米国特許審査便覧MPEP 2144.09は、化合物の構造が近似する場合(同族体homologs、類似体analogues、異性体)に関する。
このセクションでIn re Lalu, 747 F.2d 703, 223 USPQ 1257 (Fed. Cir. 1984)という判例が紹介されているが、その仮訳は下記の通り。
同様に、先行技術文献が最終化合物の製造における単なる中間体として化合物を開示する場合、当業者は通常、先行技術文献に記載されている合成反応を停止するようなことはしないし、異なる用途を有するクレームされた化合物に到達することを期待して中間体を調査することもない。
Similarly, if the prior art merely discloses compounds as intermediates in the production of a final product, one of ordinary skill in the art would not ordinarily stop the reference synthesis and investigate the intermediate compounds with an expectation of arriving at claimed compounds which have different uses.
この仮訳のみではよくわからないので、判決を抜粋する。
747 F.2d 703, 223 U.S.P.Q. 1257
In re Jean Pierre LALU and Louis Foulletier.
Appeal No. 83-1358.
United States Court of Appeals, Federal Circuit.
Nov. 2, 1984.
米国特許商標庁審判部が、クレーム13から22について自明性で拒絶審決をしたので、出願人が審決取消訴訟を提起した。すると、CAFCは審決を取り消した。
クレーム13は独立クレームであり、クレーム14から22は従属クレームである。
クレーム13は下記の通り。
13.CnF2n+1(CH2)bSO2Zという式を有する生成物。
ただし、CnF2n+1は、直鎖又は分枝したペルフルオロフッソ化炭水化物鎖、
nは1と20との間の数、
bは2と20との間の数、
Zは塩素原子又は臭素原子。
米国特許3130221号が唯一の先行技術として引用されたが、この文献には、下記のペルフルオロフッ素化硫酸が記載されている。
CnF2n+1CH2SO3H
要するに、先行技術では、メチレンCH2が1つであるのに対して、本発明、訴訟に発展した発明では、メチレンCH2が2つから20であることが異なる。
このようにメチレン鎖の長さが異なる化合物は、同族体homologという。同族体では反応性が共通し、融点、沸点などの物性は似ていて、予想できる。基本的には、メチレン鎖が長くなるにつれて、融点、沸点が次第に大きくなる。
また、先行技術では、硫酸エステルSO3Hであるのに対して、本発明、訴訟に発展した発明では、ハロゲン化硫酸SO3Cl、又は、SO3Brとなっている。
要するに、本発明と先行文献に記載されている発明は異なっているが、似ている。
結局、本件では自明でないとされ、拒絶審決は取り消された。