マスコミ報道によると、東京都医学総合研究所などの研究班は思春期に砂糖を取りすぎると統合失調症などの精神疾患を発症するリスクの一つになる可能性があると発表した(文献)。
このような要約では、「リスクの一つになる可能性」というところが意外と大事になります。
「思春期に砂糖を取りすぎると統合失調症を発症する」と主張したとき、この主張は間違いでしょうね。
別に砂糖を取りすぎても統合失調症を発症したりしないです。
東京都立医学総合研究所のウェブサイトにアクセスすると、今回の研究の詳細が記載されていますが、まともな科学、医学の部分もあれば、デタラメな部分もあれば、論理が破綻している部分もあります。
今回、マウスに過剰に砂糖を与える動物実験がされ、その実験結果として、脳内毛細血管に炎症が観察されています。
ここまでは、キチンとした科学の世界になります。実験をして、その結果が得られたという点で正統的な科学です。
この実験に用いられたマウスは精神疾患モデルマウス、統合失調症モデルマウスになります。
ところで、統合失調症モデルマウスとなると、一種の疑似科学、SF、デタラメでしょうね。
統合失調症モデルマウスといっても、マウスに幻聴、幻視などの幻覚があるわけではないし、白衣を着用した二足歩行動物がエサに毒を混ぜるというような被毒妄想とか、二足歩行動物が迫害するというような迫害妄想があるわけではないです。
マウスが飼育者に対して、ネコのニャーという鳴き声が聞こえるが、ネコの姿はどこにもない、というような幻聴の相談をするとなると、SFの世界かもしれないし、疑似科学でしょうね。
同様に、ネコが忍び足で近づいてきて、襲ってくるに違いないというような被害妄想について、マウスが二足歩行動物に訴えるというのも、どうでしょうね。
絵本とかSFならともかく、医学という範疇ではないですね。そうすると、疑似科学ということになります。
次に、実験でマウス脳内の毛細血管に炎症が観察されたといっても、この炎症と精神疾患に相関はあるのでしょうかね。
即ち、脳内の毛細血管に炎症があるときには、精神疾患を発症するのでしょうか。
どうなのでしょうね。脳内毛細血管の炎症と精神疾患との間に何等かの相関はあるかもしれませんが、相関と因果関係は全く別個のものです。
即ち、相関があった場合であっても、因果関係があるときもあれば、因果関係がないときもあります。
ところで、毛細血管の炎症となると、糖尿病が進行したときに観察される症状です。
大量の砂糖を長期間にわたって摂取したときに、Ⅱ型糖尿病を発症することがありますが、人間だけでなく、マウスも糖尿病を発症するのでしょうね。
グルコース恒常性は、人間にもマウスにも観察されるでしょうから、統合失調症モデルマウスというより、糖尿病モデルマウスではないのかな。
文献
1.砂糖の取りすぎ、精神疾患のリスクに 脳の毛細血管に炎症 都医総研
朝日新聞デジタル、2021年11月11日