「セネガルてんやわんや」という書籍には、セネガルの伝統的なスタイルで藍を立てて、布を染めるエピソードが記載されている。
藍で染色するとなると、和服も藍で染色されているし、ブルージーンズも藍で染色されている。
藍の有効成分は、インディゴという化学物質である。その化学構造を下記に示す。
この化学構造は、著作権法上の著作物でないと解される。しかしながら、万が一、この解釈が間違っているときのために、この化学構造は、ウィキペディアのインディゴに由来し、ウィキペディアにはこの化学構造はパブリックドメインである旨が明記されている。
なお、上記の構造は、ウィキペディアにある画像に基づいて、二重結合を青に着色する修正をしている。
昔は植物に由来する藍が用いられていたが、現在では、工場で大量生産されている合成品が主流となっている。19世紀にドイツ人化学者バイヤーがインディゴの化学合成に成功した。
インディゴは2つのインドール骨格が互いに架橋した構造をしている。ここで、インドール骨格は、二つの環が縮合しているが、詳しくは、正六角形のベンゼン環と正五角形のピロール環が縮合している。
この架橋としては、上記の構造式では、炭素原子と炭素原子が二重結合しているのだが、この二重結合は青で強調している。この二重結合に起因して、インディゴは藍に着色している。
一方、この架橋が、炭素原子と炭素原子の単結合のときには、着色しない。ちなみに、炭素原子と炭素原子が単結合している化学物質は、インディゴでなく、ロイコインディゴとなる。
ロイコインディゴの化学構造は下記に示す。炭素原子と炭素原子の単結合は青で強調している。
要するに、共役二重結合が単独のインドール骨格に留まっているロイコインディゴは、無色であるのに対して、炭素ー炭素二重結合を介して、共役二重結合が二つのインドール骨格に拡がっているインディゴでは着色する。
量子化学という観点では、インディゴではHOMOとLUMOとのエネルギーレベルの差が縮小し、このエネルギー差の光子は可視光の領域になったということになる。HOMO, LUMOの説明は省略。量子化学の書籍を参照してください。
インディゴの化学構造では、カルボニル基(C=O)の酸素原子と、アミノ基の水素原子が分子内水素結合をしている。
インディゴが布とか繊維を染めるときには、この分子内水素結合が変化し、布とか繊維の単位となっている化学物質と水素結合をすると想定される。
また、インディゴは水に不溶であるが、この分子内水素結合に起因して、不溶になっていると想定される。即ち、インディゴ分子中のカルボニル基及びアミノ基が水分子と水素結合することなく、分子内水素結合をしたままである。
インディゴの分子内水素結合は、6員環を形成するので、熱力学的に安定である。この熱力学的安定性に起因して、水に不溶と説明することもできる。
一方、ロイコインディゴでは、カルボニル基、アミノ基が極性があるので、極性溶媒である水に溶解する。