大学医学部で、学生は最初に基礎医学を学ぶことになるが、基礎医学の典型例は、解剖学、生理学などになる。

 

医学では、ヒトの病気、ケガなどを診断、治療する医師を養成する前提として生理学を学ぶことになるので、医学部で講義される生理学は、人体生理学になる。

 

一方、生理学という学術領域は、人体生理学に限定されるというものではなく、対象とする生物に応じて、動物生理学、魚類生理学、昆虫生理学などの学術領域もある。

 

例えば、獣医学部では、動物生理学、獣医生理学が講義されている。海洋生物学とか、水産資源科学では魚類生理学が講義されている。

 

ちなみに、日本比較生理生化学会では、動物生理学、魚類生理学、昆虫生理学の研究成果が発表されている。

 

また、大学医学部では、生理学と病理学とは別個の学術領域とされている。病理学は病気の原因とメカニズム、病気の発生と診断に関する学術領域である。

 

このような観点では、生理学は、生物の正常な機能、生理機構を対象とするのに対して、病理学は生物の正常な機能が異常をきたしたり、症状、疾患などの生理機構を対象とする。

 

一方、病態生理学という学術領域があり、日本病態生理学会ウェブサイトによると、正常な生理機能の破綻により症状や疾病が引き起こされる機序や経過を理解するための学術領域ということになる。

 

そうすると、病態生理学は広義な生理学の一分野と把握することができる。即ち、広義の生理学は正常な生理機構に限定されず、病態の生理機構を包含する一方、狭義の生理学は正常な生理機構に限定される。

 

なお、病理学と病態生理学の相違について簡単に説明する。病理学では、組織の形態が重要な要素となり、顕微鏡で組織を観察するというのが病理学者のイメージとなっている。

 

これに対して、病態生理学は機能に関する学術領域であり、組織の形態のような構造は学術領域とされていない。

 

参考文献

学会研究会概要、日本病態生理学ウェブサイト

http://byoutaiseiri.kenkyuukai.jp/about/index.asp?