという実例を示しています。
即ち、空飛ぶ円盤といっても、空を飛ぶという機能を実現する構造はよくわからず、不可能と即断する人がいたり、地球で開発された技術でなく、どこかの宇宙で異星人が開発した技術と想像する人もいるのが実情です。
ところが、複数の特許文献を整理して分析すると、空飛ぶ円盤が発展した経緯が分かります。
初期の空飛ぶ円盤は、水平となっている回転翼で空を飛ぶことが分かります
ヘリコプターも水平となっている回転翼で空を飛ぶのですが、空飛ぶ円盤の基本的な原理はヘリコプターと同様ということです。
ヘリコプターでは、回転翼が機体の外側に配置され、外部から視認することができます。
一方、空飛ぶ円盤では、回転翼が機体の内部に配置され、外部から視認することができません。例えば、米国特許7032861号にそのような構造が開示されています。
次の段階としては、空飛ぶ円盤は、回転翼からジェットエンジンに進化しています。
ジェットエンジンを搭載しているので、空飛ぶ円盤はマッハ1を超えて飛行することができるようになります。例えば、米国特許7971823号になります。
このように高速で飛行するとなると、機体の安定化が必要という新たな課題が生まれます。
そこで、空飛ぶ円盤にジャイロスコープを組み込むという発明がされています。
ジャイロスコープといっても、その原理はコマが回転するのと同様です。
コマがクルクルと回転しているときには、一本足であっても安定しています。一方、コマが回転を止めると、一本足で立っていることはできず、倒れてしまいます。
あるいは、ジャイロスコープの原理は、自転車と同様といってもよいかもしれません。
自転車は走行しているとき、即ち、車輪が回転しているときには安定していて倒れません。しかし、自転車が停まっているとき、即ち、車輪が回転していないときには、倒れやすいですよね。
空飛ぶ円盤は、コマや自転車と同様に、回転運動を取り入れることにより、安定的に飛行します。
なお、ジャイロスコープを実現する原理として、リング形状の物体の回転は一例に過ぎない旨を付言いたします。
弁理士として今回の発表で強調したいこととしては、特許文献は、技術文献として価値があるということです。