夏目漱石は「吾輩は猫である」という日本文学の歴史に残る名著を世に残している。既に著作権の存続期間は満了していることもあり、冒頭を紹介する。
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。
引用終了
一方、講談社のブルーバックスから「わが輩は電子である」という書籍が発行されている。
電子の物性について、人間の如く軽妙に描かれているのだが、冒頭から抜粋する。
わが輩は電子である。…
住む家もなければ、親もいない。残念ながらどうして生まれたのかも知らない。
引用終了
電子には家がないとはいっても、物質の内部に住んでいて、具体的には、原子又は分子の内部に住んでいる、というようなことがユーモアたっぷりに記述されている。
ところで、空気といっても、窒素分子、酸素分子などが混合している気体なので、これらの分子の内部に電子がある旨が指摘されている。
本書は大変に読みやすいので、物理学、電磁気学、電気工学などの初心者向けにお勧め。
追記
夏目漱石は1916年12月9日に亡くなっています。著作権法の存続期間は作者の死後50年でした(現在は70年、2018年12月30日に環太平洋パートナーシップ協定の効力が発生し、存続期間が50年から70年に延長されました)。
そうすると、本書が刊行された昭和60年の時点では、既に「吾輩は猫である」の著作権の存続期間は満了しています。
本書は「吾輩は猫である」とそれほど似ているというわけではないのですが、仮に似ていても著作権法上、全く問題がありません。